大容量の「蔵」(※)を持つ 打ち放しと木が調和した家
- DATA
- 所在地:北谷町
- 家族構成:夫婦、子ども3人
- 設計:間+impression(担当/儀間徹)
- 敷地面積:196.81㎡(約59.53坪)
- 建築面積:117.94㎡(約35.67坪)
- 延床面積:221.82㎡(約67.10坪)
- 用途地域:第一種中高層住居専用地域
- 構造:鉄筋コンクリート造2階建て
- 完成時期:2019年8月
- 建築:株式会社沖秀建設(担当/池原元勝)
- 電気:合同会社屋宜電気工事(担当/屋宜宗春)
- 水道:三建設備株式会社(担当/山内昌)
- キッチン:KITHCEN HOUSE
家々がひしめく住宅地に、今年8月に完成した2世帯住宅のKさん宅。2階子世帯では打ち放しのコンクリートと木の質感をバランスよくコーディネートし、機能的で美しいデザインを実現。リビング脇には大容量の「蔵」(※) があり、生活にゆとりとリズム感を生み出しています。
ペタペタと触りたくなる素肌美しいコンクリート
コンクリート打ち放しの家に憧れていたご主人と、木の風合いを取り入れたいと考えていた奥さま。それぞれに色味や質感までとことんこだわり、両者のバランスは建築士にお任せして、無機質的でハードな雰囲気と自然の温かみが同居する居心地のいい住まいが出来上がりました。ただし外観とアプローチ階段はすべて打ち放しで仕上げ、「家に帰ってくるとうれしくなって、つい壁をペタペタと触ってしまうんです」とご主人。コンクリートのトンネルを抜けて玄関を上がり、ぐるりと踵を返して室内を見渡せば、LDKが一体となった開放感ある空間が広がります。
一方で計画当初からご夫妻が共通して希望していたのが、大収納空間である「蔵」(※) を活用したプランにすること。リビングの脇には高さを メートルに抑えた蔵(※)が設置されており、日常にあふれ出る生活用品を格納すると同時に、「現在は子どもたちにとって絶好の秘密基地になっています」と奥さま。また蔵(※)の上には階段を介して子ども室が置かれ、構造的にはワンフロアでありながらも2層の居室構成になっています。
そしてこの「蔵」(※)を上手に取り入れた住宅を多数手がけていることが、設計事務所選定の大きなポイントでした。かつて祖父が住んでいた家を建て替えて、Kさんご家族とご主人の両親が暮らす2世帯住宅の検討を始めたのが6年ほど前。知人から「空間の使い方が上手な建築家がいる」との情報を得て完成見学会に足を運び、蔵(※)の魅力を初めて認識しました。「敷地は60坪弱の変形地で、実質的な居住スペースは2階ワンフロアのみ。子どもも2人、3人と増え、今後ますます物が多くなっていくだろう私たちにとっては、限られた空間の有効活用は必須でした」とお2人は振り返ります。
こだわりの建築意匠に景色や植栽が潤いを添える
Kさん宅における空間の活用術は、縦横無尽かつ斜めにも展開。例えばLDKに架かる勾配天井は、蔵(※)の上にスキップ状に重ねた子ども室側を高く、リビング側を低く。天井の高低差は視線の流れに変化をもたらし、室内のオープンな印象を一段と高めてくれます。さらにリビングのバッファ的な役割を担う和室とテラスは、台形状の敷地に合わせて斜めにレイアウト。「三角形のスペースは意外と無駄が生じない」と建築士から心強い説明もありました。
デザイン面では「シンプルかつ生活感があまり表に出ないように」とのコンセプトに合わせて、こだわりの材料・設備を随所に盛り込みました。見た目重視でご主人がセレクトしたアイランドキッチンは、豊かな階調を帯びた上品な意匠が特徴。またキッチン背面にある洗面室の洗面台は、モルタルのような風合いの新しい左官仕上げ材「モールテックス」で施工し、バスルームとテラスにはそれぞれ趣の異なるタイルを選びました。天井に黒のダクトレールを配してスポットライトを散らしたリビングの照明は、ご主人のイメージを形にしたもので、コンクリートと木をベースにした空間にもマッチしています。
間仕切りがほとんどなく、「家中どこにいても家族の気配を感じられる」空間構成は、建築士に要望を伝えて狙ってプランニングしたものですが、子ども室から町並みの向こうに海が見えたことは、蔵(※)をつくったからこそのうれしい誤算でした。狙い通りにシンプルに整えた現在の状態を保ちつつ、今後狙うはコンクリートと木と緑の調和。植栽や観葉植物が増えてくれば、ますます潤いのある住まいになりそうです。
※ミサワホーム株式会社は、住宅内に開発、創造した収納空間を『蔵』と命名しています。