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基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.7 特別受益と評価基準時

基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.7 特別受益と評価基準時

週刊かふう2023年7月21日号に掲載された内容です。

 

Q. 妻に自宅を贈与して妻の名義にしたいと考えています。妻に自宅を贈与することで、私の死後に遺産分割協議で妻にどのような影響があるでしょうか。

 私たち夫婦は、結婚後、子どもが生まれたのを機に自宅を購入して一緒に暮らしてきました。私たちもだいぶ高齢になり、亡くなった後のことを話し合うことも増えてきました。私は、現在、がんと診断され治療を受けていることから、生きているうちにやるべきことをやろうと思うようになりました。
 私たちの自宅ですが、現在の名義は私一人となっています。私たちが自宅を購入した時は、付近も開発が進んでおらず比較的安価な物件だったのですが、近年、道路や公共交通機関が整備され、自宅付近の地価は急騰しています。
 それもあってか、子どもは実家を売却して私たち夫婦は施設に入所することを求めていましたが、私と妻がそれを受け入れなかったことから少し疎遠になってしまっています。
 もしこのまま私が死ぬと、自宅でこのまま暮らしたいという妻の希望が実現できないのではないかと心配なので、妻に自宅を贈与して妻の名義にしたいと考えています。
 妻に自宅を贈与することで、私の死後に遺産分割協議で妻にどのような影響があるでしょうか。

A.共同相続人の一部に、被相続人の生前に特別な利益を与えられる場合がありますが、このような場合、一部の相続人が受けた特別な利益を含めて相続分を算定する特別受益の制度があります。特別受益を算定する際の財産評価の基準時や、特別受益を考慮しなくてもいい例外について見ていきましょう。

 共同相続人のなかに被相続人から特別受益を受けた人がいる場合には、原則として、この特別受益を相続財産額に加算してみなし相続財産としたうえで、各共同相続人の相続分を確定することになります。
 
 特別受益とは、相続人が被相続人から生前にもらっていたお金や金銭的価値のあるもののことをいいます。共同相続人の中に特別受益を受けていた者がいる場合、これを考慮しないで法定相続分どおりに遺産を分けると不公平が生じますので、このような不公平を是正し各相続人間の公平を図るために特別受益分を考慮した上で、具体的相続分を計算することを「特別受益の持戻し」といいます。
 この特別受益の評価の基準時は、相続開始時となります。ご自宅を購入したときには安価な価格であったとしても、購入時の価額ではなく相続開始時(相談者さまが亡くなった時)の評価額によって、特別受益分を算定します。

 そうすると、本件でも妻が自宅の贈与を受けた分については特別受益の持戻しが必要になってその分妻の相続分が減ると思われるかもしれませんが、例外が認められています。
 持戻し免除の意思表示というものがあり、被相続人が持戻しを希望しない意思表示をした場合に、持戻しを考慮しないで相続財産を計算することになります。持戻し免除の意思表示の方法に決まった方式はありません。
 そして、婚姻期間が20年以上の夫婦間において、居住用の建物またはその敷地について贈与をしたときは、持戻し免除の意思表示をしたものと推定されます。そのため、妻は夫から自宅の生前贈与を受けたとしても、特別受益として遺産分割のときに取得できる遺産がその分減ってしまうという不利益を受けなくなります。

 ただし、遺留分の規定による制限は受けますので、贈与後10年以内に相続が発生してしまった場合は、妻への自宅の贈与が子どもの遺留分を侵害する場合(自宅を含めて相談者の財産を計算し、子どもの相続分がその4分の1を下回ってしまう場合)、妻が遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。この遺留分の算定についても、購入時の価額ではなく相続開始時(相談者が亡くなった時)の評価額に基づいて算定がされます。

基礎からわかる相続Q&A SEASON2 File.7 特別受益と評価基準時

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