基礎からわかる相続Q&A SEASON4 File2 相続させようとした方が先に亡くなった場合の遺言について
週刊かふう2025年2月21日号に掲載された内容です。
Q.
結婚後に建てた家を息子に相続させる遺言書を作成しましたが、息子が亡くなったため、息子の妻や子どもが相続するか心配です。息子の家族に家を継がせるため必要な手続きを知りたいです。
私は、結婚を機に家を建てて、家族でこの家で暮らしてきました。
息子と娘は既に独立し、娘は結婚し県外で生活しており、息子家族は隣町で暮らしておりました。
妻に10年ほど前に先立たれてからは、息子夫婦が定期的に様子を見に来てくれるようになりました。私は、息子夫婦にこの家を継いでほしいと思い、息子に家の土地建物を相続させる内容で遺言書を作成しました。
ところが、昨年、息子が急な病気で亡くなってしまいました。もし今、私の寿命が尽きたら、遺言書によって息子の代わりに息子の妻や子どもがこの家を継ぐことになるのでしょうか。
息子の家族にこの家を継いでもらうために、何かやるべきことはありますか。
A.
よく考えて遺言書を作成した場合でも、予期せぬ事態で遺言書作成時の想定と状況が変わってしまうことがあります。今回は、遺言で財産を相続させる予定だった人が先に亡くなってしまった場合の考え方について解説します。また、当初作成した遺言書のままでは想定した結果とならない場合にとるべき手段についても見ていきましょう。
遺言によって遺産を相続させるとされた方が、遺言作成者より先に亡くなった場合の遺言の効力について、以前は裁判所の判断は分かれていました。
しかし、平成23年に最高裁は、「相続させる旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情および遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはない」と判断し、それ以後、法令解釈が統一されることとなりました。
本件のように、遺言によって遺産を相続させるとされた方が、遺言作成者より先に亡くなった場合、原則として代襲者(代わりに相続する人。本件の場合は、亡くなった息子の子)が遺言に基づいて当該財産を相続することは原則としてできないことになります。
そうすると、相談者のご自宅を誰に相続させるかについて遺言書の効力が認められないことになり、相談者が亡くなられた後は娘と息子の子との間で相談者のご自宅の相続について協議を行う必要が出てきます。
相談者が、息子のご家族に相続してもらいたいとの考えであれば、遺言書を変更するか、新たに遺言書を作成する必要があります。
遺言書の変更の方法は、その遺言の変更したい部分を示し、変更した旨と変更内容を書き、署名しその変更の場所に押印する必要があります。変更方法に不備があると変更は無効となってしまいます。
新たに遺言書を作成する方法は、以前に遺言書を作成したときと同様に、法律で定められた遺言書の形式・方式に従って遺言書を作り直すものです。古い遺言書を破棄しないで新しい遺言書を作成することも可能で、その場合は遺言書が2つ存在することになりますが、新旧の遺言書で内容が抵触する部分については、最も新しい遺言書が優先されます。なお、片方が公正証書遺言で片方が自筆証書遺言であっても、作成方法による優劣はありません。
本件の場合は、シンプルに、住宅については息子さんのご家族に相続させる内容とする新しい遺言書を作成することが良いのではないかと思われます。
那覇楚辺法律事務所:〒900-0023 沖縄県那覇市楚辺1-5-8 1階左 Tel:098-854-5320 Fax:098-854-5323