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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

リゾートの風をまとった 打ち放しの分棟型住宅

リゾートの風をまとった 打ち放しの分棟型住宅

DATA
所在地:沖縄市
家族構成:夫婦、子ども4人
設計:株式会社一級建築士事務所 STUDIO MONAKA(担当/仲本兼一郎)
敷地面積:565.20㎡(約171.27坪)
建築面積:135.01㎡(約40.91坪)
延床面積:113.65㎡(約34.44坪)
用途地域:第一種低層住居専用地域
構造:鉄筋コンクリート造平屋建て
完成時期:2019年11月
建築:大成プラン
家具:enno(大橋力)
造園:HARVEST HIGH!(岩村浩生)

住宅街のぽっかりと開けた窪地に建つ平良さん宅は、切り離された2つの建物からなる分棟型の住宅です。一つは中庭を擁する 「コ」の字形の居室棟で、もう一つは水回り棟。まるでコテージタイプのリゾートホテルのような空間で、安らぎに満ちた生活が営まれています。

週刊かふう2020年6月26日号に掲載された内容です。

リゾートの風をまとった 打ち放しの分棟型住宅

独立した母屋と離れが並んだような開放的なレイアウト

「イメージは南国リゾート。日常の暮らしの中にも非日常性を感じられる家にしたい」。
 ご夫妻が思い描いていた理想の新居像を、表面的な意匠の操作だけではなく、何よりもまず「プラン」で表しているのが平良さん宅の大きな特徴です。
 建物は居住棟と水回り棟からなる分棟型。このうち居住棟は主寝室・LDK・子ども室が「コ」の字形にレイアウトされ、どこからでも望める中庭が共有の外部空間として、プライベート感と開放感を高めています。また居室はすべて一つの屋根で結ばれていますが、子ども室だけは別棟的な存在になっており、行き来するたびに靴を履き替えるという動作がよそ行き感にもつながっています。
「設計を始めてから完成まで足かけ4年の家づくり。敷地内に母屋と離れが並んだコテージタイプのホテルのようで、とても気に入っています」とご主人。依頼した建築士は沖縄出身ですが、当時は京都だけを拠点に活動しており、今回が県内初プロジェクト。「多くの人に認められるいい仕事がしたい」という心意気と、家づくりに対する平良さんの情熱が呼応し、現在のプランへと昇華していきました。
 打ち放しのコンクリートをベースに木をあしらったインテリアは、品格のある高級リゾートのたたずまい。「建築中に子どもが一人増えて6人家族になりましたが、どこにいても気配が感じられるから安心」と奥さまが話すように室内は視界が広く、キッチンで作業しながらでも家中を見通せます。
 平良さん宅の床面積は約34坪。ワンルーム的に連続したLDKには先ほど見た中庭が隣接する他、リビング南面には緑の芝庭が広がっています。

リゾートの風をまとった 打ち放しの分棟型住宅

伝統的な雨端空間と光が織りなす非日常的なLDK

 ここからは視点を2Dから3Dへと変換して、立面的な特徴を見ていきましょう。平良さん宅は周囲に住宅が建つ窪地にあり、しかも敷地内には高低差があるため、設計上のさまざまな工夫が伺えます。
 例えば居住棟の屋根は中庭に向かって三方から庇を延ばすように、緩やかな傾斜がついています。晴れた日にはダイニングや主寝室前の軒下に濃い影ができ、涼やかな風が吹き抜けるその様子は、伝統的な沖縄民家の雨端空間そのもの。子どもたちは居心地のよさを察知するかのように、雨端伝いに中庭を駆け回り、「絶好の遊び場になっていますよ」と見守るご夫妻にとっても、心休まる居心地のいいスペースになっています。
 傾斜屋根の中庭とは反対の位置、つまり屋根が最も高くなっている南北両サイドの壁面には、天井付近にハイサイドライトが設置されています。開放感が高まる上に採光性も増し、特にボリュームの大きなリビングでは「窓から差し込む光のラインが時間帯によってくっきりと現れる。コンクリート打ち放しの壁面が明るく照らされて、雰囲気がありますね」とご主人。
 敷地の高低差は居室棟と水回り棟の分節に利用されています。両棟は細長い通路庭によって隔てられ、ダイニング脇の階段を上がってバスルームへ。子ども室同様にちょっとした離れのような空間になっていますが、それ以上に独立性が高いのが、水回り棟の一角にあるご主人の趣味室です。いったん外に出て、ガレージから回り込んでしか行くことができず、「同じ趣味の仲間が集まる機会も多く、このほうが家族も仲間も気兼ねなく過ごせるので」。平良さんにとって新居はどんなシーンでもくつろぎを深め、大げさに言うなら人生を深める場になっています。

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