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基礎からわかる相続Q&A SEASON4 File.3 認知症の方の不動産管理および相続人がいない場合について

基礎からわかる相続Q&A SEASON4 File.3 認知症の方の不動産管理および相続人がいない場合について

週刊かふう2025年3月21日号に掲載された内容です。

 

Q.
遠い親戚の叔母さんが昨年大病を患い、現在は介護付き医療施設に入っています。認知症が進行しており、相続人がいないため、自宅不動産は空き家状態です。庭の手入れはあなたが行っていますが、他の遺産や負の遺産については不明です。不動産管理の対応策を教えてください。

 私には一人暮らしの遠い親戚の叔母さんがいます。叔母さんは自宅不動産を所有していますが、昨年に大病を患い緊急手術を受け、現在は介護付き医療施設に入っています。

 叔母さんには相続人がいないようで、施設の職員が話すには、叔母さんは「認知症が進行して過去のことを覚えていません」とのことでした。

 現在、叔母さんの自宅不動産は空き家状態になっています。庭の木々は伸び放題なので私が空き時間を見て清掃や伐採をしていますが、他の遺産や負の遺産があるかについては全然わかりません。

叔母さんの不動産管理について、どのような対応が考えられるか教えてください。

A.
認知症となった方の財産管理について、放っておくわけにもいかず悩みを持たれながら対応している方も多いかと思います。その財産管理についてどのような対応が考えられるのか見てみましょう。また、相続人がいない場合に、故人の不動産が法律上どのような状態になるのかについて、とりうる手段についてもご説明します。

 法定相続人は、亡くなった人の配偶者と血族(第1順位子ども、第2順位親、第3順位兄弟姉妹)となっており、それらにも血族の子どももいなければ、法定相続人がいない状態となります。また言い換えれば、亡くなった方に相続人がいない場合は、その方名義の財産について権限を持つ人がいないことになります。

 しかしそれでは不都合が生じることがあるため、亡くなった方に相続人がいない場合には、利害関係人が相続財産清算人の選任申し立てを家庭裁判所に対して行うことができます。利害関係人には、亡くなった方の債権者や特別縁故者(特別に被相続人の財産を取得できる人)などが当たります。亡くなった方名義の空き家等がある場合については、市町村が相続財産清算人の選任申し立てを行うことも可能です。

 本件の場合、叔母さんが亡くなった後に相続財産清算人が選任されると、それ以後の不動産の管理については相続財産清算人において対応することになります。相続財産清算人は、相続財産を管理・清算し、相続財産の清算が終了して残余財産がある場合、特別縁故者の請求を受けてこれに分与するなどした後、分与されなかった相続財産を国庫に引き継ぐことになります。

 特別縁故者は、「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者」(民法958条の2)とされており、特別縁故者と認定されるのは簡単ではありませんが、相談者と叔母さんとの関係によっては特別縁故者として認定されるかもしれません。もっとも相続財産清算人の選任申し立てを行う際、申立人が費用を予納する必要があります。そのため、できれば叔母さんがご存命のうちに対応しておくことが望ましいでしょう。

 叔母さんは認知症を患っているとのことですが、認知症と診断されていても、程度によっては契約をしたり、遺言書を作成したりすることができます。叔母さんに財産管理能力があるかについては、施設の職員の判断ではなく、医師の診断に基づく裁判所の判断によります。

 財産管理能力がどの程度維持されているかについて医師に診断書を作成してもらい、財産管理能力が維持されていると考えられる場合は、本人の意向に基づいて信託契約等を締結して不動産の管理を相談者が行うことや、遺言書を作成してもらって亡くなった後の不動産の処理について決めておくことが考えられます。

 今回は、読者からいただいたご質問を基にQ&Aを作成しました。対処が難しい案件ですが、ご参考になれば幸いです。

基礎からわかる相続Q&A SEASON4 File.3 認知症の方の不動産管理および相続人がいない場合について

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