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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

コートで創造する開放感と将来のリノベに備えた家づくり

コートで創造する開放感と将来のリノベに備えた家づくり

DATA
設  計: 久友設計株式会社
     (担当/三井康介)
敷地面積: 233.94㎡(約70.76坪)
建築面積: 84.65㎡(約25.60坪)
延床面積: 139.35㎡(約42.15坪)
用途地域: 指定なし
構  造: 壁式鉄筋コンクリート造
完成時期: 2022年3月
建  築: 合同会社 ブレス創建
     (担当/近藤和則)
電  気: 有限会社 糸洲電気工事社
     (担当/糸洲勝也)
水  道: 有限会社 山商
     (担当/山下富一)
キッチン: パナソニックリビング九州
     株式会社(担当/又吉清寿)

ほぼ正方形の躯体に2つのコートを内包し、家の内側に半戸外を創造した開放感をデザイン。
2世帯にリノベーションすることを見据えて今と将来の住まい心地をプランニングしました。

 

週刊かふう2023年6月16日号に掲載された内容です。

コートで創造する開放感と将来のリノベに備えた家づくり

子ども時代の憧れをマイホームで実現

 家づくり当初をうかがうと「早くに母を亡くし、団地住まいの子ども時代を過ごした私は、個室の子ども部屋、犬を飼うことに憧れ、アットホームな団らんを大切に思っていました」とマイホームへ抱いていた夢を話すTさん。「子や孫たちとともに末永く暮らすため、将来的に2世帯住宅へリノベーションする基盤を備えた家を望んだ」とのこと。また、高齢者施設を夫妻で経営する職業的な知見から、バリアフリーなど年齢を重ねたときの身体的な負担を軽減する具体的な工夫も外せない要素でした。

 コンクリート打ち放しの造形を好む奥さまは、会社のスタッフや友人たちを招くことも考えて1階は団らんを中心としたオープンな空間づくり、2階は家族の個々人の空間へとフロアごとの機能分けを希望。プライバシーを守りつつ開放的な空間を実現し、落ち着きあるシックなインテリアへ仕上げたいと考えたそうです。

 奥さまの実家から徒歩圏内に見つけた敷地は緩やかな斜面のため、周辺の建物から視線が届きやすい地形。そこで建物の内側に採光性を高める2つのコートを設け、RCルーバーで通風性を得ながら外部からの視線を遮る、内へ開けたプランを採用しました。

 配水管や配電盤を1階用と2階用にあらかじめ用意し、2階にもシャワー室を設置。スロープのあるアプローチは将来的に2階へ昇降する階段スペースとする位置に決めるなど、2世帯リノベーションを見据えた長く愛されるマイホームが誕生しました。

コートで創造する開放感と将来のリノベに備えた家づくり

団らんを育みつつ子どもには1人1室

 ゲストルームにもなる和室と、大型TVセットが設置されたLDKがひとつの空間となる1階は、ソファの横に愛犬のサークルを置き、家族が集う場になっています。月に一度は「家族の日」と称して全員で自宅カラオケを楽しんでいるとのこと。
「子どもに個室を与えたので自室にこもらないか心配でしたが、宿題なども勉強道具を持ってきて1階でやっています。夜もどちらかの部屋で一緒に寝ていて、子どもたちの絆を感じられ幸せな気持ちになります」とTさん。

 南側コートは空を額縁のように切り取る上部の開口とRCルーバーを通して光と風がたっぷり入り、バスケットボールをする次女のために設置したゴールリングがアクセントに。長男は平日でも早朝から野球の壁当てキャッチボールに励み、夏は子どもたちが簡易プールで水遊びしたり、休日にゲストを招いてBBQパーティーをしたりと、外部の視線を気にせず楽しめる場です。また家の周りをドッグランに仕立て、足を洗う水栓も完備しています。

