僕の好きな風景 第24回 フージ(風儀)のある町並みを
フージ(風儀)のある町並みを
先日、講演の依頼を受けて札幌に行ってきました。
その折、札幌の歴史的住宅から最新のものまで、たくさんの事例を見せていただきました。その中でとても印象に残った風景が、現在の札幌に多く見られる木造建売住宅の建築現場です。
小さな敷地に無落雪型の四角の箱、カーポートは除雪の用意のためアスファルト敷き、庭は手入れが面倒なので緑は植えない、外壁はサイディングでとても味気ない佇まいです。
ある意味、コスト的にも、維持管理の面からも合理的な設計と言えるのかもしれません。しかし、これが北海道の風景を創り上げつつあるのです。
もちろん、地元の心ある建築家や工務店はこのような家づくりに対抗して努力しているのですが、量産メーカーは住文化や町並みや住まいの佇まい・美しさには興味が無いのでしょう。ローコスト住宅の世界はビジネスとしての家づくりでしかないのでは? と思えてしまいます。
札幌で見たその地にふさわしいとは思えない風景は、沖縄でも広まりつつあります。
コンクリート住宅のコスト高騰により、新築の木造住宅が3割に達したと聞きました。
しかし多くが量産メーカーの、沖縄の住まいとは思えないような、地域性を無視した佇まいにしか見えません。
仕事柄、日本全国飛び廻っていますが、沖縄ほど独特な風景、佇まいを持った地域は多くありません。
沖縄にふさわしい形、素材、外構のあり方、町並みや佇まいの意識を作り手だけでなく、一般の住まい手が考えるべき時期にきたと思います。
沖縄にはフージ(風儀)という言葉がありました。それは「佇まい」、「振る舞い」という事ではないか? 今一度、大事にしたい言葉です。