進化した雨端が内外をつなぐ 光と風に包まれた住まい
- DATA
- 所在地:宜野湾市
- 家族構成:夫婦、子ども3人
- 設計:株式会社デザインネットワーク
(担当/島田潤) - 敷地面積:532.48㎡(約161.08坪)
- 建築面積:221.93㎡(約67.13坪)
- 延床面積:263.36㎡(約79.67坪)
- 用途地域:第一種低層住居専用地域
- 構造:鉄筋コンクリート造2階建て
- 完成時期:2019年3月
- 建築:株式会社比嘉組(担当/目取真義憲)
- 電気:株式会社日本電設(担当/喜久本靖司)
- 水道:株式会社共立技研(担当/源河武司)
- キッチン:Mieleおきなわ(担当/小暮正樹)
住宅密集地とは思えないほど、爽快感と開放感に満ちたFさん宅。敷地西面に広がる眺望を生かすために、沖縄の住宅で古来踏襲されてきた雨端空間のエッセンスを取り入れて、快適な居住性を実現。
内装には床・壁・天井に木をふんだんにあしらい、上質な空間に仕上げました。
木に包まれたような室内から敷地西側に広がる景色を望む
住まいは正直です。パリッと仕立てのいい服は一見して上質さが分かるように、その場その空間のクオリティーも訪れた瞬間に察知できます。Fさん宅の場合、居心地のよさを構成している最大のポイントは、LDKを中心とした生活スペースの開放感でしょう。リビングの窓を開け放ったときの内と外の一体感、全面ガラス張りの吹き抜けから青空へと抜けていく視線の広がり、家全体が木で包まれたような安心感。こうした一つ一つの要素が折り重なって、住まいとしての豊かさを幾重にも高めています。
「購入した土地があるのは、眼下に西海岸一帯を見渡せる場所。適切な西日対策を施しつつ、眺望を最大限に生かしたプランにすることは、最初から建築士さんと意見が一致していました。オープンな雰囲気をより高めるために、 リビングには全開放できる折り戸を導入したほうがいい と提案されたときは台風時の懸念が頭をよぎりましたが、信じて大正解でしたね」とご主人。リビングの大開口と連続したデッキテラスは、コンクリートの深い庇と日射遮へい用の袖壁で覆われた「雨端の進化版」ともいえる半屋外スペースになっており、実用面でも視覚面でも内と外を緩やかにつなぐ役割を果たしています。
敷地には十分な余裕があるため、当初は平屋を想定していましたが、「開放感が一段と高まり、多目的に使える場所が増えるから」と2階建てに。また内装に「木をふんだんに使いたい」というFさんの要望に対し、床や建具だけではなく壁・天井を板張りにしたのも建築士からのアドバイス。「野暮ったくならずに、品よく仕上げてもらえました」。
依頼した建築士は、ご主人が物心ついたときから親類のように慕ってきた旧知の間柄でした。当然これまでの作品もつぶさに観察しており、「家づくりをする時期になったらお願いするのは、私にとっては当たり前のことでした」。
家の随所に「余白」をプラス
庭を整備して屋外環境がさらに充実
Fさん宅の快適さを支えているのは、空間の広さや明るさだけではありません。実際に住み始めて感じるのは、「随所にバッファ的なスペースがあることで、生活全体にゆとりが生まれています」。例えばテレビ台脇のコーナー部分に設けた書棚や、リビングから水回りへ向かう廊下途中にある作業台は、「あえてそこにしつらえたものではなく、家の形状や動線に添うように造作してあるので、空間的にも無理がありません」。その意味では、現在はほとんど子どもたちの遊び場と化した吹き抜けに面した2階も、リビングと芝庭の中間にあり、深い庇に覆われた半屋外のデッキテラスも、住み心地を高めるための余白といえます。
プライベートな空間はすべてキッチンの東側にまとまり、LDKと完全に分離されたエリア内で身の回りのことは完結できます。主寝室にはウオークインクローゼットが、バスルームには坪庭(ライトコート)がそれぞれ併設し、数字以上にサイズはゆったり。洗面脱衣室には室内干し用のスペースが取られ、いつでも広々と使用できます。
設計面・デザイン面を含めて最後まで迷ったのはキッチンでした。使い勝手やLDとの位置関係を熟慮した結果、現在のL形に落着。背面には食器棚の他に独立したパントリーがあり、こちらにも余白をプラス。正面を向けばリビングの大開口とテラス越しに、開放感あふれる景色が広がります。
「家を建ててから芝刈りが趣味になりました。暇さえあれば表に出て庭の手入れをしています」とご主人。いざ芝刈りを始めると、後ろには子どもたちが付いて回り、「こうやって自然に触れながらのびのび子育てできるのは、とても贅沢なことですね」。最近はハイビスカスの生け垣づくりを進めており、緑の芝庭と青空が織りなす住空間に、やがて鮮やかな色彩が加わることでしょう。