天然素材スペイン漆喰の表情豊かなアーチ壁の家
- DATA
- 設 計: 有限会社 武一建設
- 敷地面積: 262.12㎡(約79.43坪)
- 建築面積: 109.93㎡(約33.31坪)
- 延床面積: 103.21㎡(約31.28坪)
- 用途地域: 指定無し
- 構 造: 壁式鉄筋コンクリ―ト造
- 完成時期: 2022年12月
- 施 工: 有限会社 武一建設
西洋建築特有のアーチを多用した意匠性の高い空間に、愛するアメリカンスタイルを具現化したTさんの家。
シーンごとに異なる心地よさで家族を満たしています。
週刊かふう2023年4月28日号に掲載された内容です。
曲線が生み出す味わいがライフスタイルにマッチ
少し足を延ばせば西海岸、読谷村の明るく開けた住宅地。道路に面して建つその家は、継ぎ目のない真っ白な外壁が大きなアール(曲線)を描く、特徴のある佇(たたず)まい。玄関ポーチは壁をくりぬいたような垂れ壁のアーチ。外観から欧米の雰囲気たっぷりの住まいです。
扉を開けると再びアーチの垂れ壁が現れ、海外のレジデンスに足を踏み入れたような錯覚に陥ります。邸内はスペイン漆喰の白壁に包まれ、涼やかさを感じる光と空気感。パティオを抱くリビングには外国製の大きなソファが置かれ、天井にはヤシの葉形のシーリングファン。キッチンは間口の広いフルオープンで天窓から差し込む光が爽やか。白のアイランドキッチンをよりクリアに引き立てています。
ダイニングセットはTさんファミリーが「アパート住まいの時から使っていたもの」と話す、ヴィンテージなニュアンスの米国製。その背後の窓際には白のカウンターが備わり、カフェのような雰囲気が出来上がっています。LDK全体が白・グレーで統一されるなか、ダイニングに面する子ども室の扉はアクセントにもなるミントグリーンとブルー。エリアごとにデザインが異なるペンダントライトは目を楽しませ、空間にリズムを生み出しています。
どこを切り取っても異国の日常を感じる空間づくり──その効果を高めているのが、間口やコーナーなどに用いられたさまざまなアーチです。単に南欧風なおしゃれ・かわいいだけでなく、空間のつながりを柔らかに演出し、洗練された“おおらかさ”を醸成。その気配がTさん家族のライフスタイルにマッチし、五感にふれる心地よさへと結実しているようです。
要望を絞り込み、後はお任せ。建築士の自宅が参考に
夫婦ともにアメリカンスタイルが身についたTさん。家づくりは、新築した先輩の家に招かれたことがきっかけでした。「欧米風のしゃれた家で、私たちの理想とも重なっていたんです。この家を手掛けた所なら、イメージ通りのスタイルも実現できると、それまでくすぶっていた家づくりの思いが一気に覚醒しましら」と笑い、話します。
並行して始めた土地探しもトントン拍子で進み、計画が始動してからわずか2年ほどで新居が誕生。「プランについては絶対的な要望を2点に絞り、後はほとんどお任せしました。建築士さんの自宅兼モデルハウスで住みよさを体感していたので、迷いはなかったですね」と振り返ります。
その要望の1つはドッグルームの確保。ドッグトレーナーの一面を持つご主人たっての願いで、リビングとパティオの両面に接する、移動に便利な位置に設けられています。要望その2は「アイランドキッチンの採用ですが、実はこれ、壁付きのペニシュランキッチンに大工さんが手を加え、アイランド型に改造したもの。費用を抑えながら求めるデザインは実現しようと提案があり、カウンターも使いやすいよう造作してくれたんです」と笑顔の奥さま。「デザインだけでなく家事のしやすさも大満足です」
動線、デザイン、環境。家族に合った世界一の家
