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住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

丸太を手加工した「ハンドカット」を選択

　ログハウスに住むことは、Ｕさんご夫妻にとって長年の憧れでした。しかし以前までは通勤に便利な都市部の家で暮らしていたため、しばらくは遠い夢のまま。ところが数年前からお互いの親と同居し介護する必要性が高まり、よりよい介護環境を検討するうちに、「だったら念願のログハウスで」との話が一気に現実のものになりました。
「私はパソコン黎明期からのネットユーザー。ログハウスの交流サイトにも登録しており、オーナーをはじめいろいろな人からアドバイスや情報を仕入れながら、材料・施工技術・メンテナンスについて徹底的に調べていきました」とご主人。ただ一点だけ、「蒸暑地で台風の多い沖縄で、マイホームとして安全快適に長く使えるか」が気がかりでしたが、少ないながらも前例はあり、建築士や専門業者からもお墨付きをもらいました。
　土地探しでは「海を眺められる場所で生活したい」との奥さまの希望をもとに候補地を絞り込み、材料となるログ材を搬入しやすく、最も施工条件が良好だった現在の土地を購入。生い茂った原生林を切り開き、最初に奥さまの両親と姉が住むログハウスを建て、次いでご主人の母親とＵさんご夫妻が暮らす家をつくることになりました。
　ログハウスは工法や構造によって幾つかのタイプに分類できます。同じ敷地に建つ一棟目は、工場でプレカットしたログ材を使い、工期・コストを圧縮した「マシンカット」、一方のＵさん宅は、丸太を現場で手加工して自然の風合いを生かした「ハンドカット」を採用。一棟目の完成後は、Ｕさんらも一緒に全員で移り住み、実際の住み心地や使い勝手を体感。昨年９月の台風襲来時も大きな被害はなく、「ログハウスが沖縄に不適ということはない」との確証を得ました。

職人の腕前を信頼。エアコン要らずの快適さ

　ハンドカット工法のＵさん宅は、職人仕上げの芸術品。ご主人が考案した間取りをベースに「できるだけ海の眺望を生かせるように」と建築士とプランを調整した後、施工に関わる一切については職人に一任しました。
「今回携わってくれた３人の職人さんは、日本全国でログハウスの建築を手がけてきたプロ中のプロ。言葉の端々にまでプライドがみなぎり、“よし、そこまで自信があるなら、どれだけ満足のいく家を建ててくれるのか、余計な口出しはしないでおこう”と決めたんです」。昔ながらの職人然とした振る舞いに、当初は近寄りがたいオーラも感じていたそうですが、「そこはお互い人間ですからね。毎日顔を合わせてあいさつすれば自然と会話が生まれ、やがて職人さんの側から、細かい納まりについて相談やアドバイスをもらうこともありました」。

　丸太の調達に時間がかかったこともあり、住み始めたのは予定より約半年遅れの昨年１１月。１階ＬＤＫのそれぞれのスペースから海を望み、窓を開ければ爽やかな風が舞い込みます。梅雨の時期でも暑さ・湿気は気にならず、エアコンは未設置のまま。２階まで吹き抜けになったリビングは開放感にあふれ、室内も外観もどこを見ても、木に囲まれた温かさ、積み上げた丸太の迫力、手加工ならではの繊細さが同時に感じられます。「ただし職人さんの話だと、これでもまだ未完成なんだそうです。どこにどう手を加えるつもりなのか、当の私たちにもわかりません(笑)」。
　念願のログライフを始めて半年強が過ぎ、「理想的な生活。何の不満もないですよ」と喜びは継続。一方では「以前まで住んでいたのが、最新の設備機器を備えた高性能の家。さすがに効率面では及ばないし、構造的に収納は少ないですね」と冷静に評価しつつ、「でも、少々の不便さ、不自由さがあるくらいでちょうどいい。今後は定期的に手入れする必要も出てくるだろうし、それくらい余裕を持って家と向き合える人には、ログハウスは向いているかもしれませんね」と話しています。