基礎からわかる相続Q&A SEASON5 File7.時効取得と所有者不明土地について

週刊かふう2026年7月17日号に掲載された内容です。
Q.昨年父が亡くなり、私は父所有のアパートを相続しました。建物は父の所有ですが、土地は沖縄県から借りており、5年ごとに契約更新していました。その契約書には「所有者不明土地賃貸借契約書」とありますが、この土地はどのような状態なのでしょうか。また、父が長年アパートを建てて利用していたことから土地を時効取得できないでしょうか。難しい場合、土地を買い取ることは可能でしょうか。
昨年、父が亡くなり、私が父の遺産を相続することになりました。父は自宅不動産と預金の他、アパートを遺産として残してくれています。このアパートは立地がよいので、古い建物ですが多くの方に入居いただいています。
この父のアパートは、建物は父のものですが、土地は父のものではなく、沖縄県に地代を払って土地を借りている状態です。父は、5年ごとに県と契約書を交わしていました。
ところで、父が県から土地を借りている契約書の表題が、「所有者不明土地賃貸借契約書」となっていました。所有者不明の土地とはどのような状態なのでしょうか。
この土地は、父が長らくアパートを建てて使用していることから、時効ということで土地を取得できないでしょうか。また、それが難しいとしても土地を買い取ることはできないでしょうか。
A.先の大戦で大規模な地上戦が行われた沖縄では、土地関係記録が焼失した土地が多くあります。他人の土地を長らく使用している場合には取得時効の制度を利用できることがありますが、沖縄の所有者不明土地については、沖縄県や市町村が管理して賃貸するなどしており、そのように管理されている土地については、取得時効は成立しないものと考えられます。このように管理されてきた所有者不明土地ですが、令和5年の民法改正で新しい制度ができました。概要について見ていきましょう。
沖縄県には、先の沖縄戦による土地関係記録の焼失等によって、誰がその土地の所有者かわからなくなってしまった所有者不明土地があります。
沖縄県の所有者不明土地は、県または県内市町村が管理をしています。この運用は、沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律に基づくもので、他都道府県とは異なる運用となっています。土地の登記簿には所有権に関する事項が記載されますが、沖縄の所有者不明土地については表題部の所有者の欄に「管理者:琉球政府」とのみ記載されています。沖縄県等の管理者は、土地の処分はできませんが、相当と考えられる賃料を設定して賃貸借契約を締結することができます。
相談者のお父さまが長年アパートを建てて使用してきたとのことですが、本件では賃貸借契約をしており、土地を時効取得することはできません。10年または20年、土地を所有の意思をもって占有した場合、取得時効の制度により土地の所有権を取得することができることがありますが、賃貸借では所有の意思があるとは認められないからです。
ただ、戦後80年が経過していることから、真の所有者であると主張する方が現れることは現実的には考え難く、相談者のお父さまらが利用してきた期間が相当長期に渡っており、土地の所有権を正式に取得したいと希望されるものと思われます。
相談者の場合、令和5年4月1日の民法改正によって制度化された民法上の所有者不明土地管理人の制度を利用することが考えられます。
民法上の所有者不明土地管理人は、土地を管理する権限が与えられ、さらに、裁判所の許可を得れば、処分についても可能となっています。
つまり、民法上の所有者不明土地管理人から、利害関係人が土地を買い取ることができる仕組みとなっています。
民法上の所有者不明土地管理人を選任してもらうためには、利害関係人が裁判所に対し、その必要性を示して所有者不明土地管理人による管理を請求することになります。
無事に所有者不明土地管理人が選任されましたら、鑑定等によって土地の適正価格を示す資料を提出して所有者不明土地管理人と交渉し、土地の売買契約内容をつめた後、裁判所の許可が出れば土地を購入できるという流れとなります。
このように、相談者は、アパートが建っている所有者不明土地について、民法上の所有者不明土地管理人の制度を利用して購入することが考えられます。気になる方は弁護士に相談することをお勧めします。


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