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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

空間の性格が重なり合う 建築家が住む職住自在の家

空間の性格が重なり合う 建築家が住む職住自在の家

DATA
設  計: 株式会社casa studio
     (担当:奥濱司)
敷地面積: 306.01㎡(約92.57坪)
建築面積: 100.83㎡(約30.50坪)
延床面積: 86.13㎡(約26.05坪)
用途地域: 無指定
構  造: 鉄筋コンクリート造
完成時期: 2020年6月
施  工: 株式会社カネヨシ工務店
内装・塗装: 株式会社グッドホーム
電  気: 曙電気
水  道: 松設備
キッチン: エッカ石油株式会社
ステンレス:有限会社海邦ベンダー工業

人々の住まいづくりをサポートする立場の建築家本人は、果たしてどんな自邸を建てているのでしょうか。
casa studio代表の奥濱司さんは、職・住二つのスペースが曖昧に交差する、シンプルながらもユニークなプランの家を築きました。

週刊かふう2023年1月27日号に掲載された内容です。

空間の性格が重なり合う 建築家が住む職住自在の家

部屋の用途を固定せず、仕事とプライベートの境界は曖昧に

 建築家・奥濱司さんの自邸は、サトウキビ畑の間を走る通り沿いにあります。東西に細長い形状をした床面積約26坪の平屋で、完成は2年半前。親子3人で団らんを育む憩いの場であると同時に、設計事務所としての機能も備えています。

「住宅をベースに、いろいろ展開できる空間をつくりたいと考えていました。仕事環境を整えることは当初から計画していましたが、仕事とプライベートの境界は曖昧にして、用途が固定されないプランを目指しました」と奥濱さんは経緯を説明します。

 家の中央にある玄関は公私共用。住宅目線で見た場合、玄関を上がって左右に広がるスペースの切り分けは、左手がリビングで、右手がダイニング&キッチンです。横並びに置かれた応接テーブルや、壁際のパソコンデスクの様子から、ダイニングは食卓の他にオフィスとして使用していることが一見して伺えますが、リビングとの間に間仕切りはなく、「子どもにとってはいい遊び場ですね。部屋の見境なく、いつも家中をのびのびと駆け回っています」。

 奥濱さんは2007年に独立し、16年に糸満市西崎町にメインオフィスを移転しました。自宅兼事務所の設計に際し、まず頭にあったのは「静かでのどかな環境で暮らす」こと。また自宅分とは別に来客用の駐車スペースが必須であることから、ある程度の敷地のボリュームを求めて郊外を見て回り、90坪強の広さがある現在の土地を購入しました。完成後も西崎町のオフィスはそのまま残し、仕事内容やスケジュールに応じて二つの事務所を上手に使い分けています。

空間の性格が重なり合う 建築家が住む職住自在の家

すべての居室が庭に隣接。独立した大型キッチンも見どころ

 LDKの公私の境こそ曖昧とはいえ、日常生活のコアな部分は切り分けられています。リビングの戸を挟んで西側のスペースは、主寝室とサニタリーを集約した完全プライベートエリアです。毎日の身支度や洗濯関連の家事がコンパクトな動線の中で完結し、無意識のうちに生活満足度を高めてくれます。

 採光・通風面での工夫も見られます。敷地南面の庭に向かって主寝室に大きな窓が並んでいるほか、サニタリーの勝手口を開ければ屋外干し場に通じ、バスルームには坪庭に面して換気窓を設けるなど、「すべての居室・スペースが庭と接するようにレイアウトしました」。家の隅々まで光と風が届き、明るく清潔感あふれる雰囲気が保たれています。

 もう一度LDKに戻り、日常の生活空間としてキッチンを見渡すと、その個性的な造りに改めて驚かれます。ダイニングに併設して約8帖もの独立したスペースを持ち、壁際にぐるりとシンクやコンロ台、調理器具が並んでいる様子は、まるで飲食店の調理場さながら。
 これは料理好きな奥さまの要望にとことん応えようとデザインしたもので、「大人数の来客があった場合でも、食事の準備・片付けがとてもスムーズ。近年はなかなか難しかったけど、行事ごとで親類が集まる際にも役立ちますね」。つまり毎日の仕事場になっている目の前のダイニングは、時にゲストの食事会場に早変わりします。

 ダイニングには花ブロックに覆われた坪庭が隣接し、日が暮れると室内の明かりが通りにこぼれ、建物全体が宵闇に浮かび上がります。「周囲には街灯がほとんどなく、星がとてもきれい。自然豊かな環境が身近に感じられていつでもリフレッシュでき、明日への活力につながりますね」と奥濱さん。公私ともに充実した毎日を過ごしています。

写真ギャラリー

空間の性格が重なり合う 建築家が住む職住自在の家

今と未来の変化に柔軟に対応したフレキシブルな空間設計
施主・設計者・施工者が一体となって、施主が思い描く理想の住まいを形にする

建築家:奥濱司さん

 事務所名に付けているcasaとは、スペイン語で「家」のこと。発音的には“カサ”と読み、漢字の「傘(かさ)」の造形のように、施主・設計者・施工者ら建築に関わる人々が力を合わせて、より良い家をつくりあげていきたいという思いを込めています。 
 今回ご紹介している自宅兼事務所は、私のような仕事のスタイルだからこそ成立した特殊なプランかもしれませんが、どんな住まいであっても同じように施主の描く理想を想像し、コミュニケーションを重ねて、コツコツと形にしていくことをモットーにしています。

 今回購入した土地は90坪強の広さがあるのに対し、床面積自体は約26坪と親子3、4人住まいの住宅としては標準的なサイズです。事務所機能を盛り込むことは当初から予定していたため、ゲストのアクセスのしやすさを考慮しながら、建物と駐車場の配置計画を決定。その上で、大小の庭を設けて外部環境を積極的に取り込むことや、シンプルながらもインパクトのある立ち姿にすることを念頭に、外構を含めてプランニングを進めていきました。
 隣り合う居室の性格に応じて庭のつくり方にも変化をつけ、例えばリビング・主寝室側の庭はやや広めに取り、通りからの視線を遮るようにぐるりと壁で囲う一方で、ダイニング側の庭には簡易的な目隠しとして花ブロックを設置。また玄関脇には杉板型枠の木目を転写したコンクリート壁を立ち上げて、わが家のシンボルとしました。

 平面的には敷地南側からの光と風を存分に取り込めるように、ダイニング・リビング・主寝室を東西に横並びにレイアウトし、掃き出し窓を連続して配置しました。
 兼用のダイニングとリビングはあえて仕切らずに空間の曖昧さを残し、段差を付けて緩やかにゾーニング。将来、子どもが成長して一人部屋が必要になった場合には、リビングを仕様変更して独立した個室にしてもいいだろうと考えています。
 また意匠面では色や素材の多用を避け、白と黒が基調のコントラストの効いたデザインで統一しました。視線の抜け感が良いすっきりとした雰囲気を損ねないように、梁型をカーテンボックスに代用して内部に間接照明を仕込むなど、ディテールにもこだわっています。

設計・施工会社

株式会社casa studio(カーサスタジオ)

TEL:098-894-7818http://www.casa-studio.net/

TEL:098-894-7818http://www.casa-studio.net/

糸満市西崎町3-82

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