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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

空間の変化とつながりが家族の心地よい時間を生み出す家

空間の変化とつながりが家族の心地よい時間を生み出す家

DATA
設  計: 間+impression
     (担当/儀間徹・達紀)
敷地面積: 485.54㎡(約146.87坪)
建築面積: 173.69㎡(約52.54坪)
延床面積: 272.31㎡(約82.37坪)
用途地域: 第一種中高層・
     第一種住居専用地域
構  造: 鉄筋コンクリート造
完成時期: 2023年4月
施  工: 有限会社匠建
     (担当/安里成邦)
電  気: 喜友名電気
     (担当/喜友名盛久)
水  道: 株式会社石川設備工業
     (担当/石川隼人)
キッチン: 有限会社モブ
     (担当/照屋涼子)

Kさんの新居は1階を住居フロア、2階を賃貸部分に充てた賃貸併用住宅です。
両階ともに、収納スペースを活用したスキップ構造になっている点が大きな特徴。
デザインの選定にも力を注ぎ、場所ごとにこだわり抜いた多彩なアイテムが住まいの魅力を高めています。

週刊かふう2024年1月19日号に掲載された内容です。

空間の変化とつながりが家族の心地よい時間を生み出す家

「蔵」の上に子ども室空間を縦横に有効活用

 住宅・建築は3次元の立体物。収納スペースの取り方一つで、暮らしの幅は一気に広がります。今回の主人公であるKさん宅では、DKのすぐ横に、建築家が「蔵」と名付けた大収納空間が置かれています。蔵の内部は高さが1・4メートルに抑えられているため、真上に重ねた子ども室はちょうど中2階のような位置にあり、生活スペースと子ども室との間に絶妙な距離感が生まれています。

「せっかくの家づくりですから、間取りにも素材にもこだわりたかった。その点、依頼した設計事務所さんは、蔵を上手に活用した作品が豊富でプランの自由度も高く、私たちの思いや要望にとことん向き合ってくれました」と振り返るご夫妻。室内を見渡せば、ワンフロアでありながらも縦横の変化に富み、銅板を加工してできる緑青色銅板の壁材や琉球石灰岩など肝いりのインテリアが彩りを添えています。

 新居が完成したのは昨年4月。結婚後しばらくは東京で暮らしていましたが、「いずれ生まれ育った沖縄でマイホームを」と考えていたご主人の意向に合わせて現在の土地を用意し、4年ほど前から本格的に家づくりの計画をスタートしました。建築家と膝を突き合わせて協議を重ね、住まいのスタイルとしては、1階を住居フロア、2階を賃貸に充てた賃貸併用住宅にすることに決定しました。
 立面図を見ると分かるように、1階に置いた蔵は2階の空間形成にも密接に関わっています。具体的には、2階も1階同様に「蔵+スキップフロア」のあるプランを実現でき、他の賃貸物件と差別化を図る大きなポイントになっています。

空間の変化とつながりが家族の心地よい時間を生み出す家

場所の性格に応じてデザインを緻密に計画

「家族がいつも身近に感じられるように、空間のつながりを重視した家にしたい」というKさんの要望を形にした1階住居フロアは、ほぼ間仕切りのないワンルーム的な構成です。どこにいても視線がよく通り、LDKを基点にすべての居室・スペースへアクセスできます。それでも一見した限りでは、デザインや高さ、光の入り方などの多彩な組み合わせによって、それぞれの場所には独立性が感じられます。

 例えばLDKは東西に一続きになった直線的な空間ですが、頭上一面に木をあしらい落ち着いた印象にまとめたDKに対し、リビングは天井が一段高く、大開口を介してコート(光庭)に面しているため、より明るく開放的な雰囲気に仕上がっています。
 またリビングと和室は隣り合った位置にあるものの、和室の小上がり部分の段差によって心理的な距離感が生まれています。
 つながりを意識しつつ、主寝室とサニタリーをキッチン奥にまとめたのは、家事効率と合わせて「来客時でも気兼ねなくプライベートな時間を過ごせるように」と考慮してのこと。主寝室にはウオークインクローゼットが併設しており、キッチン・洗面との間をコンパクトに回遊できる動線がつくられています。

「密集地なので開口の取り方が難しかったのですが、閉そく感はなく明るさも問題ありません。イメージしていた以上の快適な暮らしが楽しめています」とご夫妻は目を細めます。新築に合わせて家具やインテリアをそろえるなど、完成度の高さが際立つ一方で、実は家づくりは未完成。「コートの植栽計画はまだこれから。デッキ前のスペースには近々ピアノを置く予定です」とのこと。自慢の空間に緑とピアノの音色が加われば、居心地はさらに高まりそうです。

写真ギャラリー

空間の変化とつながりが家族の心地よい時間を生み出す家

「蔵」収納と居室を縦方向に組み合わせ
1階住居、2階賃貸ともに特色ある間取りを実現

小屋裏や床下などの余剰空間を利用した、”蔵”のある家を多数設計
外部からの視線をコントロールしつつ、南北二面採光を確保


一級建築士:儀間 徹さん(右)、儀間達紀さん

 空間を有効活用するための設計手法として、私たちの事務所では「蔵」収納を積極的に取り入れています。建築基準法には、小屋裏収納・床下収納に関して「天井高1.4メートル以下、当該階の床面積の2分の1以下等の条件を満たせば階数に含まなくてよい」という規定があり、その範囲内で大きな収納空間を用意し、居室をそこに重ね合わせれば、収納力アップと同時に実寸以上の立体感・開放感などを高めることができます。

 今回のKさん宅では、蔵の上に子ども室を置いてスキップフロアとLDKとの床レベルに変化をつけて、つかず離れずのスキップフロア設計に。さらには計画途中で賃貸併用住宅に切り替わったため、1階LDKと子ども室との間の段差を2階の断面プランにそのまま生かし、2階の全住戸で蔵のある間取りを実現しました。建物全体で見れば、2階建ての構造体の中に1.5層のフロアを2つ無理なく収めることで建築コストの無駄を省き、LDKの真上に2階の蔵が来るように調整することで、上下階の防音対策に役立てています。

 1階の平面プランとしては、フロア全体のつながりを意識しつつ、公私のエリアを緩やかにゾーニング。集いの場であるリビングをはじめ、セカンドリビングやゲストルームにもなる和室は玄関側に配置し、キッチン、子ども室、主寝室、サニタリーなどプライベート色の濃いスペースは、玄関と対極の位置にまとめました。書斎は閉そく感が強すぎないようにダイニング側に寄せて置き、南側デッキに面して採光窓を設けることで、家族全員がいつでも気軽に使える雰囲気を整えています。

 賃貸併用住宅ですから2階入居者の出入りが頻繁にあり、敷地南面にはアパートがあるため、プライバシーを確保しながら十分な明るさを得られるように、開口の取り方には配慮しました。駐車場のある北側は、背の高い目隠し壁の内部に光庭を置くコートハウスの手法を採用し、とりわけリビングにはワイドタイプのガラス戸を4枚並べて、内外の緩やかなつながりを創出。一方で南面には、和室と書斎の間に半屋外のデッキスペースを設け、日差しや風雨、外部からの視線が直接室内まで届かないようにコントロールしています。

設計・施工会社

間+impression(まアンドインプレッション)

TEL:http://ma-impression.com/

TEL:http://ma-impression.com/

宜野湾市新城2-39-1 SVM A-6

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