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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

移動するたび空間の印象が変わる 屋根が居場所をつくる家

移動するたび空間の印象が変わる 屋根が居場所をつくる家

DATA
設  計: アトリエセグエ
     (担当/比嘉俊一)
敷地面積: 163.39㎡(約49.42坪)
建築面積: 169.74㎡(約51.34坪)
延床面積: 163.39㎡(約49.42坪)
用途地域: 未指定
構  造: 壁式鉄筋コンクリート造
完成時期: 2024年8月
建  築: 有限会社 大繁建設
     (担当/赤嶺博也)
電  気: 喜友名電気
     (担当/喜友名盛久)
水  道: 大嶺住設(担当/大嶺勝)
キッチン: MOV(担当/前花涼子)

週刊かふう2025年10月24日号に掲載された内容です。

リビング中央から四方に緩やかな勾配天井が架かる

 Tさん宅は建坪約50坪のRC造の平屋です。建物自体はシンプルな長方形で、家の中央には畳間一体型のLDKが広がっています。間仕切りのないワンルーム的な構成なのに、場所によって異なる趣が感じられるのは、リビング頭上を頂点にして四方に勾配天井が延びているから。移動するたび高さが変わり、窓の外に広がる景色と相まって、日常の中にさまざまなシーンが展開されています。

「アイデアを生かした自由なプランニングをできることが、設計事務所を選んだ大きな理由の一つ。勾配天井はわが家の建築的な特徴でもあるので、リビング横にある個室も天井懐を取り払ってオープンにして、屋根の形状を楽しめるようにしました」とご夫妻は振り返ります。

移動するたび空間の印象が変わる 屋根が居場所をつくる家

 リビングの最頂部の高さは約3.7メートル。「できるだけ広々と使いたいから」とソファも何も置いてないため開放感が際立ち、「子どもたちがボール遊びをしたり走り回ったり、自由にのびのびと遊んでいます」。リビング併設のテラスは約2.7メートルの幅があり、頭上には庇が延びているため夏シーズンはプール遊びに最適です。またテラスの真下の駐車場は、花火やバーベキューをするのに絶好のスペースです。

移動するたび空間の印象が変わる 屋根が居場所をつくる家

周辺環境に合わせて窓を設置し三方向それぞれの景色を楽しむ

 リビングと畳間に連なる北面の壁はガラス張りで、長さは圧巻の9メートル。「壁で覆う発想はなく、FIX窓一択でした」というお二人の思惑通り、全体がピクチャーウインドーとして機能しており、周辺ののどかな自然環境が手に取るように感じられます。
 一方でキッチン背面の窓は、光量の多い南面からの採光を促すとともに、椅子に座ると青空へ視線が抜けていくように設計されています。また玄関の窓からは緑地越しに丘陵地帯の町並みを望み、三方向それぞれに異なる景色が楽しめます。

 インテリアは「シンプルかっこいい」方向に沿って色合いをセレクトしていきました。奥さまが選んだライトグレーのキッチンを基準にして、周囲の造作をコーディネート。キッチンと横並びにある洗面やバスルームなども同系色で整え、動線の機能性とデザイン性を同時に実現しました。

 住み始めて1年以上たった今でも新築時同様の清潔感が保たれているのは、「物をあまり表に出さす、生活感を抑えた暮らしがしたい」という当初の意向が実行できている証し。それでも休みの日には人が集まる機会が多く、親類や子どもたちの友人が泊まりに来ることもしばしば。臨機応変に空間をフル活用し、にぎやかさを許容しながら、日々丁寧な暮らしを営んでいます。

写真ギャラリー

移動するたび空間の印象が変わる 屋根が居場所をつくる家

内部空間を屋根でデザインする

代表取締役/一級建築士 比嘉俊一さん

 屋根の傾斜をそのまま内部空間に生かし、周辺環境に合わせて窓の取り方を決定する。この2つの操作によって、大きい・小さい、高い・低いなど、連続した空間内にさまざまな特徴を持つ場をつくりだし、最大限の心地よさを実現しました。

 例えば畳間一体型のLDKでは、四方に傾斜が広がる屋根の中心部分にリビングを置き、吹き抜けのような開放感を演出。一方でキッチンや畳間は軒先に近い壁際に配置することで天井高を抑え、落ち着いた印象に仕上げています。また天井が4方向の勾配面で構成されているため光の差し込み方によって陰影が生まれ、時間や天気の移ろいとともに室内全体の雰囲気も変わっていきます。

 窓のサイズや位置関係は、内と外のつながりを意識しながら計画しました。最も眺望が良く視界が開けた敷地北側をメインの採光部と定め、目の前に広がる斜面緑地を室内に取り込むために、リビングと畳間に連なるワイドスパンの窓を設置。北向きの窓は直射日光の影響がないので安定した明るさを得られ、とりわけ日差しの強い沖縄では十分な光量を確保できます。他の三方の窓は視線の抜け感やプライバシーを考慮しながら調整し、室内のどこにいても周囲の景色を楽しめるように設計しています。

設計・施工会社

浦添市西原4-33-1

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