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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

住みよさと楽しさで笑顔を咲かせる 木ごこちのいい二世帯住宅

住みよさと楽しさで笑顔を咲かせる  木ごこちのいい二世帯住宅

DATA
設計:株式会社 ARCHISS アーキス(担当/末吉正志)
敷地面積:205.15㎡ (約62.05坪)
建築面積:92.04㎡(約27.84坪)
延床面積:149.51㎡(約45.22坪)
構造:木造2階建て
用途地域:第一種低層住居専用地域
施工:株式会社 ARCHISS(担当/末吉正志)
電気:有限会社 仲吉電設(担当/仲吉直光)
水道:有限会社 仲吉電設(担当/富永)
キッチン:親世帯 タカラスタンダード(担当/真栄里)
子世帯 EIDAI×SEDIA(担当/横山×寿)

木造の温もりと涼しさに包まれたTさんの家は、考え抜かれた家事動線も大きな魅力。完成から約1年、遊びや触れ合いを大切にしたプランも本領を発揮し、家族みんなの幸せを育んでいます。

※週刊かふう2021年10月22号に掲載された内容です。

住みよさと楽しさで笑顔を咲かせる  木ごこちのいい二世帯住宅

ご夫妻で出し合ったプランのいいとこ取り

 住宅街の一角に建ち、片流れの大きな勾配屋根がひときわ目を引くモダンな外観の木造住宅。玄関を開けるとTさんのお子さん2人が駆けつけ「お母さん、おばあちゃん、お客さんが来たよー」と元気に歓待。早くも二世帯のつながりの温かみを感じます。
 1階は奥さまのご両親が暮らす親世帯。2階はTさんを世帯主とする子世帯。ご両親が住んでいた築約40年の実家を建て替えた新居で、構造もRC造から木造へ大きく変容しました。
 家づくりのスタートはどちらも建築関係のお仕事をされているというTさんご夫婦がそれぞれにプランを考案。「どっちの案が採用されるかまるでコンペのようだったよね」と、ご夫婦は顔見合わせて笑います。結果はご主人の方に軍配が上がるも、さらに検討を重ねて約半年。「収納や水回りの配置などは妻の案が生かされていますし、内装も妻に一任しました」。こうして完成した家は「本当に住みやすいですし、毎日が楽しいですよ」とお母さまも大満足。また「前の家はコンクリートで暑くて。今は木の肌触りも気持ちいいですし、この家は空気もサラッとしていてとても涼しいんですよ」と、木心地の良さを話してくれました。

住みよさと楽しさで笑顔を咲かせる  木ごこちのいい二世帯住宅

遊びのゆとりと考え抜かれた動線が両立

 二世帯それぞれに特徴のあるTさん宅ですが、花形となるのは子ども室のボルタリングウォールと秘密基地のような小屋裏です。小屋裏はご主人のこだわりであった勾配屋根の空間を生かしたもので、ボルタリングの頂上と連結。しかも降りて来る時は小屋裏用の階段からという、回遊性のあるアスレチック遊具のような楽しい仕掛けになっています。ボルタリングの設置は「遊びのある家」をテーマにしていたご夫婦そろってのアイデア。小屋裏は現在、収納スペースとして二世帯で活用していますが「いずれは僕の書斎に」とご主人が夢を明かします。そして、このような“回遊性”こそが、Tさん宅の住みよさを高める底力となっていました。
 親世帯では、玄関ホール・水回り・リビングをぐるりと回る動線でつなぎ、家事動線の効率化や自由に往来できる軽やかさを実現。さらに間取りも熟考されており、キッチンや寝室といったプライベートなエリアと生活感を抑えたいリビングのあるパブリックなエリアをさりげなく分離させています。
 子世帯はリビングを中心に、子ども室、バルコニー、水回りが緩やかにつながり、さらに水回りを1カ所に集結させることで、キッチンに立ちながらも洗濯、物干し、取り入れの一連が流れるような心地いいリズムで完結。住まい全体の動線もまるで一筆書きのようにするするとつながり、無駄がない、とどまらない、ストレスレスな間取りであることが分かります。
 また、二世帯に共通する“動きやすさ”に、バリアフリーの円滑性と木の優しい感触が加わり、足元からも快適さを実感。家づくりのプロであるご夫婦の手腕が、体感を通して伝わってきます。

