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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

悠久の風と緑が薫る 笑顔はじける二世帯住宅

悠久の風と緑が薫る 笑顔はじける二世帯住宅

DATA
設  計: 株式会社東設計工房
    (担当/山城東雄、久高恵美子)
敷地面積: 296.3㎡(約89.60坪)
建築面積: 136.0㎡(約41.14坪)
延床面積: 230.31㎡(約69.67坪)
用途地域: 無指定(都市計画区域外)
構  造: 近隣商業地域
      第一種低層住居専用地域
完成時期: 2019年6月
施  工: 有限会社松都建設
     (担当/山内辰也)
電  気: 有限会社 糸洲電気工事社
水  道: 有限会社中原電設
     (担当/池原啓太)
キッチン: 株式会社共立技研
     (担当/源河武司)

マイホームは人生の設計図。
家族の新たな生活拠点としてNさんが選んだのは、ご主人が生まれ育った実家を建て替えて、
1階を親世帯、2階を子世帯にした二世帯住宅をつくるという選択肢でした。

 

週刊かふう2023年1月13日号に掲載された内容です。

悠久の風と緑が薫る 笑顔はじける二世帯住宅

「緑・沖縄の文化・省エネ」をメインテーマに

 緑の中にたたずむ赤瓦の姿は、いつ見ても絵になります。場所は往来の多い通りのすぐ近く。敷地南側にはフクギや桜の木が立ち並び、那覇の町中とは思えない静寂さがあります。Nさんにとっては昔からなじみのある、生まれ育った場所とはいえ、「家づくりを始めてから足元を見つめ直す機会が多くなり、改めて気付かされたことがたくさんあります。環境の豊かさもその一つです」とご主人は振り返ります。

 生家の建て替えに際し、Nさんが掲げたテーマは「緑・沖縄の文化・省エネ」の三つ。農業系の大学を卒業したNさんは、もともと植物が好きだったこともあり、周辺の緑豊かな環境を活用できないかと考え、隣接する文教施設の境界に植えられたフクギなどと並行するように新居に植栽スペースを配置しました。1・2階のリビングからは、自宅の木々や花とともに隣地の借景を取り込んだ、潤いある眺望を楽しめます。

 再発見した環境の魅力には、自然に限らず文化的な側面も含まれます。周囲には由緒ある建造物が点在し、「首里城がこんなにくっきりと見えたなんて」と土地に堆積した歴史性を意識するようになり、「沖縄の文化」の象徴として赤瓦の寄棟屋根を採用。また伝統的な沖縄民家の形態を手本にして、「家族が集うリビングや子ども室は明るい南東に置き、水回りは北西側に」と間取りを組み立てました。

 もう一つのテーマである「省エネ」は、分かりやすいところでは、新築後に屋上に設置した太陽光発電システムでしょう。しかしそれ以上に重視したのは、明るくて風通しがよく、いつも通りの生活を送るだけで無理なく冷房負荷を抑えられるようなプランニングです。家づくりに際し、省エネ性をはじめすべてのテーマを網羅した理想的なプランを提示してくれたのが、依頼した設計事務所でした。

悠久の風と緑が薫る 笑顔はじける二世帯住宅

風や光とともに視線・動線・笑顔が巡る家

 Nさんの新居は、親子世帯それぞれに独立した玄関を持つ完全分離型の二世帯住宅です。間口が狭く奥行きの深い敷地形状に合わせて躯体がレイアウトされ、無駄なく効率的に暮らせるように各居室・スペースが配置されています。

 2階を例に見ていくと、玄関から子ども室に沿って真っすぐにホールが延び、その先には開放感あふれるLDKが現れます。寄棟屋根の勾配を現しにしたリビングは、天井が高く吹き抜けのような印象があり、一方でキッチンやダイニングの天井は木で化粧され、温かみある雰囲気に仕上がっています。視線も縦横によく通り、例えばキッチンからはリビング・ベランダ越しに借景も活用した緑あふれる眺望を眺められるほか、ダイニングのコーナーガラスを通して北と東の2方向への広がりも感じられます。

 住み心地を高める仕掛けも盛りだくさんです。肝となる家事動線は、キッチンを起点にサニタリー・屋外干し場・小上がりの和室をぐるぐると回れるルートを確保。空気巡りのよさも際立ち、特に敷地北東に残る古井戸の回りを坪庭にしたことで、家の長辺にあたる東西方向にも驚くほど風が抜けていきます。

「家は人生の大半を過ごす場所。新居を建ててから、自分や家族を取り巻く周囲の景色がよく見えるようになり、何をするにも気持ちに余裕が生まれました」とご主人。子どもたちも今まで以上によく遊んでよく学び、「環境を整えることの大切さを実感しました」。
 3世代水入らずの団らんタイムは、キッチン脇のダイニングテーブルで。設計段階では「こんなに広いと持て余さないだろうか」と半信半疑でしたが、建築士から強い勧めを受けて採用しました。その結果は言わずもがな、笑顔や会話が絶えない刺激フルな空間になっています。

写真ギャラリー

悠久の風と緑が薫る 笑顔はじける二世帯住宅

採光・通風にも有効な、敷地形状に合わせた雁行型のフォルム
積極的に借景を取り入れて、周囲の自然・町並みとの共生を図る

建築家:山城東雄さん

 どんな建築であれ、“場”のポテンシャルを最大限に生かした設計を心がけています。家が建つ土地に一つとして同じ条件はありません。形状・周辺環境・日射や風通しなど固有の要素を丁寧に読み解き、プランに反映させることで、造形的にも唯一無二のデザインを備えた住み心地のいい家ができあがります。

 今回のNさん宅でいえば、間口が狭く、奥に進むにつれて段々と広がりを増すような敷地形状に合わせた結果、採光・通風に有効とされる雁行(がんこう)型のフォルムに落ち着きました。
 平面図を見ると、敷地東側にある玄関の位置と比べて、ダイニングキッチンや主寝室はそれぞれ北側に大きく張り出していることが分かります。そこでは古井戸の回りに整備した坪庭が、いわゆる光庭として大きな役割を果たしており、敷地周辺を舞う光と風を、東西・南北両方向へスムーズに流してくれます。
 南側隣地の植栽を借景に利用した点も、Nさん宅の大きな特徴です。計画地は景観条例の規制エリアではありませんが、境界面に豊かな緑をたたえ、首里城を視界にとらえる場の雰囲気を考慮して、赤瓦の寄棟屋根を提案しました。緑や沖縄文化を志向するNさんの要望とも合致して、那覇の町中でありながらも自然と共生したような、潤いのある外観になりました。

 平面プランの組み立ては、沖縄の伝統家屋の形態を意識しつつ、住み手の暮らし方、生活スタイルをベースに整えています。特に子育て真っ盛りの2階子世帯では、キッチンを基点に最小限の動きで効率的に家事がこなせる水回り動線を構築し、家族がどこにいても常に目配りできるように、リビング、和室など他のスペースの位置関係を決定しました。
 また内装面では、借景の緑とのつながりを感じ、安らぎを得られるように、フローリングをはじめダイニングキッチンや玄関ホールの天井など、随所に木質材料を取り入れました。一方で1階は、回遊できる家事動線は2階同様ですが、リビングをお父さん好みの堀込天井にしたり、玄関や和室、ダイニングに坪庭を望む窓を設けたり、趣の異なる雰囲気に仕上がっています。

設計・施工会社

那覇市松尾1-9-40

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