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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

丘上にたたずむ 眺望と愛車を愛でる家

丘上にたたずむ 眺望と愛車を愛でる家

DATA
設 計: 有限会社門一級建築士事務所
敷地面積: 1140.00㎡(約344.00坪)
建築面積: 215.19㎡(約66.00坪)
延床面積: 198.47㎡(約60.00坪)
用途地域: 無指定
構 造: 鉄筋コンクリートラーメン構造
完成時期: 2022年9月
建  築: 有限会社丸義建設
     (担当/野原篤)
電  気: 大嶺電気工業株式会社
     (担当/大嶺猛)
水  道: 有限会社共同工業
     (担当/新垣利紀)
キッチン: 大里総合建材
     (担当/大城盛正)

夫婦と子ども2人が暮らすOさん宅は、芝庭を囲んで住居スペースとガレージがL字型に配置された、建坪約60坪の平屋です。
丘上の立地ならではの眺望を生かした開口計画をはじめ、無駄をそぎ落としたシンプルなデザインにまとめることで、機能的で居心地の良い住空間に仕上がっています。

週刊かふう2023年11月17日号に掲載された内容です。

丘上にたたずむ 眺望と愛車を愛でる家

リビングから見える場所にガレージを置く

 青空と緑の芝生の組み合わせはやっぱり最強。庭側からOさん宅を眺めると、水平方向のラインを強調したシャープなフォルムが背景に映え、建築そのものの美しさが感じられると同時に周囲の景色にも調和して、敷地環境全体の魅力を引き立てています。
「直線だけで構成されたシンプルな家を建てたかったんです。外観も家の中も余計な装飾は極力省き、日常が見えないスッキリとした住まいにしたいと思っていました」と話すご夫妻。L字に分かれた建物のうち、支点の位置にある玄関から東西方向に延びているのが住居スペースで、ゲストルーム・LDK・子ども室・主寝室・水回りが直線上に配置されています。すべての居室が真南に正対しており、とりわけ幅3メートル超のFIX窓が設置されたリビングの開放感は圧巻。窓の外に目をやれば、左手の分棟内には愛車がずらりと並び、「ガレージ付きの家にすることも、かなえたかった夢の一つです」とご主人は笑顔で振り返ります。

 新居が完成したのは昨年9月。マイホームを持つことは、結婚直後からの念願でした。しかし「ただガレージがあればいいわけではない。リビングから目が届く場所に愛車を置きたい」と考えていたこともあり、条件に合致した現在の土地に決まるまで、かなりの年月と労力を要しました。一方ではその間に着々と家づくりの勉強を進め、「私たち好みの作風が多い」建築士事務所に設計を依頼しました。

 敷地は小高い丘の斜面地です。当初は外出時のアクセスのしやすさを考慮して、麓の前面道路沿いに建築予定でしたが、眺望・開放感を優先して頂付近に変更。エントランスから玄関横の駐車場まで、車で上れる100メートルほどのスロープを造成しました。

丘上にたたずむ 眺望と愛車を愛でる家

生活感を表に出さない緻密な収納計画

「見晴らしの良さは想像以上。丘上に場所を移して正解でしたね」とご主人。「私の実家もすぐ近くにあるのですが、昔からなじみのある地域とは思えないほど、新鮮な気持ちで毎日を送れています」。ガレージ前のテラスにベンチを置いて座り、景色と愛車を眺めながらぼんやり過ごすひとときが、仕事を終え帰宅してからのルーティンになっています。

 家族4人でアクティブに暮らしていても、いまだに新築のように見えるのは、Oさんの要望を的確に捉えた緻密な設計の証し。「生活感が表に出ないように」と収納スペースが至る所に設けられ、例えば大容量の本棚はリビング北側にある共用カウンターの上に、大好きなお酒用の冷蔵庫はゲストルームの横に、それぞれ専用の保管場所を造作。キッチン横にあるパントリーは、中に置く物をあらかじめ決めた上で隠し方を計算しています。また集いの場であるリビングには、庭側に開いた眺望窓の他、スロープに面した北側にも採光窓があり、南北両サイドからやわらかな光が差し込んで、明るく清潔感ある印象を高めています。

 効率的な家事動線も見逃せません。家の西端にある室内干し場は、トップライト・ポール・換気窓を完備。その先には家事室・ウオークスルークローゼット・洗面脱衣室へと続く回遊動線が用意されており、「完全にプライベートな空間だし、家事をしながら気分が上がるように」と奥さま好みのチェック柄でデザインされています。
 それ以上に豊かな表情を見せるのが、ガラス張りの玄関です。整然としたLDKなどの居室とは対照的に、「家の中で唯一、飾り付けを楽しむ場所になっていますね」。そもそも玄関をガラス張りにできたのは、人通りがない丘上だから成せた業。季節ごとに装いを変えて、Oさん一家の暮らしに彩りを添えています。

写真ギャラリー

丘上にたたずむ 眺望と愛車を愛でる家

本質を追求することで真の建築美が生まれる

住み手の使い勝手・機能性を優先した、無駄のないシンプルな形態・構造
眺望・敷地条件を最大限に生かすために、外構計画も一工夫

有限会社門一級建築士事務所

「デザインとは問題解決である」としばしば言われます。住宅建築についていえば、造形的な美しさはもちろん大切ですが、それ以前にどうすれば住み手の要望と使い勝手を無理なく両立できるのか、全体的な住み心地を高めるには部分部分がどう機能すべきかを熟慮すべきであり、その結果として立ち現れる形態にこそ本当の美しさが宿ると考えています。
 したがってどのプロジェクトでも「特別なこと」をしている意識はほとんどなく、今回のOさん宅も、まずは敷地条件とお2人の思いに素直に応えることを念頭に置き、設計を進めました。
 例えば採光・通風の要所となる南側に大きく開き、開口部を極力対面に設けて換気・排熱を促すことは、古来の家づくりの作法にのっとったもの。リビングには方立のないFIX窓を中央に設置し、丘上の立地ならではの眺望を最大限に取り込みました。またメイン照明には間接照明を採用し、視界の広がりを保つとともに光源が直接目に入らない環境を整えることで、日が暮れた後の安らぎ深い雰囲気を演出しています。

 外観や外構計画にも気を配りました。住居スペースやガレージの南面の外壁を躯体の外側まで張り出したのは、エアコン室外機などの目隠しが第一の理由です。当初は一か所のみの予定でしたが、全体の意匠バランスを考え、現在の形に落ち着きました。

 また最近は視線のスムーズな流れを重視した、外塀を設けない外構プランをご提案する機会が増えています。Oさん宅も芝庭の境界線が、眼下の集落やその先の山並みへと自然とつながるように留意して、庭の位置やサイズを調整しました。一方では丘の頂付近にあるため転落時のリスク管理を図り、階段に踊り場を設けるように斜面に段差をつけています。

 建築場所が麓の道路付近から丘の頂へ変更になったことに伴い、北側の開口を存分に生かせた点もポイントです。人目を気にする必要がないので窓を大きく取ることができ、明るさを補い開放感を促進。さらには北側隣地の植栽を借景にでき、冬は満開の桜が楽しめます。

設計・施工会社

門(じょう)一級建築士事務所

TEL:098-888-2401http://www.jo1q.com/

TEL:098-888-2401http://www.jo1q.com/

南風原町字津嘉山750-1

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