基礎からわかる相続Q&A SEASON5 File.3 賃貸借契約の当事者が死亡した場合と定期賃貸借契約について

週刊かふう2026年3月20日号に掲載された内容です。
Q.
父の代から借地で飲食店を営んでいますが、地主が亡くなり地代振込先が不明確になりました。息子と娘の双方から地代支払い先の主張があり、娘からは新たな定期賃貸借契約書の作成も求められているため、誰に支払うべきか、契約を結び直す必要があるのか判断できず困っています。
私は、父の代から続いている小規模な飲食店の店主として、店を経営しています。この店は、父が土地を借り、借地上に店の建物を建築したものです。父と地主さんとの間の賃貸借契約書は残っています。父は既に亡くなり、私がこの店を受け継ぎ、私が地代を支払いながら現在も営業しています。
ところが、今年の地代を地主さんの口座に振り込もうとしたところ、口座が凍結されていたらしく、送金することができませんでした。
実は、地主さんが最近亡くなったらしく、地主さんの息子と名乗る方から電話で連絡があり、自分が土地を引き継ぐとのことで、今後の地代は自分(息子)の口座に振り込むよう言われました。ところが、さらに地主さんの娘と名乗る方から文書が届き、その内容は地代を娘の口座に振り込むよう求め、さらに契約者が変更になっているので、新たに定期賃貸借契約書の作成を求めるものでした。
私は、どちらに地代を支払えば良いのかわからず困っています。また、私が契約当事者として記載された賃貸借契約書がない状態ですが、土地を使用し続けるためには地主の娘さんが言うように定期賃貸借契約書の作成に応じなければならないのでしょうか。
A.
契約関係にある当事者が亡くなった場合、契約の効力がどうなるかは契約の種類によって異なります。本稿では、賃貸借契約の当事者が死亡した場合に契約上の地位がどのように扱われるのか、考えられる対応とともに解説します。あわせて、通常の賃貸借契約と定期賃貸借契約の違いについても整理します。
本件では、相談者のお父さんと亡くなった地主さんが土地の賃貸借契約を締結していたところ、両者とも亡くなっていますが、賃貸借契約はそれで終了するわけではありません。賃貸人の地位および賃借人の地位はそれぞれの相続人に当然に承継されます。そのため、本件ではお父さんと亡くなった地主さんが締結した賃貸借契約がまだ効力を失っておらず、再契約をしなければいけない状況ではありません。
さらに、本件では、誰が地主さんの賃貸人としての地位を受け継いだのかが分からない状況となってしまっています。まず、このような場合でも、相談者が地代を支払わなかった場合、賃貸借契約上の義務である賃料を支払わなかったものとして取り扱われてしまいますので、賃貸借契約を解除されてしまう可能性があります。したがって、地代は支払う必要があります。
本件土地の相続人が誰であるかの確認のために、遺産分割協議書か登記事項証明書の写しを確認させてもらうよう求めることが考えられます。もっとも、地主さんの相続人から資料の提出がない場合に、賃借人が賃貸人の相続関係を正確に把握して厳密に支払うことは困難です。このような場合、「供託」と言って供託所(法務局)に地代を提出して預かってもらう手続きをとることで、地代を支払った扱いとなりますので、供託をすべきです。
また、先ほど申し上げたとおり必ず再契約をしなければならないわけではありませんが、相談者の法的地位を明らかにするために、土地の相続人との間で賃貸借契約を締結することは考えられます。
ただし、定期賃貸借契約というかたちで契約を締結すると、通常の賃貸借契約とはかなり異なる法的地位となりますので、注意が必要です。土地の定期賃貸借では、通常の賃貸借と違い、契約の更新がない、存続期間の延長がない、建物買い取り請求ができないという特徴があり、普通賃貸借の借り主としての法的地位より不利な面がありますので慎重に検討すべきです。


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