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基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File10 寄与分と「いい遺言の日」

基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File10 寄与分と「いい遺言の日」

週刊かふう2024年10月18日号に掲載された内容です。

 

Q.
30年ほど前に父の土地に二世帯住宅を建て、両親と同居していました。父の死後、土地と預貯金は母が相続しましたが、母は判断力はあるものの体が不自由で、私と妻が日常的に世話をしています。兄は母の面倒をほとんど見てくれず、母の死後は土地を半分に分けるか売却して金銭を半分に分けることを希望しています。私は兄と同じ権利しかないというのは納得が難しいです。私の相続分をできるだけ多く認めてもらうことができるでしょうか。

 私が30年ほど前に家を建てた際に、両親の希望で父の土地の上に私が大きな二世帯住宅を建てました。その後、両親と私たち家族とで生活していましたが、しばらくして父が亡くなりました。その際に、家族で話し合って父の土地や預貯金は母親が1人で相続することになりました。

 母は頭(判断能力)ははっきりしているものの、体が不自由になってきて、私と妻が日常的に母の世話をするようになりました。数年前から、母の希望もあって訪問看護サービス等は受けず、私たち夫婦がサポートして生活や通院を行っています。

 私には兄がおりますが、母の世話が大変なので手伝ってくれるようお願いしても、忙しいと言ってほとんど母の面倒を見てくれません。さらに、母が亡くなった際には、兄弟の権利は平等なので、土地を半分に分けるか、更地にした上で土地を売却して、金銭の半分を希望しています。

 私としては、両親のために家も建てて、母の面倒を見ているのに、母が亡くなった際には土地について兄と同じ権利しかないというのは納得が難しいです。私の相続分をできるだけ多く認めてもらうことができるでしょうか。

A.亡くなるまで施設や職業付添者(看護師や介護福祉士の資格を持った専門職)の利用を控え、親族で介護をするケースもあります。そのような場合に一部の方の介護負担や出費が相続の場面でどのように考慮されるのか見ていきましょう。

 この時点でお母さまが亡くなった場合、相談者の相続分が多く認められるかどうかは、相談者の寄与分の請求が認められるかどうかにかかってきます。

 寄与分とは、共同相続人の中で被相続人の財産の維持または増加に「特別の寄与」をしたと認められる程度の貢献をした人がいるときに、その人に相続財産のうちから相当額の財産を取得させる制度です。遺産分割調停等が家庭裁判所に継続している場合に、寄与分を定める調停等を申し立てることができます。

 寄与分が認められるべき貢献の種類としては、財産上の給付以外にも労務の提供や被相続人の療養看護などがあります。ただし相談者が両親の希望で二世帯住宅を建築した費用については、寄与分としては認められません。両親の希望であったとはいえ、住宅は相談者の財産だからです。

 他方で、お母さまが相談者の建てた住宅で長年生活されたとのことですから、お母さまがその間無料で相談者の住宅を使用できたことについては寄与分として認められる可能性があります。もっとも、相談者も両親の土地を無償で使用できている状態ですから、賃料相当額全額が寄与分として認められるわけではないと考えられます。

 次に、お母さまの面倒をみていた点については、単に生活の面倒をみたというだけではなく、親子という身分関係によって通常期待されるような程度の貢献を超えた大きな貢献があれば相続人の寄与が「特別の寄与」と認められます。相談者夫婦が体の不自由になったお母さまのサポートを行ったことによって、職業付添者の費用の支払いを免れたと言えるような場合は、通常の扶養の範囲を超えているといえ、これを寄与分として算定する余地があります。

 他に、お母さまの意思を確認し、もし土地については相談者に継がせるといった意向があれば、お母さまに遺言書を作成してもらうことも考えられますから、まずは弁護士への相談を検討してみてはいかがでしょうか。来る11月15日(いい遺言の日)には、日本弁護士連合会と信金中央金庫等の共催で、遺言・相続全国一斉相談会が開かれます。沖縄会場のご予約は、コザ信用金庫 総合企画部098-932-4711で受け付けるそうです。

基礎からわかる相続Q&A SEASON3 File10 寄与分と「いい遺言の日」

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