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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

思い出の瞬間が次々生まれる 7人家族の伸びやかな平屋

思い出の瞬間が次々生まれる 7人家族の伸びやかな平屋

DATA
設  計: アイワ企画株式会社
      建築士事務所
     (担当/上原麻生・木下葵)
敷地面積: 265.44㎡(約80.29坪)
建築面積: 114.22㎡(約34.50坪)
延床面積: 110.12㎡(約33.30坪)
用途地域: 未指定
構  造: 補強コンクリートブロック造
完成時期: 2021年2月
建  築: アイワ企画株式会社
     (担当/石川航)
電  気: 有限会社丸市電気工事社
     (担当/佐渡山安丈)
水  道: 株式会社明正電設
     (担当/伊波哲也)
キッチン: 大里総合建材株式会社
     (担当/大城盛正)

開放感や居心地といった住み手の感覚は、設計に大きく左右されます。
大人数だからといって広さや機能性・効率性をいたずらに求めるのではなく、アイデアと工夫次第でそれぞれの家族にフィットした快適な空間づくりができることを、今回のIさん宅の事例は示しています。

 

週刊かふう2023年6月23日号に掲載された内容です。

思い出の瞬間が次々生まれる 7人家族の伸びやかな平屋

細かな工夫を積み重ねてスッキリとした空間を実現

 Iさんの新居は床面積約33坪の平屋です。県内の新築注文住宅としては標準的なサイズといえますが、家族構成は夫婦プラス子ども5人の大所帯。いつもリビングダイニングに全員が集まりにぎやかに暮らしながらも、まるで窮屈さを感じない点が設計のマジックであり、「キッチンに立つと部屋の隅々まで目が届き、天井も高くて体育館や音楽ホールのよう。見ているだけで開放的な気分になりますね」と奥さま。
 築後2年以上が過ぎ、生活感を許容しながらもスッキリとした印象を保てる背景には、無駄な通路を省いて居住スペースを広げたり、造作収納を充実させて置き家具を極力なくしたり、空間のボリュームを最大限に生かすための工夫がちりばめられています。

 家づくりのスタートは、現在の土地との出会いがきっかけでした。以前まで住んでいた2DKのアパートは、子どもたちの成長につれて徐々に手狭さを増し、住まいのサイズアップが喫緊の課題に。持ち家か否か等のこだわりはなく、ご主人が「私たちの生活スタイルに最適な条件がそろっていた」という土地を見つけたことで「戸建てのマイホーム」へと舵を切り、地元の建築会社と一緒にプランの検討を始めました。
 家族が身近に感じられるように、何をするにも移動しやすいように、平屋にすることは当初からの既定路線でした。間取りは東西に細長い敷地形状に合わせて、南面中央にLDK、その北側に主寝室と可変式の子ども室、西端に水回りをそれぞれ配置。中でも団らんの場であるリビングダイニングは、天井高3.5メートル、対面キッチンと合わせると約21帖の広さを確保し、縦横の奥行き感を創出しました。隣り合う子ども室とは引き戸一枚で直結しており、現在はすべての戸を開けたまま、リビングの延長として使用しています。

思い出の瞬間が次々生まれる 7人家族の伸びやかな平屋

水回り・収納はゆったり仕様。家の中全体が遊び場になる

 家族7人の生活を受け入れる仕掛けは玄関から始まっています。図面上で「シューズクローゼット」と書かれたスペースは、壁一枚で仕切られただけのオープン収納で、靴などを並べる可動棚が壁に設置されています。土間部分も広く、自転車やゴルフバッグなどの荷物を楽々と保管できます。
 朝のお出掛け時の混雑を避けられるように、洗面室には大人3人が並んで使える洗面化粧台を造作し、トイレも2カ所に用意しました。脱衣室や浴室もゆったり仕様で、「7人でお風呂に入っても問題ありませんでした」。
 家族全員の衣類置き場として、主寝室と子ども室の2カ所にウオークインクローゼットを併設。後者は水回りスペースとの間を行き来する通路を兼ねており、「洗濯・乾燥したものをすぐ片付けられる。ハンガーポールも付いているのでとても便利ですね」。また今のような梅雨時には、ガス乾燥機と室内干し用の天井ポールが大活躍しています。

 デザイン面は奥さまが主導し、ナチュラルで優しい雰囲気にコーディネートしました。床材に採用したのは、土足にも対応した硬質なフローリング材で、「ボールがよく跳ねるから球技に最適。最近は子どもたちがバスケットボールにハマリ出したのですが、天井も高いので、ゴールの位置にテープを貼ってシュートの練習をしています。室内では以前からよく縄跳びもしていたし、まるで運動場ですね」と苦笑い。
 リビングダイニングの高さを生かしたアイデアとしてはもう一つ、身長計のウオールステッカーが天井高いっぱいに貼られています。木を模したイラストはインテリアのアクセントにもなっており、7人分の成長の記録が思い出とともに刻まれていきます。

思い出の瞬間が次々生まれる 7人家族の伸びやかな平屋

空間ごとの最適なバランスを考えたリビングアクセス型のプランニング

床面積の3分の1を占めるLDKと、各室4帖以下のミニマムな子ども室
スムーズな空気の循環と採光を可能にする、開閉自在のハイサイドライト

アイワ企画設計担当:木下葵さん(左)・上原麻生さん

 家族7人が住む平屋の設計です。敷地条件やコスト面から建築可能な住宅のサイズには限りがあり、全員が室内で過ごしても窮屈さがなく、いかに開放感が得られてゆとりある空間を創出できるかがポイントになりました。
 中でも「家族で過ごす時間を大切にしたい」とのご要望を踏まえ、LDKのボリューム確保は最優先事項。結果としてリビングダイニングは15・5帖、キッチンと合わせると約21帖の広さになりましたが、これはIさん宅と同規模の住宅ではなかなか見られないサイズ感です。
 一方では無駄なスペースを徹底して省く必要があり、例えば隣接する子ども室は各室3・9帖まで圧縮しました。「ベッドと机を置ければ十分」とIさんからの了解があったのはもちろんですが、新築後に開いた完成見学会ではお客さまからの評判も上々で、最近ではむしろ私たちから、同様にミニマムなサイズの子ども室をご提案するようになっています。

 間取り全体を見れば、リビングを基点にして各居室・スペースへとつながる動線を持つ「リビングアクセス型」のプランになっています。どこへ行くにもリビングを経由するので廊下を設ける必要がなく、家族と必ず顔を合わせるため自然な会話が生まれやすいといったメリットがあります。また沖縄の伝統家屋の形態を参考にして、人が集まるリビングダイニングは南面に置き、主寝室・子ども室はその北側に、水回りは西側にまとめるなど、古くから受け継がれてきた住まいの知恵を緩やかに踏襲しています。

 風通しや採光の面では、リビングダイニングの掃き出し窓から取り込んだ空気が子ども室や主寝室へ流れるように設計しました。ただし子どもたちが成長し、戸を閉めて過ごす時間が長くなった場合に備えて、リビングダイニングの東西2カ所の天井にハイサイドライトを設置。両サイドの窓は手動で開閉でき、熱の排出や明るさの補充に今でも役立っています。
 またコスト管理の一貫として、必要な空間ボリュームを確保しながらコンクリート量の軽減を図る新しい施工方法を採用しました。その後は少しずつマイナーチェンジを繰り返し、現在の「コーラルホーム」の礎になっています。

写真ギャラリー

設計・施工会社

うるま市石川伊波993番地

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