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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

こんな家に住みたい

あらゆるものが気持ちよくつながるシームレスな家

あらゆるものが気持ちよくつながるシームレスな家

DATA
設計:株式会社 Atelier kuu Design (アトリエ クウ デザイン)   
(担当/一級建築士・代表 羽生幸美)
敷地面積:471.03㎡
建築面積:154.54㎡(約46.7坪)
延床面積:156.86㎡(約47.45坪)
構造:木造2階建て
用途地域:第一種低層住居専用地域
建築:株式会社 安永建築
内部棚工事:Asaもくや~
キッチン家具工事:株式会社 KIN木
ガゲナウ食洗機代理店:株式会社 IMI CORPORATION

昨年7月に完成したOさん宅は、家の内外だけでなく住まい全体がシームレス(継ぎ目なく)つながる回遊性に富んだ住まい。自然と家族の絆も深まります。

※週刊かふう2021年10月15号に掲載された内容です。

あらゆるものが気持ちよくつながるシームレスな家

人のつながりから始まった家づくり

 今から10年前、東京から読谷村に移住してきたOさん一家は、ご主人が経営する飲食店の2店舗目の開店を機に、「そろそろ落ち着いてきたことだし」と、マイホームの建築計画を始動。理想の土地を求めて、不動産会社だけでなくお店の常連さんにも声をかけ、探すこと約3年。「紹介してくださった方が『真っ先にOさんの顔が浮かんだ』と、自分のように喜んでつないでくれたんです」と奥さまが当時を振り返ります。土地は丘の上の閑静な住宅街、約142坪。分筆も可能な広さです。
「でも、実家がマンションだったので、土の上に住みたいという感覚があり、どうせなら広い庭を作ろうと思い切って購入しました」
 設計は土地探しの段階から熱烈なラブコールを送っていたアトリエ クウ デザインの代表・羽生幸美さんに依頼。「行きつけのカフェがすごく居心地が良くて、自分の家もここを手掛けた方にお願いしたい、いや、絶対にお願いする! と決めていたんです。それがなんと、羽生さんはうちのお店のお客さんだったんです」と、声を弾ませる奥さま。
 偶然とはいえ、移住当時は読谷村がどこにあるかも知らなかったというOさん夫婦が、理想とする土地と建築家に出会えたのは、おふたりのお人柄のたまもの。「つながる家」の始まりにふさわしいエピソードです。

あらゆるものが気持ちよくつながるシームレスな家

開放と回遊が生み出す新たな一体感と楽しみ

 家づくりのプラニングは奥さまが主導。当初から木造と決めており、設計の第一条件は「家族の気配が伝わるオープンな空間」で、キーワードに挙げたのが「アパートのような一体感」でした。「子ども達がどこにいて何をしているかが分かる、いつもお互いが近くに感じられる、そんなアパートの良さは活かそうと」。奥さまの思いは見事に昇華され、約7メールの吹き抜けの下に広がるLDKを中心にして、2階の子ども部屋、夫婦の主寝室、さらにはデッキテラスまでが自然な流れでつながり合う、シームレスな1つの大きな空間、包容力豊かな住まいが誕生しました。
 子ども部屋は3室ともキッチンに対面して配置され、ドアは常にフルオープン。学習机は置かず、勉強や宿題は同じ導線上に設けたスタディコーナーで行います。その様子はLDKからもうかがえ、お互いの声掛けも容易。「初めは平屋で設計していましたが、キッチンからも庭を眺められるようにと、子ども部屋の部分をそのまませり上げた形になった2階建てなんです」と奥さまは話し、「私にとっては『庭があってこそが家』。その庭が目の前に広がり、息吹まで感じられる、内でも外でもない中間領域的なデッキテラスを創出することができたのはすごく大きな収穫です」と笑みをみせながら思いを伝えてくれました。 「毎朝ここでコーヒーを飲むのが日課で、夕方は庭の風を感じながらビールを。夏休み中は、末の子が秘密基地作りに精を出し、格好のDIYスペースになっていました。いろんな使い方、過ごし方ができて暮らしの楽しみも増えました」と奥さまがにこやかに続けます。
 一方、ご主人が唯一こだわったのは「外からも出入りできるバスルーム」。駐車スペースからも庭からも直行できる動線を確保し、坪庭のような空間を設えて目隠しを行い、ガラス張りで屋外と一体化する浴室を完成させました。利便性とオープンエアの爽快感を両立させた仕上がりです。

