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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

洗練された可愛さと住みよさへの優しさに包まれて

洗練された可愛さと住みよさへの優しさに包まれて

DATA
設  計: 有限会社 武一建設
     (担当/末松渚)
敷地面積: 351.46㎡(約106.50坪)
建築面積: 151.96㎡(約46.05坪)
延床面積: 145.38㎡(約44.05坪)
用途地域: 第一種低層住居専用地域
構  造: 壁式鉄筋コンクリ―ト造
完成時期: 2020年8月
建  築: 有限会社 武一建設
     (担当/伊波武一)

変形地を生かした個性的な間取りは、家事ラクな動線も見事。
細部まで行き届いた暮らしやすさへの配慮と、高いデザイン性が心地よさを高めています。

 

 

週刊かふう2023年9月1日号に掲載された内容です。

洗練された可愛さと住みよさへの優しさに包まれて

図面をみれば一目瞭然。自在に動ける軽やかさ

 うるま市の住宅街に建つKさんの家は、直線の美しさとアーチの愛らしさがともに際立つ洒落た佇まい。邸内にも「線」と「丸み」が生かされ、趣のある表情を生み出しています。
 リビングは漆喰の白壁と、明るい木目のフローリングが広がる、ゆったりとした空間。テラスや高窓から差し込む光がまばゆく、キッチンのダクトレールにつるされた緑も爽やか。いるだけで心が和みます。

 もとは、ご主人のお父さまが趣味にしていた畑だったという土地は、多角形の変形地。土地形状を生かした住まいは間取りにも大きな特徴があり、リビングとキッチンは同じフロアに展開されつつ、キッチン・洗面室・家事室が、横一線に配置されています。
 いずれも仕切りのないオープンな空間なので、移動はきわめてスムーズ。さらにアイランドキッチンと洗面台の間、洗面台と家事室の間から、ウォークスルー収納側にスッと抜けられる機能的なレイアウト。ウォークスルー収納も、「歩きながら物を収められます」と奥さまが話すように、長い廊下を生かした有効な造りで、床から天井までをフル活用した大容量も魅力です。
 2連になったウォークスルー収納の壁向こうは、子ども部屋になる予定の洋室と、主寝室と子ども室を合体させた空間。「成長して個室が必要になった時に仕切りを設ける予定で、それまではここで家族一緒に就寝です」と奥さまが説明してくれました。

 リビングの一角には畳スペースの小上がりが設けられ、デスクカウンターと本棚も設置されています。全体に利便性が光る間取りですが、要所に取り入れられた住みよさへの配慮もまた秀逸でした。

洗練された可愛さと住みよさへの優しさに包まれて

無理なく「きれい」を保つヒケツが満載

 畳スペースは、存在感が強くなりすぎないようにと、リビングの入り口付近からは目に入らない位置に配置。一方で、ソファに腰掛ける相手と視線が合うよう、気遣われています。
 家事室は奥まった死角を生かし、“山”になりがちな洗濯物はすべてそこに。生活感が薄まるだけでも、家事のストレス軽減につながります。また、カウンター仕様の家事台は大きめに確保され、取り入れた洗濯物のはその場で畳んで台上に置き、出し入れの手間を省略。ウォークスルー収納については「とにかくサッとかたづけたい時は、まとめてここに」と大活躍のようです。

 空間づくりにおいては、人の通りが多い外部からの視線を遮りつつ、邸内からの視界は広がるように工夫。これにより、多角的にテラスの緑が目に入る、素敵な演出も実現しています。日当たりが難しい洗面室には天窓を設置し、降り注ぐ陽光を拡散。ほかにも多数のポイントがありますが、アイデアの1つ1つが暮らしに寄り添った優しさを思わせ、Kさんの家の心地よさをより一層確かなものにしているようでした。

