ロフトで空間をつないだ 立体的な木のワンルーム
- DATA
- 所在地:豊見城市
- 家族構成:夫婦、子ども2人
- 設計:株式会社FAD一級建築士事務所(担当/古堅健一)
- 敷地面積:207.59㎡(約62.79坪)
- 建築面積:88.29㎡(約26.70坪)
- 延床面積:107.62㎡(約32.55坪)
- 用途地域:第一種低層住居専用地域
- 構造:木造2階建て
- 完成時期:2017年4月
- 建築:有限会社共和技研
- 電気:真喜志電設
- 水道:有限会社大晧設備
眺望が開けた崖上の土地に、2階建ての木造住宅を新築したHさんご夫妻。切妻屋根の形状を生かして「ロフト」をつくり、階下のLDKと一体的に使えるように生活空間をデザインすることで、開放感と安心感が同居する居心地のよい住まいを実現しました。
土地の条件に合わせて木造を選択。
「家らしい家にはしたくない」
木の梁が頭上に露出した勾配天井の下、ロフトと一体となったリビングで談笑し、窓の外に広がる景色に目をやり時折一服。「天井高は最大約5m。わが家は音響も抜群なんですよ」。そう言ってご主人がスマートフォンを操作すると、ロフトのカウンターに置かれたスピーカーが鳴り、さながら音楽ホールのような雰囲気に包まれます。
「新居ができてから、友人が頻繁に遊びに来るようになりました。めいめいが料理を持ち寄り、勝手知ったるわが家のように好きな音楽を流し、時間を忘れておしゃべりを楽しんでいきます。眺めが良く開放的で、私たち同様に皆もきっと居心地がいいんでしょうね」。
Hさん宅が完成したのは約3年前。「LDKはできるだけ広く開放的に。頭上にはロフトを設けて、仕事をしたり読書をしたり、いつでも顔を合わせながら親子で自由に使える空間にしたい」と思い描いていた生活イメージを見事に実現しました。しかしそれは振り返れば、購入した土地の条件に従って可能な選択肢をたどった結果であり、元々は「その土地に残っていた築30年超の平屋住宅をリノベーションしようとしたけれど、老朽化が激しくて建て替えるしかない」と判断したことが今回の新築計画のスタートでした。
仕事や生活を考えると、立地環境はベスト。「リノベが無理ならコスパ重視の規格住宅はどうだろう」と今度は検討しましたが、地盤強度が強くないことが判明。そのため以前からよく知る建築士事務所を訪ねて相談した結果、地盤への負荷を抑えるために軽量な木造にして、お2人が望む居住空間を自由設計で、という流れになりました。
そのとき真っ先にご主人の頭に浮かんだのが、LDKとロフトがある生活イメージでした。他はまだぼんやりしていましたが、「あまり家らしい家にはしたくない」という思いを建築士に伝え、プランにまとめてもらいました。
家中が読書と遊びの場。
内装は柔軟に模様替えを計画
Hさん宅の平面形状はL字形。西側道路面の駐車スペースを囲むように3つの居室がレイアウトされており、切妻屋根の棟のラインを軸にして、眺望が開けた東側にLDKと主寝室が並び、反対の西側には子ども室が突き出ています。このうちロフトになっているのは、天井の頂点付近の小屋裏部分。階下のLDKと子ども室とは吹き抜けで結ばれているため、家全体に開放感があって意思疎通もスムーズ。またロフトの真下には水回りが小さく収まっており、家事効率の向上とスペースの節約に役立っています。
ロフトには造作のカウンターが真っすぐに伸び、気分に合わせて自由に場所を移動できるように、キャスター付きの椅子がランダムに置かれています。親子共有の贅沢なこの空間は、Hさんの生活スタイルにも影響を与え、「住み始めて約3年。特に子どもたちは読書時間がめっきり増えました。ゆくゆくはロフトの突き当たりに大きな書棚をつくる予定でしたが、既に本があふれてきてしまったのでそろそろ取りかからないと」とご主人。本を読む場所はロフトに限らず、リビングのソファや階段など、至る所が読書スペースになっています。
もちろんやんちゃ盛りの年頃ですから、本を読むだけではなく、子ども室を含めた1、2階全体が遊び場になっています。家中をぐるぐる走り回り、所構わず傷つけたり汚したりするのは日常茶飯事。入居直後は「せっかく建てたマイホーム。きれいな状態を長く保ちたい」と補修して回っていたご夫妻もすぐに断念し、「建物自体を一つのフレームと考えて、中身はどんどん変えていけばいいんだと割り切るようになりました」。したがってしばらくは、白を基調にした現在の内装のまま子どもたちに自由に遊ばせて、頃合いを見て「DIYで模様替えしていきたい」と計画しているそうです。