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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

こまやかなデザインの力で 毎日の暮らしが色づく家

こまやかなデザインの力で 毎日の暮らしが色づく家

DATA
設  計: アアキ前田 株式会社
   (担当/前田慎、仲村勇志(旧所員))
敷地面積: 115㎡(約35坪)
建築面積: 69㎡(約21坪)
延床面積: 125㎡(約38坪)
用途地域: 第二種住居専用地域
構  造: 鉄筋コンクリート造 2階建て
完成時期: 2021年1月
施  工: 株式会社 山城設計
     (担当/天久秀樹)

同じ限られた空間であっても、色の選び方や仕切り方一つでその場の空気や気分は大きく変わってきます。
今回の主人公であるTさんご夫妻は、多彩なアイデアをもとに建築士の力を借りて、こだわりを詰め込んだ彩り豊かな住まいをつくりました。

 

週刊かふう2023年3月24日号に掲載された内容です。

こまやかなデザインの力で 毎日の暮らしが色づく家

お気に入りの色・素材をバランスよくコーディネート

 ホワイト、ブラック、ウッド。Tさん宅のデザイン構成は3系統。実際には色数以上にカラフルな印象を受けますが、一言で表せばコーディネートのバランスがいいのでしょう、にぎやかな雰囲気の中にも落ち着きのある、大人楽しい空間に仕上がっています。
 デザインのディレクションは、ご夫妻自ら積極的に行いました。「ネットや雑誌を参考にインスピレーションを広げて建築士さんとイメージを共有し、あとは間取りなどに合わせて整理してもらった感じですね」とご主人。
 例えば「リビングをダウンフロアにして坪庭を隣接させ、室内外が緩やかに連続した一体感のある空間にしたい」といったTさんの要望をかなえた上で、リビングを挟んで坪庭と対面にある壁も大きくガラス張りにしたり、リビングの掘り込み位置を窓際から数十センチ離したりしたのは建築士の提案。結果として「フロアの両サイドに視線が抜けるので開放感があるし、窓際に腰掛けられるのは何かと便利」と感じるなど、プラスアルファの住み心地が手に入りました。

 Tさんの新居は建坪約21坪の2階建てです。1階に主寝室と子ども室が並び、LDKをはじめ家族の生活スペースは2階に置かれています。周囲からの視線が気になる都市型の環境のため、リビング横の坪庭がメインの採光部の役割を担い、屋上へ行く階段の下には花壇も用意されています。
 団らんの中心であるリビングは、段差を生かした造作のソファと掘り込み部分の畳を黒で統一。またリビングと坪庭を見渡す位置には、白・黒・木の3要素がそろったカウンターキッチンがあり、バーのような見た目の通り、お二人が「大好きなお酒を楽しむために」デザインしました。お気に入りのハイチェアに座ってゆっくりグラスを傾けた後は、リビングの窓際席で坪庭の緑を眺めながら飲み直すもよし、屋上に出て涼むもよし。くつろぎのシーンは整っています。

こまやかなデザインの力で 毎日の暮らしが色づく家

建築のプロのアドバイスで生活効率が一気に向上

 完成は2年前。家づくりを始めるにあたり、計画地の限られた面積を生かすには「縦方向に空間を活用するしかない」と自ら下案を練って検討を重ねましたが、待っていたのは理想と予算のせめぎ合い。その中で依頼した建築士は「すべての要望を聞き入れてくれて、まずはやってみましょうと前向きにチャレンジしてくれました。その姿勢がうれしかったし、実際に出してもらったプランも納得のいくものだったので」。

 先に見たLDKをはじめ、思い描いていた生活シーンは幾つも形になりました。「狭くてもかまわないので、仕事や勉強に集中できる場所がほしい」といった要望は、“こもれる書斎”となってリビング脇に誕生。またキッチン奥に広がる水回りには、大人2人が横並びで使えるワイド洗面台を設置でき、その隣にある収納エリアも、寸法を細かく指定して造作してもらいました。
 スペースの都合で断念したものがあっても、結果オーライだったケースがほとんどです。キッチンの真裏にある浴室は、バスタブを置かずにシャワーだけにして、フロアを横切れる通路を確保。キッチン・水回り・リビングの間をぐるぐる回れる動線は、生活効率の向上に大きく貢献しました。同様に1階子ども室も、当初は2人分を計画していましたが、建築士のアドバイスに従い一室に抑えました。子どもたちが将来巣立った後には多目的に活用できそうです。

 室内に限らず屋外環境も、年々と豊かになっています。最近は坪庭の整備に余念がなく、花壇や鉢植えの植栽がすくすくと育ち、視界に占める緑の割合が随分と増えてきました。屋上へも頻繁に行き来していますが、「もっと遊べるようにできないか」と思案中。家づくりの楽しみはまだまだ続きます。

写真ギャラリー

こまやかなデザインの力で 毎日の暮らしが色づく家

施主のアイデアに専門的な知見をプラスして暮らしと空間をデザインする

リビング・坪庭・屋上の連続性を確保し、屋外環境の活用を促す
周辺の都市環境に配慮した、外壁+ルーバーの二重外皮構造


アアキ前田 株式会社
一級建築士:前田慎さん

 今回のTさん宅における私の役割は、交通整理兼調味係。とてもアイデアが多彩なご夫妻で、間取りや各スペースのデザインについても明確なイメージをお持ちでしたので、数々の幅広い要望をどうやって形にするか、何ができて何ができないかを切り分けて、不整合が生じないように建築家の観点から組み立てていく作業がメインになりました。

 もちろん、与えられた材料をただ盛り付けて並べるだけではなく、生活効率や住み心地を考慮して、私なりのスパイスを多分に加えています。例えば「屋上を使えるようにしたい」という要望に対しては、外階段をどこかに設けるより、リビングと屋上を直接行き来できる動線を用意してあげれば、無意識のうちに利用頻度は高まります。
 もともとリビングには坪庭を併設予定でしたので、リビングから続く坪庭壁面に屋上階段を設置し、室内外の連続性を強調したプランをご提案しました。この他にも、前で触れられていましたが、リビングの両サイドに腰掛けられるように窓際までフローリングを延ばしたり、”こもれる書斎”をあえて小上がりして、「入り口をまたぐ」動作を必要とすることで特別感を高めたり、随所に細かな工夫を施しています。
 各スペースの色使いにしろ、仕上げの質感の選定にしろ、ほぼすべてのデザインはTさんの立案によるものですが、照明計画だけは私が担当しました。最近はLEDのソケットランプが発売されており、コストを抑えつつおしゃれなムードを創出したいシーンなどでよく採用しています。

 採光・通風面では、周辺環境との折り合いがポイントになりました。計画地は集合住宅や商業施設、幹線道路などがひしめく都市部にあり、前面道路を挟んだ真向かいには、2階とほぼ同レベルに通行者用の階段がありました。四方どの向きにも開くのが難しく、十分な明るさと風通しを確保するには接道面に坪庭を置く必要がありますが、通行人と視線が重ならないようにしなければいけません。そのため坪庭には、外部の視線が届かない高さまで壁を立ち上げるとともに、2階から屋上階段まで覆うようにしてルーバーを設置。言うなれば2枚の外皮を持つような構造にして、プライバシーを担保しています。

設計・施工会社

那覇市首里平良町1-29-8 ライオンズマンション首里102

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