押さえておきたい不動産相続のイロハ File.2
週刊かふう2018年5月25日号に掲載された内容です。
相続問題を相談できる専門家 法律のエキスパート【弁護士】
遺産相続をするには、非日常的な手続きがたくさん出てきます。円滑な相続を進めるためにはさまざまな職種の専門家の力が必要になってきます。その一つが、あらゆる法律問題を取り扱うことができる弁護士。今回は、法律のエキスパートである弁護士についてお話しします。
「相続」が「争族」に変わる瞬間
遺産相続は、さまざまな法律的知識や手続きに関する知識などが必要になる非常にややこしい問題です。相続人の話し合いで円満解決できれば何の問題もありませんが、話し合いが容易にまとまるとは限りませんし、相続が原因で家族間に確執が生じることも少なくありません。その解決が司法の手に委ねられることも多々あることです。
家族(被相続人)が亡くなった場合、遺言書があればそれに従って相続するのが原則ですが、遺言書が無い場合は、相続人全員で遺産を分割するための協議をしなければなりません。相続人全員が協議し合意に至ったところで「遺産分割協議書」を作成し遺産分割が始まるのです。しかし、これには相続人全員の署名と押印が必要になりますから、なかなか上手くいかないのが実情です。例えば相続人となる兄弟が4人いたとして、1人でも「NO」と言えば、遺産分割は前に進まないことになります。行き詰まった時の最終手段が、相続人が家庭裁判所に申し立てする「調停」や「審判」ということになるのです。
調停では、第三者の調停委員や裁判官が、相続人の間に入り、合意に向けて話し合いを進め、円満な解決を模索していきます。しかし、その調停でも合意に至らない場合は、裁判官が強制力のある審判を下すことになります。審判の内容が不服な場合は、審判が下りた日から2週間以内に、高等裁判所に抗告を申し立てる。それを過ぎると審判が確定します。
誰もが知る「法律のプロ」
ここまで事が進むと、まさに修羅場ですから「争族」ですね。人間関係の修復はもはや不可能と言ってもいいでしょう。残念ですが、骨肉の争いになることが多いようです。この様な場合は稀と言いたいところですが、実際には多く発生しています。
このようなもめ事を個人で解決しようとしたらかなりの労力と時間が必要となるでしょう。そこで、登場するのが「弁護士」という存在です。弁護士は誰もが知る「法律のプロ」です。一番の強みは簡易裁判所だけではなく、地方裁判所や家庭裁判所、高等裁判所などのすべての裁判所における代理権を持っていること。当事者の代理人として交渉をすることも可能ですから、難しい問題はその法律のプロである弁護士にお願いする。それが厄介なもめ事を解決する一番簡単な方法でもあり、遺産相続の問題を弁護士に依頼する最大のメリットといえるでしょう。解決だけでなく、その後のさまざまな法的手続きなどをスムーズに行えるというところにも、多くのメリットがあります。
それでも相続問題は、他の民事事件の中でも争いが長引きやすい問題ですから、10年を超えて解決しない事件も多く存在します。そのことからも、弁護士の選任も大きなポイントになってきます。相続問題に長けた経験豊富な弁護士と巡り合うためにも、セミナーや無料相談会などへ足を運ばれてみるのも得策ではないでしょうか。いずれにせよ相続のトラブルは、知識の乏しさと意識の低さが根底にあるともいえます。そうならないためにも、日頃から相続に対する準備をする必要があるでしょう。