住みよさと楽しさで笑顔を咲かせる  木ごこちのいい二世帯住宅

一緒に暮らす喜びを 食を通してより豊かに

 新居の完成と同時にお母さまの夢もかないました。「孫と一緒に土いじりを通して食育につなげたい」という思いを受けたご主人は「小さくてもいいから、菜園は絶対に作ろうと決めていたんです」。奥さまも「母と娘たちが一緒に野菜を育て、この夏はゴーヤー、キュウリ、オクラを収穫したんですよ」と嬉しそうに続けます。
 夕食はいつも1階のダイニングで6人そろってにぎやかに。その食卓に菜園の収穫物が彩りを添え、会話も笑顔も豊かに広がります。
 Tさんたちが食を大切にしていることは、お母さまのもう一つの希望をかなえたことにも垣間見られます。それは1階のキッチンに設けた食品パントリーと、冷蔵庫とは別にあらかじめ設置場所を確保したという冷凍庫の存在。十分な備えは高齢のお母さまには強い味方、料理をするにもゆとりをもって楽しめます。さらに「調理中の暑さを解消してあげたいと思って」と、オール電化によるIHクッキングヒーターを採用。食のシーンと時を通して家族の絆が温められています。
 ご夫婦がプランを競い合うという、ユニークな“家庭内コンペ”から生まれた住まいは初めから、お二人の家族を思う気持ちが礎(いしずえ)。木のようにしっかりとこの地に根づき、これからもたくさんの笑顔を咲かせることでしょう。

写真ギャラリー

設計・施工会社

浦添市大平2-4-21

住みよさと楽しさで笑顔を咲かせる  木ごこちのいい二世帯住宅

こだわりの工法で、 耐久性・快適性に優れた木造住宅に。 将来を視野に入れたアイデアは 家づくりの参考にも。

株式会社ARCHISS 代表 : 末吉正志さん

 今回、Tさんご夫婦が決断された建て替えには、その土地に根ざし、住まいを通してさまざまなものを継承して行くという大切な思いがあったと思います。
 弊社では沖縄に合った木造住宅の設計・施工を強みにしていることからも、Tさんの思いに寄り添える、末長く丈夫で健やかな家を実現できたと自負しています。
 私どもの木造住宅は、地震や台風によって生じる横揺れやねじれに強い「剛床(ごうゆか)」工法を採用しており、さらに壁面には構造用耐力面材を使用し、外部から加わる力を建物全体に分散して建物の負担を軽減させます。これにより、昨今の猛烈な強さの台風にも耐えられる強さを実現しています。
 また、沖縄の木造住宅でもっとも懸念される白アリ対策においては、侵入を防ぐべた基礎をしっかり行うとともに、床下通風を確保し、そのうえで被害がないか容易に点検できる点検口の設置を標準仕様としてご提案しています。  建物内部の環境づくりに関しては、暑さ対策として天井と壁に遮熱シートを採用。日差しが強い沖縄では断熱よりも熱を入れない遮熱がより効果を発揮します。その働きに加え、Tさん宅ではご主人の提案により、通風プランを練っているのも特徴の一つです。二世帯ともに居室の対角に窓を設け複数の窓を配置し、風の流れをつくり、湿気がこもらない気持ち良い住環境を実現させています。だから床もサラッとして気持ちいい。木造ならではのすがすがしさが際立っていますよね。
 空間設計においては、ともに建築に携わるTさんご夫婦のプランらしく、家事動線のみならず、家具や電化製品の収まり具合まで考慮された秀逸なものでしたので、プランを最大限に生かした設計をご提案しました。そのなかで特に「これはいい!」と膝と打つようなアイデアが洗面室の使い方です。まず十分な広さを確保し、お子さんが成長して身支度にも気を使うようになったときに、奥さまも含めて「3人でパウダールーム的に使えるようにしたい」と構想。限りある空間をより有効に使う面においても感心しました。また、ご両親の寝室の天井には吸音材を施し、2階の生活音で睡眠を妨げないような配慮をされています。二世帯住宅をお考えの方には覚えておいていただきたい施工です。


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