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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

LDKとテラスに皆が集う 高低差を生かした 2階ワンフロアの家

LDKとテラスに皆が集う 高低差を生かした 2階ワンフロアの家

DATA
設  計: 建築設計事務所Mof
     (担当/島袋真喜子)
敷地面積: 446.00㎡(約134.91坪)
建築面積: 135.70㎡(約41.04坪)
延床面積: 173.95㎡(約52.61坪)
用途地域: 指定なし
構  造: 鉄筋コンクリート壁式構造
完成時期: 2024年5月
建  築: 有限会社 大和建設
     (担当/大城博哲)
電  気: 株式会社 巧電工
     (担当/波平巧)
水  道: フタバ設備工業 株式会社
     (担当/知念諭)

最大3メートルの敷地高低差に加え、隣地境界にそびえ立つ擁壁の高さは7メートル。
数々の難条件を設計の力で克服し、1階をガレージ、2階を生活フロアにした、平屋的に暮らせる家が完成しました。
LDKには広々としたデッキテラスが2方向に併設し、親類や友人の集まりに最適です。

 

週刊かふう2024年11月15日号に掲載された内容です。

LDKとテラスに皆が集う 高低差を生かした 2階ワンフロアの家

段差の激しい土地を上下2段に造成し、2階を生活フロアに

 2階LDKを取り巻くデッキテラスは開放感抜群。眼下にはのどかな自然が広がり、空気が澄んだ日は遠く水平線までくっきりと見通せます。
「ダイニング側はビニールプールを置けるだけの十分な広さがあります。今年の夏は大活躍でした」とご夫妻。水遊びに興じる子どもたちの姿を横目に、大人はリビングやダイニングでくつろぐ。室内外にいても顔を合わせて会話できる距離なので、安心してそれぞれの時間を楽しめます。

 LDKをはじめ生活フロアを2階に置いたのは、眺望や使い勝手を最初から求めたわけではなく、敷地の難題を解決する上で必然的なことでした。「マイホームを構えるなら親類のそばに」と奥さまの実家近くで手に入れた土地は、3メートル以上の高低差がある不整形地。前面道路から斜面状に盛り上がった土は優に背の高さを超え、奥側2方向の隣地境界には崖のような擁壁が切り立ち、「果たしてどんな家を建てられるのか、まったくイメージが湧きませんでした」。

 幸運だったのは、こうした難条件を手際よく調理してくれる建築士を紹介してもらえたこと。提案された解決策は、敷地を上下2段に造成し、道路に面してガレージをつくり、その上に敷地奥まで延びる住居スペースを配置するというプランでした。前面道路側の土をかき出して奥側へ移すだけなので残土が発生せず、躯体形状もシンプルな箱形にすれば、コストを最大限に圧縮できます。
「2階のワンフロアで平屋的に暮らせる。どこにいても家族の気配を感じられる家にしたいと考えていたので、要望通りです」。
 1、2階の通路は、門扉から玄関へ通じる外階段の他に、ガレージ内部とキッチンを結ぶ内階段を設置。雨の日もぬれずに車との間を行き来でき、買い物帰りなどの荷物の多い日は大助かりです。

LDKとテラスに皆が集う 高低差を生かした 2階ワンフロアの家

LDKを中心に家族や人が集う明るく爽快な住まい

 2階の平面形状はシンプルな長方形。奥行きのある敷地の向きに沿って南北に細長く、伝統的な民家形態に見られる風水の考え方を参考にしながら、中央の玄関を挟んで公私のエリアがゾーニングされています。

 皆が集うLDKは明るく眺望の開けた南側に位置し、隣り合う小上がりの畳間や可変式の子ども室を含めて一体的な空間を形成しています。冒頭で触れたデッキテラスとも大開口を介して連続しており、「親類・友人が大勢集まってワイワイ楽しめる環境が理想でした。
 これだけのボリュームがあれば、手狭さを感じることはまずありませんね」とご主人。奥さまも「キッチンに立つと、誰がどこにいても目が届く。思い描いていた通りの生活シーンです」と目を細めます。育ち盛りの子どもたちは、子ども室だけにとどまらず自由にのびのび駆け回り、新居を隅々まで満喫しています。

