稲嶺さんの相続・終活知恵袋 Vol.18 相続は、お金持ちだけの問題ではありません

「相続の準備は、たくさん財産を持っている人がするもの」と思われている方も多いのではないでしょうか。確かに、財産が多ければ相続税について考える必要があります。しかし、相続で問題になるのは税金だけではありません。今回は、家庭裁判所の統計を参考にしながら、財産額にかかわらず相続について考えておくことの大切さをご紹介します。
週刊かふう2026年10月9日号に掲載された内容です。
実は身近な「争続」
遺言書などで財産の分け方が決められていない場合、遺された家族で話し合い、誰がどの財産を引き継ぐのかを決めることになります。
しかし、それぞれに希望や事情があり、家族だけでは話し合いがまとまらないこともあります。そのような場合には、家庭裁判所で話し合ったり、それでもまとまらなければ、最終的に裁判所に判断してもらったりすることになります。
では、実際に家庭裁判所で解決に至った相続は、どれくらいの財産をめぐるものなのでしょうか。

5,000万円以下が約8割
最高裁判所の統計によると、令和7年に家庭裁判所での話し合いや判断によって解決した相続のうち、財産額5,000万円以下のケースが約8割を占めています。さらに、1,000万円以下のケースだけでも3件に1件以上あります。
この数字からも、家族だけでは財産の分け方がまとまらず、家庭裁判所での解決に至るケースは、決して多額の財産を持つご家庭だけのものではないことが分かります。

金額だけで相続の難しさは決まらない
例えば、主な財産が自宅と少しの預貯金で、子どもが二人いる場合を考えてみましょう。
預貯金は分けることができますが、一軒の自宅を二人で簡単に分けることはできません。「自宅は誰が引き継ぐのか」「もう一人には何を残すのか」といった問題が生じます。
また、相続では単に同じ金額ずつ分ければ、必ず家族が納得するとも限りません。それぞれの生活やこれまでの家族との関わりなどによって、受け止め方も異なります。
つまり、相続で大切なのは財産の多さだけではなく、「その財産を家族で分けられるか」「その分け方に家族が納得できるか」という視点なのです。
今からできること
「子どもたちは仲が良いから大丈夫」「自分が亡くなった後は、みんなでうまく話し合ってくれるだろう」と考えることもあるでしょう。
しかし、相続が始まれば、それぞれに家庭や生活があり、財産に対する考え方もあります。「長男だから多く」「兄弟だから平等に」といった考え方だけで、全員が納得できるとも限りません。
まずは、ご自身の財産を整理し、「誰に、何を、どのように残したいのか」を考えてみましょう。そして、「家族だから分かってくれるだろう」という期待だけに任せず、ご自身の考えをご家族に伝えておくことも大切です。
さらに、その意思を遺言書として残しておけば、相続が始まったときに、「親が考えて決めたことだから、その意思を大切にしよう」と、ご家族が受け止めるきっかけにもなります。
ご家族に難しい判断をすべて任せるのではなく、元気なうちにできる準備をしておきましょう。



