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僕の好きな風景 第34回 瓦に歴史が宿る

僕の好きな風景 第34回 瓦に歴史が宿る

瓦に歴史が宿る

 地方で仕事をする機会が多くなりました。日本全国、地方を訪ねると豊かな風景、美味しい食材に心を惹かれます。今や自分の中では「反東京」がブーム(笑)。地方に暮らす人たちが気づかない、かけがえのない美しさを何とか仕事に活かそうと試みています。
 そのひとつがその地の瓦屋根。地元の人たちからすれば古くさい、前近代的な素材であり、安易なデザインなのかも知れません。
 ここは滋賀県近江高島、琵琶湖に面した小さな町。400年続くお寺の副住職さんの住まいを設計しました。
 町は瓦の屋根と焼杉や漆喰の壁の家並み。
 もちろん、その中にまるで異なる現代的な素材で創られた家もありますが、それは決して町並みに寄与するものではありません。
 建築家はそろそろ、自分の自己顕示欲をひけらかす職業から脱皮して、地域性や佇まいや風景、長い時間軸でのその地のあり方を提案するべきではないか? と考えるような歳になってきました。チャレンジすべきことはしつつ、佇まいは違和感なく溶け込むのもカッコイイ建築ではないでしょうか?
 今回は伊礼智設計室、初の瓦屋根の家。室内のどの窓からも町の瓦屋根が見えるように設計しました。本堂の400年の歴史を感じ、感謝しつつ、これからもその地で根を張り、暮らしていくのです。
 瓦の屋根にしたからといって建築家として「負け」ではありません。むしろこれからはその先に新しい成熟した建築があるように思います。

僕の好きな風景 第34回 瓦に歴史が宿る

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