知っておきたい 相続の基礎Q&A File.19
週刊かふう2020年10月16日号に掲載された内容です。
離婚による財産分与前に相続が発生した場合について
離婚に際して、婚姻期間中に夫婦で形成した財産を清算する制度として、財産分与があります。夫婦どちらかの名義の不動産も財産分与の対象となりますが、財産分与がまとまる前に元配偶者が死亡することもあります。その際の手続きの可否や注意点について、見ていきましょう。
Q.離婚して元夫とは既に他人になっているので、元夫名義の財産については、兄と姉の2人で話し合って分配することになると言われました。家の土地建物は、2人で貯蓄したお金で取得した財産なので、納得できません。
私は、夫と結婚してから、共働きで貯蓄してきました。20年ほど前に2人で貯蓄したお金で土地を購入し家を建てました。このとき、土地と建物は夫の名義にしました。私と夫の間には子どもはいません。
実は、数年前から夫との折り合いが悪くなり、夫婦げんかが絶えなくなってきてしまいました。私と夫は、離婚について話し合いましたが、家の土地建物を含む財産分与については話がまとまりませんでした。一刻も早く離婚するのが優先だと考た私は、財産分与の話はまとまらないままでしたが、昨年離婚しました。
そんな折、元夫の兄から、元夫が亡くなったということの連絡がありました。元夫の両親は既に他界していて、元夫の親族は兄と姉の2人です。元夫の兄からは、私は離婚して元夫とは既に他人になっているので、元夫名義の財産については、兄と姉の2人で話し合って分配することになると言われました。
私としては、家の土地建物は、2人で貯蓄したお金で取得した財産なので、納得できません。家の土地建物について、私が何か主張することはできないでしょうか。
A.離婚の成立から2年以内であれば、未清算の状態になっている財産分与について家庭裁判所に調停または審判を申し立てることができます。
婚姻期間中に夫婦で築いた財産は、夫婦の一方の名義の財産であっても、離婚に際して、財産分与の対象となります。これは、夫婦で婚姻期間に共同して形成した財産の清算のための制度です。今回の夫名義になっている家の土地建物や、夫婦それぞれの名義の預貯金などが財産分与の対象となります。
離婚の成立から2年以内であれば、未清算の状態になっている財産分与について家庭裁判所に調停または審判を申し立てることができます。
今回の相談者のケースのように、何らかの事情によって離婚する時に財産分与の話し合いができないこともありますので、このような場合は離婚の届け出をして離婚を成立させてから、家庭裁判所に財産分与の調停を申し立てることも認められています。今回の相談者は、離婚が成立したのが昨年のことということですので、2年以内の期間制限の点は問題ありません。また、その請求をする前、もしくは財産分与が確定する前に相手方が死亡した場合でも、その相続人に対しての財産分与請求も認められています。
したがって、今回のケースでは、元夫の相続人である元夫の兄と姉を相手方として、財産分与の請求をすることができます。その意味で元夫の兄と姉の言い分は正しくありませんが、元夫の兄と姉が元夫の相続人であることは間違いないことです。そのため、元夫の兄と姉が不動産の名義を変更し、財産分与が認められる前に第三者に売却などすることもあり得ます。
これを防ぐためには、裁判所による仮処分などを利用することが考えられますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。