教えてコンサル金城さん 不動産のギモン解決! 第4回 資産の有効活用を考える
財産価値を可視化する
今回は、土地や建物など複数の不動産を持つKさんの事例を紹介します。Kさんのご相談は、「毎年、固定資産税を払う資金の捻出に困っているのでどうにかしたい」というものでした。そこで、不動産の棚卸しともいえる「ROA分析表」の作成から始めました。
「ROA」とは、総資産に対してどれだけの利益を上げられたかを示す指標のこと。今回は複数の不動産を項目ごとに調査して、財産価値を可視化することにしました。その際の必須アイテムが、市町村役場の資産税課で取得できる「航空写真」です。
航空写真は不動産の土地形状が分かるだけでなく、近隣の土地利用状況も確認できるので、不動産資産の活用方法を多角的に判断する材料になります。ROA分析表は、不動産の健康診断書のようなもので、現状を知って改善に向けて行動する部分で似ているかと思います。
Kさんの分析表を見てみると、複数の不動産を所有しているものの、賃貸物件を中心に厳しい収支状況が浮き彫りになっていました。その要因として、①不動産収入の大半を占めるアパート1棟の収支が悪い、②相場より安い賃料で土地を貸している、③活用していない更地があることなどです。加えて、Kさんも長年先祖から受け継いだ土地を子どもたちにどう継承するか悩んでおられたので、いくつか改善方法を提案しました。
収入を増やすプランニング
まずは、アパートの収支改善のために借入金利を低くする「借り換えを行う」ことです。さらに賃借している土地の賃料見直しや遊休地などの活用法を上げました。
改善にあたって、Kさんが無職であることなど課題もありました。
無職ですと、借入金利を低く変更するのは容易ではありません。そのためにKさんの収入が増えることを証明する必要があり、収入アップできるようプランを練りました。
そこで一部の土地を2分割して、その一部は売却して、捻出した資金で残った一部の土地に共同住宅を建築して不動産収入を得るという案です。金融機関には、活用方法の計画を提出して何度も話し合いを重ねて、ある金融機関にその案が受け入れられました。Kさんは共同住宅の賃貸収入の一部から固定資産税を払い、さらに他の不動産を購入して、次の資産活用へとつなぐことができました。
土地の有効活用によって、新たな収益物件の建築で収入が増えただけでなく、既存のアパート借入金利を低くできたことが収支の改善につながりました。さらに固定資産税を払うだけだった更地を一部売却して、その資金で老朽化したご実家の建て替えに取り組んでいます。
適切な資産運用とは
今回のポイントは、不動産活用を行う上での「税金の支払い」です。不動産を所有すると、固定資産税以外に、所得税など他の支払いもありますので、Kさんの事例では税理士と税金の支払いについて入念に打ち合わせも行いました。
Kさん自身も、「ROA分析表」から不動産資産の価値を可視化することで、改めて所有不動産の価値を見いだすことができ、それに合わせて適切な資産運用をしたことで生活資金の捻出をしっかりできたと喜んでいます。所有資産で困りごとがあれば、不動産のプロへの相談で改善点が見つかるかもしれません。
次回は、「家を建てる・購入前に考えたいこと」について紹介します。
***プロフィール
金城 久雄(きんじょう ひさお)
1963年生まれ、嘉手納町出身。住宅販売や不動産会社勤務を経て、2004年に独立。2016年に、(有)iホーム不動産コンサルティングに社名変更。不動産コンサルティングマスターとして、狭小地有効活用や住宅、住宅兼アパートのプランニングを数多く手掛ける。
沖縄県不動産コンサル実務研修会セミナー講師、暮らしの行政相談員としても活動中。
沖縄県不動産コンサルティング協議会理事