 玄関の北側に置かれたプライベートスペースは、廊下の両サイドに個室と水回りが並んでいます。また計画途中に4人目を授かったこともあり、「収納をできる限り確保したい」と主寝室の隣に家族共用のウオークインクローゼットを設けた他、玄関前に設置予定だった坪庭を納戸に変更しました。
「天井を全面的にトップライトにしてもらったので、明るさは問題なし。壁や床に自然光が反射して、上品で清潔感のある自慢の玄関になりました」。
 同じように廊下の天井にも採光窓が2カ所用意されており、家中がフレッシュな光で満たされています。

 新生活を始めて間もなく半年。「すべてが想像以上で快適な毎日です」とご夫妻は口をそろえますが、最大の目的だった親類の集まりはまだ実現していません。「人数が多すぎて日程調整が難航してしまって。暑さがようやく一段落したことだし、これからですね」。テラスを吹き抜ける風もカラッと心地よく、いよいよ新居の本領発揮といきそうです。

写真ギャラリー

LDKとテラスに皆が集う 高低差を生かした 2階ワンフロアの家

大家族が集う家をイメージして敷地条件から家の形を読み解く

施工性・コストバランスを考慮したシンプルな平面プランと、工夫を凝らした断面構成
施主のデザインセンスを全面に生かしつつ、経験値をプラスして、より居心地の良い空間に

一級建築士:島袋真紀子さん

 Aさん宅のプランを考える時、最初にして最大の難題は「敷地高低差をどう納めるか」の一点でした。計画地は傾斜があり、前面道路に対して最大3メートル以上高く、さらに北側にある2つの隣地との間には、同じく3メートル以上の高低差がありました。また地盤改良の必要があることも判明したため、施工性とコストバランスを加味した上で、シンプルな長方形の平面プランにすることを決定。一方では単調になりすぎないように、断面構成に変化を持たせるように工夫しました。

 具体的には、高低差を解消するための断面構成として、道路に面した1階部分はガレージに充てて、そこから一層分上がった2階の位置に実際の生活空間を構築。元々Aさんからは「家族の誰がどこにいても気配を感じられるようにしたい」とのご要望があったため、いわば2階のフロア全体を平屋のようにして計画しました。
 玄関を中心にして南北で公私のエリアを切り分け、北側をプライベートスペースに、南側、つまりはガレージの上にくる部分をパブリックスペースとし、明るくて眺望が開けた好条件を生かすべく、LDKの周囲にはぐるりとデッキテラスを配して大開口でつなぎ、内外に広がりのある空間づくりを目指しました(「家づくりのヒント」参照)。

 まだまだ小さなお子さんを含め、4人の子どもに囲まれたAさんご夫妻。LDKやテラスで過ごすだけではなく、リビングに隣接する小上がりの畳間で昼寝をしたり、キッチン横にオープンにつながった子ども室で宿題をしたり、今後さまざまなシーンがこの空間で展開されるでしょう。おのおのが違うことをしながらもそれぞれの居場所がつながっている、そんなライフスタイルが無理なくかなう間取り・プランをご提案しました。

 デザイン面ではご夫妻のセンスの良さを全面に生かし、所々に私なりの知見をプラスしました。例えば玄関から廊下には、一面にトップライトを設けて明るさを保つとともに、自然光を受けてテクスチャーが映えるように、壁には石目調のタイルを施工。またキッチンは、開放感を求めたリビングダイニングに対して天井高を50センチ抑え、木目のクロスを貼って間接照明を仕込みました。ご夫妻の趣向として、白を基調に黒やグレーを挿し色に使うケースが多かったので、ほどよくインパクトがあって落ち着きのあるインテリアに仕上げられたと思います。

設計・施工会社

西原町字翁長

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