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基礎からわかる相続Q&A SEASON5 File.6 自宅が主な遺産となる場合の 相続と配偶者居住権について

基礎からわかる相続Q&A SEASON5 File.6 自宅が主な遺産となる場合の 相続と配偶者居住権について

週刊かふう2026年6月19日号に掲載された内容です。

 

Q.夫が遺言を残さず亡くなり、私は評価額が上がった夫名義の自宅に住み続けたいと考えています。一方、事業資金を必要とする息子は家の売却を望んでいます。預金は多くなく、私は代償金の支払いも難しい状況です。私が家に住み続けることはできるでしょうか。

 昨年、夫が亡くなってしまいました。夫は遺言書を遺していません。私たち夫婦は、夫名義の家で、2人で生活してきました。夫名義の家は、家を建てた当時より開発が進み、病院やお店も近く便利なので、私は今後もこの家で生活してきたいと思っていますが、その分土地を含めた家の評価額はかなり高くなってきてしまっています。夫の他の財産は多少の預金があります。

 私たち夫婦には息子が1人いて、息子からはそろそろ遺産を分けようと言われています。息子は、息子が経営している事業の事業資金に苦労しているようで、家を売却してまとまった財産を確保したいという意向があるようです。

 私としては、夫と住んでいた家に今後も住み続けたいと思うのですが、今後の生活資金にも余裕があるわけではないので、家の権利を取得するために息子にお金を渡すことも難しいと思っています。
 私が家に住み続けることはできるでしょうか。

A.夫婦の一方が亡くなった後、残された方が住み慣れた住居で生活を続けるとともに老後の生活資金も確保したいと希望することも多いと思われます。しかし、不動産の価値によっては、他の相続人との兼ね合いで、家の確保と老後資金の確保を両立することは難しいことがあります。このような自宅が主な遺産となる場合の相続では、配偶者居住権の制度を利用することが有力な選択肢となります。

 今回、相続人は相談者と息子さんのお二人で、法定相続分は2分の1ずつとなります。遺言書はないとのことなので、相談者と息子さんが法定相続分どおりに遺産分割する前提で、相談者さまが家と土地を相続で取得すると、土地と建物の価値が高い本件では相続分を大きくオーバーしてしまいますので、息子さんに対し代償金としてかなりの金額を支払う必要が出てくると思われます。

 本件の場合、相談者の方が「配偶者居住権」を取得し、息子さんが「配偶者居住権の負担付きの所有権」を取得するという方向で調整することが考えられます。

 配偶者居住権とは、残された配偶者が、被相続人が亡くなった後も、家賃の負担なくその建物に住み続けることができる権利です。あくまでも配偶者が住み続ける権利なので、売却したり所有者に無断で賃貸したりすることはできません。また、あくまで居住建物は他の共同相続人が所有権を有しているので、他人が所有する不動産です。そのため、相談者が配偶者居住権を取得した場合は、善良な管理者の注意をもって居住建物の使用・収益を行わなければなりません。完全な所有権を、「配偶者居住権」と「配偶者居住権の負担付の所有権」の二つに分割する、というイメージです。

 配偶者居住権の権利は、完全な所有権より価値が低いので、相談者さまが取得する財産が相続分をオーバーしてしまう金額が小さくなります。
 相談者が配偶者居住権を取得できるのは、そのような遺産分割協議が成立した場合か、配偶者居住権を取得させる内容の遺産分割の審判が出た場合です。仮に、息子さんが配偶者居住権について反対された場合でも、息子さんの不利益の程度を考慮してもなお相談者の生活を維持するために特に必要があると裁判所が認める場合には配偶者居住権が認められる余地があります。

 また、相談者が亡くなった後のことまで考えると、相続税の節税という観点から配偶者居住権を利用するメリットがあることもあります。相談者が亡くなった後に息子さんが相続するときにも一定以上の財産が相続される場合には相続税が発生することになり、家の所有権を相談者が相続した場合には、家の不動産の価値を含めた財産について相続税の金額の算定をしなければならないことになります。これに対し、配偶者居住権は亡くなった際に相続される権利ではないので、相談者が亡くなった際の相続税の金額の算定を抑えられることにつながります。
 

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