 グレーのスライスストーンでリビング側を仕上げた高級感あふれるアイランドキッチンは、造作ダイニングテーブルと色調をあわせて一体感を演出。2口設けたコンセントが「家族で鍋やホットプレートを囲むのに便利です」とのこと。
 壁際に設置したワークカウンターの一部に奥さまのワークスペースを設けて、キッチンに立つとリビング、洗面所やバスルームまで視線が届き、子どもたちの様子を見守ることができます。Tさんには2階廊下の突き当たりにワークスペースを創出。「日光が入って今の季節は少々暑いのですが、この位置はリノベーションで2階世帯の玄関になります」と長期計画もバッチリです。

 ダイニング横の北側コートの掃き出し窓からチリンチリンと涼しげな風鈴の音が。「息子が手作りした風鈴です」と奥さまが説明してくれました。北側コートの2階はRCルーバーのおかげで洗濯物を干すのに最適なバルコニーとなっています。

コートで創造する開放感と将来のリノベに備えた家づくり

収納スペースを多めに室内はすっきり空間へ

「収納スペースは多めに欲しいと希望しました」と話す奥さまの言葉通り、小上がりとなった和室の上がり口に引き出し、造作したTVボード下も収納スペース、階段下はキャンプ用品や子どもたちのレジャー用品、愛犬のペットフードなどを収納できるスペースがあります。主寝室は一面が壁収納となっていて、室内はモノがないすっきりとした空間へ。

 クールな印象のTさん宅ですが、階段ホールのブラケットライトやトイレの棚には、キャラクターフィギュアが飾られています。「Tさんの趣味かも知れませんよ」とほほ笑む設計士の三井康介さん。子どもの頃の憧れと子どもたちの夢、未来への希望がたくさん詰まった住まいです。

写真ギャラリー

コートで創造する開放感と将来のリノベに備えた家づくり

家族の成長を受け止める希望を両立させるコートハウス

久友設計株式会社
三井康介さん(一級建築士、一級建築施工管理技士、福祉住環境コーディネーター)

 Tさん家族と久友設計の出会いは建築関係のイベント。「地形を考慮してプライバシーを守りつつ、開放感を享受できる住まい」という希望をかなえるプランニングに時間をかけたと、設計を担当した久友設計株式会社の一級建築士・三井康介さんが振り返ります。
「私は、クライアントの希望に対して複数の回答案を提示するようにしています」
 選んでもらう、一緒に創り上げるという姿勢で設計に臨むことをポリシーにしているそうです。
「どんな暮らしをしたいかについてクライアントとよく相談し、こちらからの提案は平面図や立面図に加えて模型やCGなどで出来上がりイメージを共有してもらえるようにします」
 Tさん夫妻には特徴的な場所となるコートについて、RCルーバーの間隔が異なる模型をいくつか造って違いを説明したとのこと。
「凛とした外観と通風・採光の機能を兼ね備えたコートを創ることによって、希望を実現できた」と三井さんはいいます。吹き抜けのコートや階段ホールは、上下階に居る家族の気配を伝える役割も担います。
「Tさんが高齢者施設を経営していらっしゃることもあって、将来に備えたトイレに必要な機能性や、2世帯住宅へリノベーションする予定に向けた注文事項などは、とても参考になりました」と話す三井さん自身も、福祉住環境コーディネーターの資格を持っています。

 12帖以上のコートを躯体の中に創出することにより居住空間に広がりを生み出し、さらに大きなピクチャーウインドーや収納スペースなどを工夫し屋内や部屋の広さをできるだけ確保するようプランしたそうです。

「見せたいところと見せたくないところをきちんと考えることも重要です」
 Tさん宅で見せたいところは南と北に設けた2つのコート、焼き杉板を転写したコンクリート壁や明かり取りの地窓でモダンに仕上げた和室など。見せたくないところは収納スペースを多く設けて、その中に収めることでクリアしています。
「家族の満足を長年にわたり住み続けることで実現する。それが住まいを設計するときの重要なポイントです」と話す三井さん。住まいとしての希望と目的を明確に、家族の夢をサポートしています。

設計・施工会社

うるま市赤道359-1

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