僕の好きな風景 第26回 模型は脳の中に風景を創る
模型は脳の中に風景を創る
建築の設計を進めるにあたり、建築家は模型を創ります。
目的は全体のプロポーション(バランスと思っていただいて結構です)を見ること、周辺環境との関係を確認すること、インテリアから外部がどのように見えるかを検討することです。
模型は鳥になったように俯瞰して、その建築を上空から見る事ができますが、大事なことは目の高さ(アイレベル)から、その建物がどのように見えるか? に注力します。
カメラのレンズを通して覗くと、よりリアルに、どのように建物が見えるかが分かります。それをスタディ模型と呼んで、事務所内部のコミュニケーションツールとなります。そうやって設計を調整し、さらに模型を創ります。
今度はクライアント(住まい手)に設計案を、立体的により正確に理解していただくためのプレゼンテーション模型です。
住まい手は図面が読めているようで実は良く分かっていない……おそらく、図面を通して設計者が見えている風景と、住まい手が見えている風景は違うのだと思うのです。それを補うには模型が最も適していると信じています。
また、住まい手も立体物を手にすることで喜んで、懸命に理解しようとしてくれます。模型を手に持って、ぐるぐる廻してみたり、敷地周りの風景を頭に入れて、その模型の中に入り込む空間体験ができるようになります。
立体物はプロと素人の垣根を取り払い、建築を脳の中に描けるのです。
その嬉々とする姿を見ていると、スケッチやCG(コンピュータグラフィックス)では模型には勝てないなあと感じています。