洗濯から乾燥・収納までを引き受けるランドリールームは、キッチンと扉1枚でつながる位置にレイアウトされ、陽光が降り注ぐ天窓付き。その東側に洗面室、浴室が並び、主寝室からダイレクトにランドリールーム~浴室に直行できる短縮動線は大きなポイントです。また、ご主人いわく「水回りエリアは、雑多になりがちなものを保管するバックヤード感覚で活用できて便利。リビングをきれいに保つのにすごく役立っています」。それでも空間デザインは、一貫して外国風。おしゃれな仕上がり。暮らしへの愛情が垣間見られます。
完成から約3カ月、今の気持ちをたずねると「すべての時間、すべての場所で幸せを感じます。世界一の家です」とご夫婦で満面の笑み。さらに、今でも毎日のように「使いやすいように工夫されている」「時間や角度によって雰囲気が違う」など、新たな感動と発見があるそうです。お子さんたちも、はにかみながらもにっこりと、住み心地の良さを伝えてくれました。
新築にあたり県内移住のかたちになるも、入居当初から近所の方々と声を掛け合うなど、フレンドリーな環境もTさんファミリーにぴったり。家から始まる新たなつながりは、夢をかなえたハッピーライフをより豊かに彩っていくことでしょう。
写真ギャラリー
お任せいただくからには、想像以上の喜びとアイデアを。
間取り・デザイン・品質、すべてに誠意をこめて注文住宅ならではの価値を高める
二級建築士:末松 渚さん
T邸の設計にあたり、まず配置を決めたのは、最優先事項であったドッグルームでした。ご主人から、犬は暑さに弱いとうかっがていたので、南北に伸びる土地を生かして北側に確保。さらに屋上を活用したドッグランもプランに加え、パティオ側の手すりは陽が抜けるアイアンで造作。その影がパティオに映り込み目を楽しませるとともに、辺り一帯には陽光が行き渡り、リビングも明るく照らすプランとなっています。
間取りのポイントは、『表』であるLDKと、洗濯室・家族収納・水回りといった家事やプライベートを担う『裏』を明確に分離させつつ、往来は速やかに無駄なく行えること。これにより、物がまとまりやすくなり、リビングやダイニングが雑多なものであふれることなく、常にきれいな状態を保つことができます。
家族が集うスペースがいつもすっきりしていれば、ゆっくりとくつろげ、疲れも癒やされますし、気持ちにもゆとりが持てます。また、裏エリアはキッチンと扉1枚で繋がっているため、朝夕の慌ただしいなかでも同時にあれこれでき、生活が軽やかになります。
このプランは私の設計方針の1つで、仕事が忙しくても家事は快適にこなせるようにという思いがベースになっています。共働きのTさんご夫婦にも通じるものがあったようで、提案には喜んでいただき、今回の採用となりました。
デザインや内装・外装については『統一感』を軸に、ご夫婦が収集した画像などから好みや理想を読み取ってご提案。ご夫婦の好みを活かしつつ、お二人から感じられるナチュラルな雰囲気や、弊社の家づくりの特徴である曲線を生かした柔らかな印象も生きる、さまざま表情で魅せる住まいを目指しました。
弊社がご提案する曲線を生かした住まいの意匠は、私自身がその愛らしさに感化され、実際に足を運んだミコノス島の伝統的な家からヒントを得ています。丸みやアーチをともなったフォルムは人の息遣いが感じられ、心を和ませる優しさをたたえています。
また、私たちの家づくりでは、夏の強烈な日差しという沖縄と共通する地中海性気候にも着目し、内壁には環境にも優しい天然素材のスペイン漆喰を使用。塗装の技法も現地にならい、2~3回の重ね塗りを実践しています。そのため優れた調湿作用と消臭効果が十分に発揮され、快適な室内環境づくりを実現しています。
このほか、扉や収納建具などはオリジナルで造作しモールディングを施すなど、意匠性と高い施工技術をもって、自由設計ならではの魅力に磨きをかけ、より深い愛着とともに末長く快適に暮らせる家づくりに取り組んでいます。
設計・施工会社
有限会社武一建設
TEL:098-965-3001 | http://takeichikensetsu.com/