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僕の好きな風景 第9回 橋の構造美

僕の好きな風景 第9回 橋の構造美

橋の構造美

 橋という建築に強く惹かれます。
 橋は建築というよりも、土木のカテゴリーにくくられる存在です。個人的には土木と建築の区別はあまり意味がないと思っていますが、建築としての魅力を放ち、人々の暮らしに役立つ建築物だと感じています。
 近年の橋は構造技術が素晴らしいですが、数十年前の手作り感と生活感溢れる橋のデザインが好み。数年前にベトナム・ハノイに事務所旅行で出かけたとき、情報集めに手にした「ベトナムに誕生したパリ 建築のハノイ」(太田省一、白揚舎)のあるページの鉄橋に釘付けになりました。
 紅河をまたぎ、全長1・7キロもあるロンビエン橋(植民地時代のドゥメール橋)は、1902年に完成した大きなトラス組の橋。ベトナム戦争では、何度も米軍の空爆により破壊されたそうですが、そのたびに人々の手により修理がなされました。そのためか、現地で目の当たりにした時は、既製のパーツを組み合わせた、つぎはぎ的な様相が力強い。
そんな手作り感を覚えました。
 この橋は、列車をはじめバイクや自転車など交通の生命線でもあったようです。スラムが広がる足元から、紅河の上まで徒歩で渡り、風景を眺めながら、ハノイの市民が守り抜いた抗戦の記念碑としての橋の歴史を想いました。単純な構成ながら美しいフォルムは、ハノイを代表する風景のひとつと言えるのではないでしょうか? 記念碑としての建築でなくて市民生活を支える現役の生きた橋だからこその魅力なのかもしれません。
「とにかくこの橋を見たい!」という衝動が、それを証明しています。

僕の好きな風景 第9回 橋の構造美

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