あらゆるものが気持ちよくつながるシームレスな家

アイデアを実現してより理想的な暮らしへ

 もう1つ特筆すべきは、家族でぐるりと囲んで作業ができる、正方形型・システムキッチンです。「実際に夫は普段から一緒に料理をするので、家族みんなで立てるキッチンはありかな? と建築家の羽生さんに相談したところ、すごくいいアイデアだと喜んでいただき、オリジナルで設計してくださいました」。使い勝手もすこぶる良く、「想像以上の仕上がり」と奥さまは満面の笑顔。 「私のいちばんのお気に入りの場所です」
 他にもさまざまなアイデアや理想を実現し、継ぎ目なくつながる気持ちよさで家族との時間や暮らしの豊かさを膨らせませるOさん夫婦とファミリー。いつでもいつまでも、どこにいても笑い声が行き交う、素敵な未来が瞼に浮かびます。

写真ギャラリー

設計・施工会社

Atelier kuu Design (アトリエ クウ デザイン)

TEL:098-958-3542https://kuu.okinawa

TEL:098-958-3542https://kuu.okinawa

読谷村長浜1465-1

あらゆるものが気持ちよくつながるシームレスな家

女性同士、意気投合して 取り組んだ家づくり。 ブラッシュアップしたアイデアで より住みやすく

株式会社 Atelier kuu Design 代表・一級建築士:羽生幸美さん

 Oさんのお宅は私たちの事務所にも近く、通りすがりにお声かけをしたり、住まいの様子をうかがったりと完成後も懇意にさせていただいています。その中で特に嬉しく思うのは、Oさんご家族が家に愛着を持ち、大いに暮らしを楽しんでいらっしゃるということ。建築士冥利につきます。
 今回の家づくりを振り返ったとき、いちばんに思い出されるのは奥さまが「アパートの一体感を大切にしたい」とおっしゃったこと。私たちも同感で、子育てにはアパートのコンパクトさが有利であると考えていたので、その利点を新たな空間にどう再現するかを考え、”つながり“が連続する回遊性の高い住まいとなりました。
 空間づくりの大きなポイントとなったのは、デッキテラスの創出です。このスペースは最初、子ども部屋を配置していたので、それをそのまま引き上げて構築。吹き抜けからの風の影響は、構造事務所や建築業者と相談し、母屋の周りを濡れ縁や干し場スペースの下屋で囲むことで風の影響を少なくし、火打梁(ひうちはり)を多めに入れることで解決しました。デッキテラスの存在はOさん宅の開放性と回遊性の向上に大きく貢献し、住まい全体の意匠性と居住性を高めた要素にもなったと思います。
 今回、プランを主導された奥さまは、住まいに対する知識や関心が高く、たとえば収納は一ヵ所にまとめたい、手間をかけずに収納したいなど、具体性の高い要望やアイデアを多くお持ちのうえに、私たちの提案に対する理解もスムーズでした。そうするとお互いに「こんなふうにしてみては?」とか「面白いからぜひ実現させましょう」と、アイデアの精度が高まり、最終的にはこれら1つ1つを紡いで丁寧に仕立てていったという印象です。
 また、「ないものは作る」という軽やかな発想もお持ちでしたので、Oさん宅オリジナルの正方形型・システムキッチンが誕生したり、セキュリティ機能を搭載したルーバー引き戸を家具職人の手で実現させたりと、作り手にとっても新鮮な家づくりとなりました。
 庭づくりにおいては、Oさん夫婦の感性を汲み取った造園業者との出会いにより、「森のような自然のままの植生」が行われ、建物の外観デザインや佇まいにも調和した味わいのある光景を生みだしています。

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