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新着 不動産相続Q&A File.8 不明相続人の不動産の持分取得・譲渡

新着 不動産相続Q&A File.8 不明相続人の不動産の持分取得・譲渡

週刊かふう2022年10月28日号に掲載された内容です。

 

 

不明相続人の不動産の持分取得・譲渡

今回は「所在不明の共有者がいる場合の不動産の持分取得・譲渡」について、区長と青年会会長のおしゃべりで解説します。

【区長】 前回に続いて共有の話をしようか。

【青年会会長(以下、青年会)】 前回は共有物の管理についての話でしたね。

【区長 】今回は共有不動産の持分取得と譲渡についてだ。例えば、Aさんを所有者とする自宅の土地建物がある。Aさんが亡くなり、その配偶者Bさんと子C・Dが相続人とする。ところが、子Dの所在が不明としよう。しばらくは残された配偶者Bさんが住み続けていたものの、年を取って子Cの家で同居することになった。

【青年会】 自宅は空き家となりますね。

【区長】 管理するのも大変だし、今後の生活費のためにも売ろうと思う。さて、この自宅を売ることはできるかな?

【青年会】 遺言がなければ、遺産の分割は相続人の話し合いですよね。ところが所在不明の子Dがいるから、その話し合いができないということですか?

【区長】 この場合、Aの遺産である自宅は相続人B・C・Dの共有状態ということになるね。

【青年会】 共有不動産の売却は「管理」ではなく「処分」ですよね。BとCの共有持分価格の合計が過半数であっても、Dを無視して売却することはできません。

【区長】 現行法では、こういったケースの対処として、不在者財産管理人の選任や失踪宣告を申し立てることができる。でも、手間や時間がかかるから、結局は放置されてしまうことも多い。

【青年会】「空き家問題」になってしまうわけですね。

【区長】 そこで、改正法では所在等不明共有者がある場合に、他の共有者が裁判所に申し立てて、その持分の取得や譲渡ができるようになったんだ。ただし、所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合は、相続開始の時から10年を経過している必要がある。

【青年会】 今回のケースでは配偶者Bと子Cが裁判所に申し立てて、亡くなったA所有の空き家を売却できるわけですね。でも、後になって所在不明の子Dが現れて、「なぜ勝手に売ったんだ!」と主張してくる可能性はありませんか?

【区長】 もちろん、Dには対価を請求する権利はある。だから、裁判所に申し立てるときにDの持分価額相当の金銭を供託する必要があるんだ。この価額の算定をするのに、さっき言った相続開始の時から10年経過という要件が大事になる。

【青年会】 ?

【区長】 前に話したように10年経つと具体的相続分の主張ができなくなるんだ。具体的相続分は生前贈与や特別受益を考慮するから、Dが不在のままでその額を算定するのは難しい。でも、10年経てばDは法定相続分しか主張できない。

【青年会】 子がいる場合、配偶者が2分の1で、子2人は残り2分の1を平等に分ける。

【区長】 今回のケースでは4分の1の価額を供託すればよいことになる。Dの権利については、その供託金で保全されるということだね。

【青年会】 価額の算定をめぐって争う余地がなくなるので、スッキリしますね。

【区長】 所在等不明共有者の権利を守りつつも、所在者不明土地の解消を促進しようという制度設計になっているんだ。

【青年会】 当事者の利害を、天秤にかけるようにバランスを取っているんですね。

【区長】 ちなみに、弁護士のバッジには天秤がデザインされているよ。

【青年会】 へぇ~。では、司法書士のバッジには何がデザインされているんですか?

【区長】 うーむ……(何だっけ⁉)

新着 不動産相続Q&A File.8 不明相続人の不動産の持分取得・譲渡

<法務省HP(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html)より抜粋>

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司法書士 喜屋武 力(きゃん つとむ)

平成7年度司法書士試験合格
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