洗練された可愛さと住みよさへの優しさに包まれて

家族も増えてますます楽しいわが家時間へ

 設計を担ったのは有限会社武一建設の末松渚さん。手掛けた家がメディアで紹介され、「ひと目で気に入り、家をつくるならこんなふうにしたい」と夫婦で夢を温めていたそうです。やがて知人を介してその家を見せてもらう機会を得たKさんは、施主さんが住みよさを高く評価していたことに感銘を受け、迷わず決意。「要望は広いリビング、家事がしやすい動線、広く目が届く間取りくらいで、あとはほぼお任せしました。これまでの作品を見せてもらっていたので不安はなかったです」と振り返ります。 
 完成したのはコロナ禍のまっただ中でしたが、「家が快適で自宅待機や外出自粛も苦にならなかった」とご主人。お子さんたちも、のびのびと家遊びを満喫していたようです。

 新居生活3年目を迎えた今も、「家にいるのが1番」と口をそろえ、奥さまは「趣味のお菓子作りでキッチンに立っている時は特に幸せを感じます」と満面の笑み。その傍らのご主人の腕の中では、生後間もない3番目のお子さんが気落ち良さそうに眠りについています。
 住みよさに包まれた家は、元気いっぱいのお姉ちゃんたちのように、健やかな成長を支えてくれるはずです。

写真ギャラリー

洗練された可愛さと住みよさへの優しさに包まれて

敷地の難を逆手に取り、突出した特徴のある家へ
流れをとめない動線+家事のアイデアで真の快適を創造

建築士:末松 渚さん

 施主のKさんが親御さんから譲り受けた土地は、多角形で傾斜もある変形地でしたが、東と南の2面が道路に接した角地であるため、南間口を軸にプランを練っていきました。同時に、2面接道は地元の人や車両の往来も多いという不利な点もあり、特に今回のケースでは住宅街の中でも人の通りが多く、プライバシーの確保も課題の一つとして取り組みました。

 私たちがご提案する家づくりの信条の一つに、「家事がラクになる家」があります。
 家事全般に関わる移動がスムーズにかつコンパクトになることはもちろんですが、家事を単体でとらえるのではなく、普段の生活の一部としての流れ、つながりを重視しています。その方策を追求しながら土地の課題を解決する──難しい面もありましたが、非常にチャレンジングなことで、発想の幅が広がる良い機会にもなりました。

 練りに練った設計には、例えば、洗面台の囲みをなくすなど、当たり前とされてきたことを見直したアイデアも反映されいます。
 家事をしながらあれもこれも、家事以外のことをしながら家事の一部をと、より自由度の高い動線を目指し、なおかつその場での行為自体もなめらかに、気持ちよく行えるよう熟考しました。これは空間づくり・住環境づくりとも重なっています。

 土地の課題解決から生まれた長い廊下は、歩きながら収納行為ができるウォークスルー収納に昇華させ、空間の有効利用とともに、容量の増大と使い勝手の向上も同時に実現。結果的に、土地の難を利点に変えた好例となりました。
 家事がラクについては、私自身の生活感も反映されています。例えば、仕事から帰ってきたときリビングに物が散乱しているとどっと疲れが増す。忙しくて畳むべき洗濯物がたまり、ストレスになっていく。そんな家事を担う人の“あるある”を少しでも解決できるように、生活者としての気づきも大事にし、建築家としてできることを常に考え、お客さまの住まいづくりに取り入るよう努めています。

 そのためにお客さまの日常的な動きについてできるだけ細かくヒアリングし、ライフスタイルやライフプランも合わせてうかがいます。Kさんの例でとると、長子と末っ子の年の差が大きく開いていることに着目し、子ども部屋はまず1室だけ設け、上から順にゆずり受けて行き、部屋のニーズが重なった時は主寝室と合体させた洋室に仕切りを設ける案をご提案。将来を見据えた無理・無駄のない空間づくりとその発案も、私たちの大事な役割だと考えています。

 デザイン面では曲線の優しさと美しさを活かした意匠を得意とし、建具も自社でデザイン製造するこだわりで、1棟1棟、表情が異なる、オリジナル性の高い家をご提供しています。内壁は沖縄の風土・自然に合ったスペイン産の漆喰を使用しており、自然な気持ち良さにこだわった健やかかな住環境づくりに努めています。

設計・施工会社

うるま市石川白浜1-1-9

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