新着 不動産相続Q&A File.7 共有物の管理の範囲の見直しについて
週刊かふう2022年9月30日号に掲載された内容です。
共有物の管理の範囲の見直しについて
今回は従来の規定から改正された「共有の管理の範囲(過半数で決めることができる範囲)」について、区長と青年会会長のおしゃべりで解説します。
【区長】 今回は共有(きょうゆう)をテーマに取り上げたいけどいいかな。集落内の所有者不明土地も共有名義が少なくないと思うよ。
【青年会会長(以下、青年会)】共有という言葉はよく聞くけど、一つの物を2人以上で共同して持つことでいいですか。
【区長】 う~ん、パーフェクト! 不動産の共有は登記簿では割合(持分3分の1等)で表記される。共有者間で共有物使用について定めがない場合、民法は次のルールを定めているよ。
①全員の同意を要するもの(畑を宅地に変える等)
②過半数で決めるもの(ABCの共有物をAが使用する決定等)
③単独でできるもの(補修等)。
【青年会】 共有のルールはわかったけど……。実際には共有者が既に亡くなっていたり、行方不明だったりで、決議に参加できない人が多くいるのではないですか。
【区長】 アッサ、青年会長は国会議員になれるかもしれないね。今回の改正は相続未登記が長年放置されて不動産の有効利用ができない等の社会問題解消がある。共有のルールは相続が発生して遺産分割が整っていない状態(法定相続人間の共有)にも適用される。
【青年会】 それでは区長。改正分野から共有物の「管理」の範囲の見直しについて教えてください。
【区長】 共有の変更(共有者全員の同意)のうち、軽微な変更は持分の価格の過半数で決めることが明確になった。具体的には、
①10年を超えない山林の賃貸借等
②5年を超えない上記以外の土地の賃貸借等
③3年を超えない建物の賃貸借等
④6カ月を超えない動産の賃貸借等。
【青年会】 2年前に青年会メンバーの祖父が亡くなり、相続人は子である父とおじさんとおばさんの3名(法定相続分は3分の1ずつ)。ところが数十年前からおじさんと連絡が取れないため話し合いができず、祖父名義建物が2年間空き家状態。3年忌も終わり、建物の有効活用ができないかと相談があったわけ。区長、何か良い方法はありますか?
【区長】 グッドな質問だねぇ。本ケースだと3年を超えない定期借家契約がおすすめだね。(行方不明のおじさんの同意なく)メンバーの父とおばさんの共有持分価格の過半数で決定ができるよ。
【青年会】 アキサミヨー、ぴったりハマりました! この改正は所有者不明土地等の問題解決の一助になりそうですね。ところで注意する点はありますか。
【区長】 借地借家法(借り主を保護する法律)との関係では注意が必要だね。例えば、土地の契約。建物所有のための土地賃貸借契約は共有者全員の同意が必要になる。なぜなら、借地権の存続期間は原則30年となる(借り主を保護)。駐車場を目的とする5年以内の賃貸借は建物所有ではないので価格の過半数でOK。
次に建物。普通建物賃貸借契約(定期借家でない)は借地借家法(借り主を保護/家主の解約に正当事由が必要)の適用があり共有者全員の同意が必要。3年以内の定期借家契約は持分の価格の過半数でOK。区長もたまには真面目でしょ!
<法務省HP「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」から抜粋>
司法書士 喜屋武 力(きゃん つとむ)
平成7年度司法書士試験合格
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