穏やかな光が満ちる 家族の距離が近い家
- DATA
- 所在地:宜野湾市
- 家族構成:夫婦、子ども3人
- 設計:建築空間Abbot/アボット(當山茂)
- 敷地面積:177.59㎡(53.81坪)
- 建築面積:106.24㎡(59.82坪)
- 延床面積:195.49㎡(59.24坪)
- 用途地域:第二種中高層住居専用地域
- 構造:壁式RC2階建て
- 完成時期:2018年9月
- 建築:(有)沖忠建設(担当:崎山喜忠)
- 電気:(有)中原電設(担当:仲村直也、高良弘二)
- 水道:前田設備(担当:前田勲、祝嶺好範、備瀬知秀)
- キッチン:(株)クッチーナ(担当:福田美直)
アパートが隣接して建つ住宅地に、二世帯住宅への改装にも対応できるマイホームを新築したIさん夫妻。
光と風が通り抜け開放感あふれるLDKには子どもたちがいつも集い、賑やかな家族の時間を楽しんでいます。
暗くて圧迫感のある土地に明るい家を建てる
個性的なカフェやショップが建ち並ぶ大通りから、少し入った静かな住宅地に建つIさん宅はRC造の2階建て。杉板模様の打ち放しの壁を白いフレームで囲った2階側のデザインが特徴的で、白を基調としたシンプルな外観ながらも目を引きます。
奥まった場所にある玄関の扉を開けると、広々とした玄関と吹き抜けの階段室。玄関側にはトップライトが、階段室の壁一面にはすりガラスのFIX窓があり、そこから取り込んだ光が床一面に敷かれた光沢のあるタイルに反射し、明るく広がりのある空間を演出しています。上下階を結ぶ階段も、ステップの間から視線が抜けるタイプを採用したため、光を遮ることはありません。
結婚後も東京で暮らしていたIさん夫妻が「伸び伸びとした環境で子育てがしたい」と、奥さまの出身地である沖縄に家を建てようと移住したのは長女が1歳の時。沖縄に移住した当初から住んでいるアパートの建つ便利な生活環境を気に入り、土地はこのエリアに絞って探すことにしました。 ところが、土地探しは思いのほか難航。ようやく出合った土地も三方向に背の高いアパートが建っており、第一印象は「暗さと圧迫感がとても気になった」というものでした。
前向きに考えることにしたIさん夫妻は、「この圧迫感も設計のプロならきっと解決してくれるはず」と、思い切ってその土地を購入。住宅完成見学会を何箇所もめぐり、最終的に家づくりのパートナーに選んだのは、光や風を巧みに取り入れて変化に富んだ空間づくりを得意とする建築士でした。「見学させてもらった家が気に入ったということもあるのですが、初対面の時に建築士さん自ら色んなことを説明していただき、その誠実な人柄にも惹かれました」
空間をより明るく、
より広く使うための工夫を随所に施す
コンクリート打ち放しの無機質さと木の温かさ、それぞれの素材を組み合わせたシンプルなデザインが魅力のIさん宅。1階は造り付けの収納家具で仕切っただけのワンルームとデッキテラスのみですが、ここはご主人の両親との二世帯住宅を前提にプランニングされたもので、最小限の工事で水回りや居室が確保できるよう配管は済ませています。ご主人は「両親は今も現役で働いているので、1週間程度の滞在しか実現できていませんが、この家を気に入ってくれているようです」と話します。
2階はスキップフロアを用いてLDKと子ども室、水回りなどを配置した立体的な空間構成。LDK以外の空間は80センチほど高い位置にあるので、料理中も目線が合わせやすく子どもたちとのコミュニケーションはスムーズです。「家にいる時間の大半を過ごすLDKは、家族が集まりやすい雰囲気にしたい」との思惑通り、LDKは家族憩いの場になっています。
またこの家で唯一視線が抜けるLDKの北東側には大開口部の先にテラスを配し、カウンターのように使える手すり壁を設けました。「ここからの月の眺めは最高ですよ」とご主人お気に入りの場所になっています。
家の中をより明るく、より広く使うための工夫も随所に施されています。例えばスキップロアの床下は収納庫となっており、使用頻度の少ない物はここに一括収納できます。また洗濯干し場に光庭の役割を持たせてグレーチング床を採用し、1階まで光がくまなく行き渡るようにしています。
当初「敷地も暗いのに、コンクリート打ち放しは家の中が暗くなるのではないか」と不安だったというIさん夫妻ですが、実際に住んでみるとそれは杞憂だったことが分かったそう。現在は「シールを貼られたり落書きされたりしても気にならなくなりました」と、3人の子どもたちの成長をおおらかに受け止める住まいに満足そうです。