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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

伝統的な沖縄家屋の知恵を 現代に再構築したフォルム

伝統的な沖縄家屋の知恵を 現代に再構築したフォルム

DATA
設  計: 株式会社建築工房亥
     (担当/伊佐強・松田笑里)
敷地面積: 594.48㎡(約179坪)
建築面積: 192.06㎡(約58坪)
延床面積: 186.03㎡(約56坪)
用途地域: 市街化調整区域/未指定
構  造: 壁式鉄筋コンクリート造
完成時期: 2023年2月
建  築: 株式会社 仲座建設
     (担当/西銘秀夫)
電気  : 有限会社 新光組
     (担当/仲山清也)
水  道: 丸一設備工業
     (担当/末吉忠一郎)
キッチン: 沖縄協同ガス
     (担当/並里宗志朗)
外  構: 有限会社エココンシャス
     (担当/島添融)

南に向かって大きく開けた3つのボックス。
理にかなう沖縄の伝統家屋のレイアウトを大胆にアレンジし、大空間の開放感を実質的な居住性が彩るモダンな住まい。

 

週刊かふう2023年9月8日号に掲載された内容です。

伝統的な沖縄家屋の知恵を 現代に再構築したフォルム

求めるポイントを絞り込んだ注文住宅

 約180坪の敷地に建つ、威風堂々としたSさんの住まい。駐車場から爽やかな青い光にエスコートされて玄関へ着くと、3つの動線が展開されます。家族は直進して廊下へ進むほか、右手のシューズクロークに靴やスポーツ用具などを収めて廊下へ。来客は左手のモダンな和室へ、直接上がることができます。その和室には木目を強調したダークトーンの床の間やフラットにもアレンジできる掘りごたつ、折り上げ天井などがあり、豪華な仕上がりに感動させられます。開口部にカーテンや障子は使わず、サッシの内側に木製引き戸を設けている点もひと味違う趣があります。

「ただただ若者ウケする“オシャレな家”をお願いしました」とSさん。奥さまは「私もこだわりはあまりなく、部屋数のほかは“掃除や家事がラクな家”だけを希望しました」と回想する二人ですが、その仕上がりは目を見張ることばかりです。
 ちなみに、スポーツ系の部活動に打ち込んでいるお子さんは肩湯のあるバスタブと、建築工房 亥の作品集で見た「まるで『青の洞窟』へ入っていくよう」と説明された幻想的なアプローチは「絶対、外せない!」と強く希望したそうです。
 施主としては絶対条件を絞ることで設計士の豊富な経験から提案される多彩なアイデアが採り入れられ、その結果に大満足というケースがSさん一家のお住まいです。

伝統的な沖縄家屋の知恵を 現代に再構築したフォルム

いくつもの回遊動線が、住み心地を高める

 家事をラクにするキーポイントのひとつに、無駄のない生活動線があります。Sさんのお住まいでは、冒頭で紹介した玄関から広がる3WAYの進行ラインのほか、移動がラクラクな回遊動線がいくつも見つかります。
 アイランドキッチンを中心にしたLDK、物干し場からワークスペースへアクセスできる廊下。ファミリークローゼットは、主寝室と子ども室の両方から直接アクセスするラインと、洗濯物を取りこんだ物干し場から廊下を介して直行できるラインも確保しています。また、部活動で泥だらけになったお子さんが家の裏手へ回って、物干し場の勝手口から入り洗面所を抜けて脱衣所とバスルームへ進めるラインは、住まう家族のライフスタイルを熟考して計画した動線です。

伝統的な沖縄家屋の知恵を 現代に再構築したフォルム

大空間の中で紡がれる、何気ない日常の幸せ

 家全体がひと目で見渡せ、広々としながらも掃除もラクにしてくれる空間計画。その中でも奥さまが特にお気に入りと話すのが、アイランドと壁付けカウンターを平行に組み合わせたⅡ型のシステムキッチン。
「アイランドとカウンターの間が絶妙な距離で、家族3人で同時に料理しても狭からず広過ぎることもなく、作業を連携しながらスムーズに動けます。オール電化にしたので、安心して子どもに料理を任せられるようになりました」と、調理時間が家族の楽しいコミュニケーションタイムも兼ねている様子がうかがえます。
 また「子どもが個室に引きこもらないよう、パソコンなどを使うワークスペースは家族共用としました」と説明する奥さま。
「そんな心配をよそに、日頃は家族3人がいつの間にかリビングに集まってまったりとしています」と笑顔のSさんは、今後は大きな白い壁をスクリーンにしてプロジェクターで映像を見る計画もしているそうです。

