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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

立ち姿だって誇らしい。東海岸の眺望を生かした コンクリートハウス

立ち姿だって誇らしい。東海岸の眺望を生かした コンクリートハウス

DATA
設  計: 松島デザイン事務所
     (担当/松島良貴)
敷地面積: 518.07㎡(約157坪)
建築面積: 61.25㎡(約18.56坪)
延床面積: 107.19㎡(約32.48坪)
用途地域: 無指定
構  造: 鉄筋コンクリート造2階建て
完成時期: 2023年10月
施  工: 松島デザイン事務所
電  気: 有限会社 開成電設
水  道: 泉水設備 株式会社
型  枠: 松島デザイン事務所

独特の光沢・質感を放つ無垢のコンクリートに、均整の取れたキューブ状の美しいプロポーション。
眺望が開けた崖上に建つYさん宅は、夫婦と子ども2人が暮らす2階建てのRC造住宅です。

週刊かふう2024年2月16日号に掲載された内容です。

立ち姿だって誇らしい。東海岸の眺望を生かした コンクリートハウス

開けた眺望を求めて2階にリビングを配置

 力強くて凜々しくて、ほんのりと優しげで。背景の空を四角く縁取るようにして建つYさん宅の外観には、コンクリート打ち放しの飾らない装いの中にさまざまな表情が重層しています。
「仕事や出先から帰ってきてわが家を見るたび、誇らしい気分になりますね。誰に自慢するわけでもなく、こんなにカッコイイ家が自分の家だなんて、とついつい感じ入ってしまいます」と話すご主人。ファサードに縦2列に設置された窓のラインと、玄関脇にそびえるシャープな袖壁がアクセントになって、一段と豊かな顔つきに仕上がっています。

 新居が完成したのは昨年10月。家づくりを計画後、長らく土地難民の状態が続いていましたが、ちょうど建て替え予定のあった親類から声を掛けられ、敷地の一部を使わせてもらえることに。併せて建築家も紹介してもらい、「自分たちでは考えつかない説得力のあるプランを提案してくれた」ことで一気に信頼を深め、終わってみれば子どもたちがまだ小さいうちにマイホームを構えることができました。

 敷地全体では150坪強の広さがあり、東端の崖際付近からは東海岸を一望できます。もともと「海を眺めながら暮らしたい」との思いが強かったため、より開けた眺望を求めて、新居は可能な限り崖際に寄せて配置。構造も平屋ではなく2階建てにして、1階は寝室と子ども室を並べたプライベートフロア、2階を家族で過ごす生活フロアにしました。リビングからは海に向かって半屋外のテラスが突き出ており、室内外の緩やかな連続性が生まれて開放感を高めています。

立ち姿だって誇らしい。東海岸の眺望を生かした コンクリートハウス

日常のあらゆる場面で海が視界に飛び込んでくる

 2階LDKとテラスは同サイズ。テラスは半分以上のスペースが深い庇に覆われており、天候をほぼ気にすることなくいつでも自由に利用できます。オープンエアーの先端部分からは視界180度のパノラマが広がり、「リビング以上に家族で憩う場所になっているかもしれません」とご夫妻。お二人がハンモックで本を読んだり、景色を眺めてのんびりくつろぐ傍らでは、子どもたちがリビングとの間を行ったり来たり走り回ります。

 他にも奥さまが「日常のあらゆる場面で海が目に飛び込んでくる」と話すように、2階バスルームやトイレ、階段には東面に大きめの開口が取られています。いわば2階全体がオーシャンビュー仕様となっており、無意識に自然との一体感が芽生えます。

 使い勝手も申し分なし。水回りはキッチン背面にコンパクトにまとまり、家事や毎日の身の回りのことを効率よく行えます。テラス面と合わせてLDK西面の窓を開ければフロア全体に風が通り、空気がこもることもありません。また1階は現在、ほぼ寝るだけの場所になっていますが、寝室はテラスに次ぐ眺望スペースであり、可変式の子ども室は2室を一続きにして多目的ルームにしておくなど、空間の余白が心に余裕を与えてくれます。

「すべて期待以上につくってもらったので、毎日が楽しくて仕方ありません」と振り返るご主人。今後は「外構の整備にも力を入れ、外観がもっと映えるように、玄関回りに植栽を増やしたい」と意欲満々です。やがてうりずんの時期にでもなればファサード一面に緑が加わり、今まで以上にYさん家族を温かく出迎えてくれることでしょう。

写真ギャラリー

立ち姿だって誇らしい。東海岸の眺望を生かした コンクリートハウス

一定の規則をもってつくられた建築は
空間にリズムを生み出し、無意識に居心地を高める

ベストの眺望条件を求めて、場所・品質・施工の安全性を担保した家を建てる
景色の見え方・切り取り方を計算した、大人の心が安らぐ空間づくり

建築家:松島良貴さん

 崖上に建物を建てれば、視界を遮るものがないので見晴らしが良く、高所にあればあるほど開放感は高まります。もちろん安全面の担保は不可欠なので法律で厳しい規制がかけられており、Yさん宅の設計では両者の調整からスタートしました。

 計画地は車通りの多い大通りに面し、東側の崖先に向かって膨らみを増す旗竿(はたざお)のような形状をしています。Yさんが現在の土地を選んだのは「海の眺め」が最大の理由と伺っていたため、いわゆる「崖条例」の対象にならないギリギリのラインを最初に確認。その上で、最も良好な視界が得られるように建物の位置・向きを決定し、より開けた眺望を求めて、2階建ての2階リビングのプランを考案しました。
 また私たちの会社では、密実で水分量の少ないスランプ値8センチのコンクリートを標準で施工しています。強度面では土木構造物に匹敵するほどの耐久性があり、マイホームに関わる有形無形の財産を品質面・施工面でもしっかりと保全しています。

 1階をプライベートフロア、2階を生活フロアと切り分ける中で、リビングと主寝室からの眺望にはとりわけ留意しました。リビングにはテラスに面して大きく掃き出し窓を並べ、眼下の海と緑の景色を取り込むピクチャーウインドーとなるように開口を計画。真下にある主寝室も窓の向きは同じですが、2階に比べて周囲の施設や建物が目に入りやすいため、きれいな青空が視界の大半を占めることを計算して、天井付近に寄せて開口を配置しました。元気盛りの子どもたち以上に、仕事や育児で忙しい大人こそが癒やされてほしいと思い、施主さま本人の個室はできるだけ好条件の場所に置くように心がけています。

 建物の造形自体はシンプルな箱形をベースに、薄くて「面」を強調した袖壁を玄関脇に据えてアクセントを付けています。一方で、新居を構成する各要素は、一つ一つ緻密に計算してサイズ感を決めており、具体的には、Yさん宅では3・5メートルを基本単位にして、どの部屋を見ても全体を測っても、その整数倍あるいは整数分の1倍になるように設計しています。例えば1階各個室は3・5メートル四方で、LDKは3・5メートル×7メートル、バスルームは基本単位の2分の1倍です。このように全体と部分が相似形を成す「自己相似」のデザインは、空間にリズムを生み出し、無意識に安心感を高めると考えています。

設計・施工会社

中城村字南上原817 南上原ハイツ(B棟)

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