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基礎からわかる相続Q&A File.7 特別受益の持ち戻し免除

基礎からわかる相続Q&A File.7 特別受益の持ち戻し免除

週刊かふう2022年5月20日号に掲載された内容です。

Q.生前に相続人へ与えた特別な利益を加算しないで遺産分割はできますか?

  私たち夫婦は自宅を購入し一緒に暮らしてきました。その間に2人の子どもを授かり、いくらかの財産を築くことができましたが、だいぶ高齢になってきたこともあって最近では私たちの逝った後の話を妻とするようになりました。

 私たちが住む自宅は私の名義となっていますが、少し前から私たちが利用しているデイサービスの運営会社が経営する老人ホームへの入所を娘が提案し、自宅を売却して売却代金を生前贈与することを求めてきました。私と妻がそれを受け入れなかったことから、娘との関係がぎくしゃくしています。私が先に死ぬと、自宅でこのまま暮らしたいという妻の希望が実現できないのではないかと心配なので、自宅は妻の名義に替えるか共有することを考えています。
 また、私が勇退した後に私の事業を息子が承継したのですが、感染症の拡大により事業が大きな影響を受けたことから、事業資金として金銭を扶助しました。私としては事業を引き継いで頑張っている息子のためにも、このときの金銭贈与によって息子が相続で不利になることは避けたいと考えています。

 自宅を妻の名義にすることや子どもへの事業資金の援助によって、私の死後、遺産分割でどのような影響があるでしょうか。また、私の希望に沿ったかたちにするためには、どのようにすればいいのでしょうか。

A.持ち戻し免除の特例があります

 共同相続人の一部に被相続人から特別受益を受けた人がいる場合には、原則としてこの特別受益を相続財産額に加算してみなし相続財産としたうえで、各相続人の相続分を計算することになります。このとき、共同相続人の中に特別受益を受けていた者がいる場合に、特別受益分を考慮した上で具体的相続分を計算することを「特別受益の持ち戻し」といいます。

 これに対し、持ち戻し免除の意思表示というものがあり、被相続人が持ち戻しを希望しない意思表示をした場合に、持ち戻しを考慮しないで相続財産を計算することになります。他に、各相続人が特別受益の持ち戻しをしないことで合意した場合も特別受益の持ち戻しをしないで相続分を算定することになります。

 民法(相続法)が改正された2019年7月1日以後は、婚姻期間が20年以上の夫婦間において、居住用の建物またはその敷地について贈与をしたときは、持ち戻し免除の意思表示をしたものと推定されることになりました。そのため、妻は夫から自宅の生前贈与を受けたとしても、特別受益として遺産分割のときに取得できる遺産がその分減ってしまうという不利益を受けないことになります。

 息子さんへの事業資金援助については、相談者の希望が相続で不利にならないようにすることですので、息子さんへの贈与について持ち戻し免除の意思表示をすることで息子さんの相続分を減らさないことが考えられます。持ち戻し免除の意思表示の方法に決まった方式はありませんが、何かしらの書面に残しておかないと後に持ち戻し免除の意思表示があったことを証明することは困難です。

 ただし、持ち戻し免除の意思表示をしても遺留分の規定による制限は受けますので、贈与後10年以内に相続が発生してしまい、なおかつ他の相続人の遺留分を侵害する場合は、多く財産を受領した相続人が遺留分侵害額請求を受けてしまうことがあります。贈与後10年経過した後で相続が発生した場合は、遺留分を算定するための財産の価額に含まないことになります。

基礎からわかる相続Q&A File.7 特別受益の持ち戻し免除

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