 耐久性や耐水性に優れたフロア材のダークブラウンを、ダイニングテーブルやテレビボードなどの造作家具にも採用しているため、広い空間を引き締め、統一感が漂うLDK。対照的に明るいホワイトを壁やロフトに使うことで、上方向への広がり感も演出できます。
 LDKには幅7・2メートルの大きな開口部、その向こうはデッキテラスが広がり、焼き杉板を転写したコンクリートで仕上げた壁がファサードを精悍(せいかん)に見せています。緑の芝生ときらめく青空を背景に、ゆったりと過ごす幸せな日々が広がります。

写真ギャラリー

伝統的な沖縄家屋の知恵を 現代に再構築したフォルム

沖縄の伝統家屋の良さを生かしつつ
モダンなデザインで住まいの風格を物語る

株式会社 建築工房 亥
右:伊佐 強さん(一級建築士・構造設計一級建築士・設備設計一級建築士)
左:松田笑里さん(二級建築士)

「点から線へ、線から面へと広がっていく建築空間を大切にしたい」とのコンセプトを掲げ、建築士として46年、一級建築士事務所 建築工房 亥の設立から27年を迎える伊佐強さん。これまで手掛けた住宅はモダンなフォルムの内に、居住性を熟考した快適な暮らしが広がる企画・設計が印象的です。

 今回紹介したSさんのお宅は、青いカラーガラスをはめ込んだ幻想的なアプローチと3つのブロック(パーツ)が浮いているようなシャープな外観がインパクトを与えています。
「プランニングは建物を敷地のどの場所に建てるか、から始まります」と伊佐さん。
 約180坪もあるSさんの敷地は、沖縄に古くから伝わる南向きに玄関や一番座(和室)、縁側(雨端のあるデッキテラス)などの開口部を、洗面所やバスルームなどの水回りは北西へ配置する家相を採用しています。またリビングを中心に、正面から見て右側をパブリックエリア、左側をプライベートエリアとして集約し、回遊動線を住まいの随所に創造してラクな家事動線、来客時にも気兼ねせず移動できる生活動線を実現しています。屋内の熱気を空気の流れで外へ排出する高窓をデッキテラス側とロフト側に設置した設計も、通風性の高い沖縄の伝統家屋に倣ったランニングコストを抑える工夫です。
 さらに、シューズクロークから廊下へ抜けるコーナーにライトコート、洗面所の天井には天窓と、伝統的な家屋では暗くなりがちな箇所へ自然光を届けるアイデアを施しています。

 伊佐さんが設計したベースプランを細部まで仕上げていくのが松田笑里さんです。
「一番難しいのは、施主さまの意向を優先しつつ予算内に収めることです」と話す松田さん。
 Sさんのお宅では、米ヒバを市松模様に貼った床の間、サッシで最大幅となる7・2メートルの掃き出し窓とバーチカルブラインド、デッキテラスに採用した焼き杉板転写のコンクリート壁、肩湯機能があるシステムバスなどに予算をかけています。一方、水に強く掃除がしやすい置き床式のクイックフロア、目地が少なく掃除がラクな大判タイルと塗装で仕上げたトイレなどでコストダウンを図っています。
「暮らすご家族の快適さを想像しながら機能的な製品を選択し、シックな色彩計画やデザインで見た目をオシャレに仕上げるよう努めています」とのこと。
 一見すると先進さを追究した設計のようですが、沖縄の気候風土に根差した住まいの知恵をふんだんに凝らした上で、建築工房 亥ならではのデザインに仕上げて住まいの風格を高めています。

設計・施工会社

株式会社 建築工房 亥(がい)

TEL:098-898-0390https://www.gai-okinawa.com

TEL:098-898-0390https://www.gai-okinawa.com

宜野湾市嘉数1-12-1-3

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