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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

傾斜地に沿って3層のエリアが連なる 凜としたたたずまいのピラミッド形の家

傾斜地に沿って3層のエリアが連なる 凜としたたたずまいのピラミッド形の家

DATA
設  計: IGArchitects
     (担当/五十嵐理人)
敷地面積: 209.34㎡(約63坪)
建築面積: 91.31㎡(約27坪)
延床面積: 83.52㎡(約25坪)
用途地域: 第一種住居地域
構  造: 鉄筋コンクリート造
完成時期: 2024年11月
施  工: FUN SHARE株式会社
     (担当/下地恭光)
電  気: (有)新栄電機
     (担当/伊良部泰隆)
水  道: (有)ライフ工業
     (担当/我喜屋奨)
型  枠: 直工業(担当/上地直樹)
鉄  筋: 仲翔鉄筋工業
     (担当/仲間三定)

 

週刊かふう2026年3月13日号に掲載された内容です。

「面白い家ができそうだ」デザインが家づくりの決め手

 デザインには力がある。見た人の心を動かし、意思決定に影響を与え、行動や時に人生まで大きく変化させることがあります。

 那覇市の住宅街に建つHさん宅は、ピラミッドに似た四角錐のフォルムが印象的な、夫婦2人が暮らす平屋のRC造住宅です。室内には敷地の傾斜に沿って3層のエリアが連なり、ボリュームの大きなホール空間を創出。中央に寄り集まるようにして立つコンクリートの壁が力強さをたたえ、トップライトから差し込む光を反射して、明るく厳かな雰囲気をつくり出しています。

「敷地高低差を生かした家をつくりたいという要望に対し、返ってきた答えが今の新居のデザインでした。最初にプランを見ただけでは、一体どんな建築ができあがるのか、どんな生活を送れるのかまるで想像できませんでしたが、それ以上に”何だか面白い家ができそうだ”という期待感が大きかったですね」と振り返るご夫妻。強いこだわりもイメージもなく、一方では「時間がかかっても納得のいくものを」というスタンスで家づくりに臨んでいたお2人にとって、建築家の熱意ある提案が琴線に触れました。

 躯体は外装・内装ともにコンクリートの打ち放しで仕上げ、収納や建具、寝室スペースは木で造作。用途に応じて改装しやすく、ほのかな温かみも感じられる内部空間になっています。

傾斜地に沿って3層のエリアが連なる 凜としたたたずまいのピラミッド形の家

建築作品としても高評価。沖縄の空間デザイン賞を受賞

 居室は3段構成。最上段にキッチンやバスルームなどの水回り、中段にリビングダイニングと書斎、そして最下段の庭に面した位置にフリースペースと寝室が置かれています。
「見た目は斬新でインパクトのある建物ですが、プラン自体はご覧の通りシンプルです。空間全体はつながっていても、段差によってエリア分けされているから、自然と生活リズムが生まれて想像以上に使いやすいですよ」とご夫妻。
 また「いつか持ち主が変わったり、その用途を終えたりしても、長く愛され、使われるような建築を目指したい」という設計趣旨に賛同した側面もあり、自宅でありながら客観的な視線を持って”建築作品を住みこなす”という醍醐味も楽しんでいます。友人知人もその作品価値を本能的に察知してか、「新居ができてから、わが家に人が集まる機会が増えました」と奥さま。玄関を開けた瞬間、日常と一線を画した非日常的な空間が皆を出迎えます。

 専門家からの評価も高く、昨年には「JCD沖縄 空間デザイン賞」の大賞に選ばれました。Hさんは自宅が受賞作になったことについて、「私たち自身は案外冷静に受け止めていたのですが、周囲の人たちが口々に”よかったね、すごい家なんだね”と言ってくれる。それがとてもうれしいですね」と笑顔。建物が放つ圧倒的な存在感と、お2人の飾らない暮らしぶりが呼応して、住まいの魅力をますます高めているようです。

写真ギャラリー

傾斜地に沿って3層のエリアが連なる 凜としたたたずまいのピラミッド形の家

構造的な安定性を求めて四角錐の空間を構築

一級建築士 五十嵐理人さん

 沖縄では2022年の「一本足の家」に続く2件目の住宅作品です。開放的なロケーションを生かした前作とは異なり、今回の敷地は谷底のような密集地にあって、集合住宅や墓地が隣接。そのため周囲と一定の距離を置きながら、環境に埋没しない凛としたたたずまいと、明るく厳かな内部空間を併せ持つ住まいを目指しました。

 ピラミッドや古墳、見方によっては沖縄の伝統的なお墓のようにも取れる四角錐のフォルムは、沖縄の気候風土や周辺環境、コストなど、さまざまな要素・制約から導かれたものです。傾斜地における安定した構造を求め、土留めを基礎として利用して、その上にコンクリートでできた四角錐の空間を構築。外部の影響を抑えるために開口部を絞り、メインの採光部をトップライトに定め、降り注ぐ光が一帯を支配する遺跡のような威厳性を実現しました。

 今回の設計理念を形にできたのは、施工者の技術力はもちろんのこと、Hさんご夫妻のご理解と適応力があってこそ。時を経ても建築そのものが持つ空間の質が失われず、長く愛され続ける存在であってほしいと願っています。


URL: https://igarchitects.jp/

Instagram: https://www.instagram.com/igaarchitects/

傾斜地に沿って3層のエリアが連なる 凜としたたたずまいのピラミッド形の家

<家づくりのヒント>
垂直方向に視線を延ばし気積の大きな空間をつくる

 広さや開放感、心地よさといった感覚は、床面積だけで決まるものではありません。天井の高さや屋根の形状、視線の抜け感などを工夫して気積(空間の容積)を大きく確保することで、居住性の高い豊かな空間を実現できます。今回のHさん宅の天井高は最大6m弱。敷地北側の玄関から南面の庭まで一直線に視線が通り、床面積約25坪の家とは思えない迫力に仕上がっています。

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