光と風、記憶を招く 縦横に凹凸のある家
- DATA
- 所在地:うるま市
- 家族構成:夫婦
- 設計:有限会社門(じょう)一級建築士事務所
(担当/金城豊、崎浜剛) - 敷地面積:366.42㎡(約100.84坪)
- 建築面積:151.27㎡(約45.76坪)
- 延床面積:118.87㎡(約35.96坪)
- 用途地域:第一種低層住居専用地域
- 構造:壁式鉄筋コンクリート造平屋建て
- 完成時期:2019年1月
- 建築:有限会社クリエイト技研
- 施工・建築:有限会社糸洲電気工事社
- 水道:有限会社山商
- ガス:有限会社クリーンガス
- サッシ:株式会社共和アルミ
歴史あるエリアに位置する車通りの少ない住宅街に、今年1月に念願のマイホームを新築したOさんご夫妻。敷地の特性やお2人の思いをもとに建築士から提案されたのは、3層のボックスを組み合わせて外観に凹凸を付けた平屋のプラン。地域とのゆるやかな関係を保てるように、庭や植栽のレイアウトも詳細に計画しました。
玄関と中庭を挟んで公私をゾーニング
凹凸には意味がある。Oさん宅のファサードを見ると、高さも横幅もボリュームの異なる白いボックスが3列に並び、リズミカルな表情をたたえています。さらにはボックス同士のつなぎ目がキュッとくびれていたり、ポコッと出っ張っていたり、平面的にも凹凸が連続。単純な四角形ではなく、こうした独特の形態になっているのは、室内への光の入り方や風の流れを計算して設計されているから。凸部にある窓は採光・換気に絶大な効果を発揮し、凹んだ壁は効率的に風を呼び込みます。
「凹凸のアイデアに限らず、プランの方向性は建築士さんにほぼお任せでした」とご夫妻は口をそろえます。家づくりの計画当初は「個別の要望は幾つもあれど、具体的にまとまった形で新居のイメージを描けない」ことにもどかしさを感じていましたが、建築士と出会った途端に一気に解決。「ぼんやりとした意見を伝えるだけで、的確な答えを返してくれる。もう完全に信頼しきっていました」。それぞれのボックスの内部には、デザイン面でも動線面でも「これこれ、こんな感じ!」とお2人が求めていた理想の空間が広がっています。
Oさんにとってマイホームの新築は、長年の念願でした。結婚直後から持ち家志向は強かったものの、仕事の関係でアパートを転々とする生活が続き、「そろそろ根城を構えたい」と3年前に土地探しに着手。現在の土地は親類の家近くの空き地を物色していた際、「もし興味があるのなら」と偶然にも地主から声を掛けられ購入し、今度はその近所に住む別の親類から「もしどこに頼むか迷っているのなら」と建築士を紹介され、提案されたファーストプランを見て即断しました。
敷地は南東角地にあり、東側道路面は広い芝庭になっています。この庭と通りを眺めるように、LDKと和室を収めたボックスが置かれ、以下西側に向かって、水回りと収納、主寝室と個室の各ボックスが連続。このうちLDKと他の2つのボックスは玄関・中庭を挟んで分節されており、公私のスペースがうまくゾーニングされています。
庭木の成長とともに町の風景になじむ
お2人が抱いていた「個別の要望」は、建築士を介して次のような形で実現しました。
例えば奥さまが強く欲したのは、「LDKを開放感いっぱいの空間にすること」。より遠くまで目が届くように、庭に面して全長7mの大開口を設け、より高く広く感じられるように、天井高は3.5mまで拡張しました。またリビングとフラットに連続した和室は、「LDKの開放感を損ねず、並べても違和感がないように」との希望をかなえたもの。将来仏壇を置く予定の棚も、床から浮いたフロートタイプにしてモダンな雰囲気に仕上げました。
各個室に収納はつくらず、独立したウオークインクローゼットを設けたのも、奥さまのリクエストです。主寝室からも洗面室からも行き来できる場所にあり、さらには廊下との間をぐるぐると回遊できます。朝と夜の一連の動作に一切の無駄が生じません。
一方でご主人の大きなこだわりは、「水槽のある暮らしを楽しむこと」。今はまだ構想段階ですが、設置予定場所への水栓や床の補強は仕込み済み。ダイニングの隣に幅1.5mの巨大水槽を置き、真ん中のボックスの南側、つまり玄関から個室へ向かう廊下左手にある空間は、水槽室にする計画です。
「こんな立派な家が私たちのものになるなんて」と今年1月の引き渡し直後に感じたソワソワ感も抜け、念願のマイホーム生活を満喫中のご夫妻。やがて来る夏に向けてやってみたいことの一つは、屋上の徹底活用。「海がすぐ近くの場所なんです。LDKをせっかくこれだけ大きくしたのだから、海の眺望を楽しめて、ちょっとした夕涼みなどができるように、屋上全体を使えるように設計してもらいました」。
東側道路との境界に植えた庭木の成長も、これからの楽しみの一つです。「成木するまで約5年。その頃にはちょうどいい目隠しにもなりますね」。暮らしの中に緑の潤いが増し、町の風景にも一層なじんでいくことでしょう。