高低差でプライベートを創造する 父と息子のスタイリッシュホーム
- DATA
- 所在地:うるま市
- 設計:建築空間アボット/Abbot(担当/當山茂)
- 敷地面積:275.70㎡(約83.57坪)
- 建築面積:90.42㎡(約27.40坪)
- 延床面積:90.08㎡(約27.30坪)
- 用途地域:第一種中高層住居専用地域
- 構造:壁式鉄筋コンクリート造
- 完成時期:2020年6月
- 建築:有限会社 沖忠建設(担当/崎山喜忠)
- 電気:有限会社 中原電設(担当/仲村直也、池原啓太、隆建二)
- 水道:前田設備(担当/前田勲、祝嶺好範、備瀬知秀)
- キッチン:株式会社 クッチーナ(担当/福田美直)
- 建具:野崎木工 株式会社(担当/野崎達矢)
- 内部大工:仲村渠清行
音楽好きな父と息子の二人暮らし。
「リゾートホテルのようなオシャレな家にしよう!」と実現した住まいに、きらめく光が降り注ぎます。
※週刊かふう2021年6月11日号に掲載された内容です。
リゾートホテルのようにすみずみまでカッコ良く
お住まい周辺の手入れをしているご婦人に声をかけると、「私はこの家の主の母で、ときどき手入れに寄っているのよ」との返事に戸惑っていると、設計者の當山茂さんがやってきました。
「私の従兄弟にあたる主(Hさん)は離島に赴任中で、この家に一人残った彼の息子も今の時刻は学校へ行っています」
ご主人不在のまま取材スタートとなったHさん邸の敷地は、元は実家があった場所とのこと。Hさんのご兄弟の独立やお父さまの他界など家族構成の変化を受けて、お母さまは小さめの家へ住みかえ、Hさんがこの地に新居を構えることとなったそうです。
「以前の家はどんどん増築を重ねて大きくなったけど、結果的に家の内部には自然光が入らなくて少し暗い感じがしていました」と思い出しながら話すHさんのお母さま。
そんな反省から當山さんに出されたオーダーは「自然光が降り注ぐ、明るく開放感のある家」でした。実家としての位置づけから、駐車場が広いことも必須条件となり、さらにラグジュアリーなリゾートホテルに宿泊することが趣味なHさんと息子さんの好みを反映して、「男2人がカッコ良く暮らす家」を目指してプロジェクトが始動しました。
半円形に抱かれた開放的な半戸外
當山さんとHさんは具体的な意見交換を重ねて、イメージを固めていったといいます。Hさん邸の前は通行人も多く、外部からの視線を遮りつつ街並みに映えるような景観を當山さんは考えていました。
「道路とフロアの高低差を4メートル取れば、通行人との視線も交差しない。角地にあるのでR状となる境界線に合わせてギリギリまで外塀を構築し、その内側にリビングから続くテラスを設けよう。外塀にはスリットを設け、外の気配が感じられる方がいいね」
お酒が好きで来客が多いHさんも、リビングからテラス、和室が一体となって〝もてなせる〟デザインに共感。テラスへの開口部は全開できるよう特別な仕様で仕上げ、その上部にハイサイドライトを設けて午後の光が住まいに広がるよう計画しました。
「周辺は古くからの知り合いばかりだから、『どんな家が建つのかねー』と工事中から注目されていましたよ」とお母さまが言葉を添えます。
付かず離れず快適な親子の距離
成人した息子と父が暮らす男同士の関係は〝干渉しすぎず、離れ過ぎず〟が快適。玄関アプローチと坪庭を挟んで向かい合う息子さんの個室はHさんの部屋より高さを上げたステップフロアで適度な距離感を演出しつつ、高窓からこぼれる明かりによって互いの気配は感じ取れる構造です。
「リゾートホテルのようなスタイリッシュな空間」を実現するため、シャワーブースや洗面ボウルにはデザイン性を大切にした趣向を凝らしています。キッチンもタッチ式水栓や外国製の食器洗浄機を採用するなど、豊かな時間を支える上位ランク機器でまとめました。
音楽好きなHさんのために造作したクローゼット上部に備え付けたレコードラック、空調設備を目隠しする木製ルーバー、曲面に仕上げた和室の天井、お酒のボトルをライトアップするキッチン背面のバックライト、コンクリート壁にはめ込むように収めた配電盤など、視線がとまる先々にオシャレな工夫やこだわりが見つかります。Hさんと當山さんの感性が響き合い、Hさん親子のスタイリッシュライフが描かれた住まいは、ご主人の帰りを心待ちにしていることでしょう。