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琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 引っ越しにともなう床の間の工事

琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 引っ越しにともなう床の間の工事

週刊かふう2022年2月11日号に掲載された内容です。

引っ越しにともなう床の間の工事

Q:母の老後を考え、わが家に父のトートーメーを引っ越します。仏壇のついでに床の間も改築したいのですが、床の間は家の中心だから、うかつには触れないと聞きました。改築しても大丈夫でしょうか?(南城市・デージムン)

Q:床の間を潰して押し入れ(タンス)に作り変えようかと思っています。床の間は家の男が拝む神が宿ると聞いたことがありますが、潰してもいいのか教えてください。(うるま市・パンチャン)

A:デージムンさま、パンチャンさま、ご質問が引っ越しなどにともなう床の間の工事で共通していますので、合わせてご回答させていただきたいと思います。
 現代にあって、「床の間は家の中心」「床の間は家の男が拝む神が宿る」という慣習をご存じの方々は少なくなったといいますので、とても貴重なご質問かと思います。

琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 引っ越しにともなう床の間の工事

《関帝王(かんていおう)信仰と床の間》
 沖縄の床の間は、関帝王信仰という、三国志の時代の武勇・関羽(かんう)をお祀(まつ)りする場所であることから、「家の中心」「男性が拝む神が宿る」として敬われているとの一説があります。
 関羽は、武術に優れていただけでなく、算術も巧(たく)みであり、沖縄では、ジングトゥ(銭事・経営)という商売繁盛の神様としても有名です。この武勇・商売繁盛という考え方と、男性は、家族を守り、家系・家計の中心であるとデンサー節にも謳われる唄われるところの中柱(なかばしら)・大黒柱の意味が相まみえて、床の間は「家の中心」「男性が拝む神が宿る」という表現になったともいいます。
 早々に今回のご質問のご回答ですが、引っ越しなどにともない床の間を改築することは、いささかも問題ありません。現代の沖縄では、日常の居住空間を優先するため、押し入れをお仏壇に改築したり、お仏壇・床の間を押し入れに改築したりすることは、どのご家庭でも行われていることと思います。

《荒神(こうじん)信仰と代理御願》
 沖縄では、イチバンジャー(一番座)がない、つまり、床の間がなく、トゥクヌカン(床の間)の神様をご安置することができない場合、床の間の神様と台所のヒヌカンの火の神様、さらに屋外のジーチヌカンの土地の神様は、兄弟姉妹であるという荒神(こうじん)思想の拡大解釈から、火の神様や土地の神様を通じて、床の間の神様を代理で敬うことができるという考え方があります。このことを、沖縄のしきたりの専門用語では、ウカワリウグヮン(代理御願)などといいます。
 床の間を押し入れに改築しましたら、床の間の神様に手を合わせたいとき、台所の火の神様や屋外の土地の神様に手を合わせれば、代理として床の間を敬ったことになるという考え方が言い伝えられています。

《床の間の工事の日取り》
 なお、床の間を改築、押し入れに工事されますとき、沖縄のしきたりとして、契約日・着工日などの日取りをアドバイスされることがあるようです。以下、沖縄のしきたりの見解として、外した方がいいといわれている日を抜粋して記載しておきますので、ご参照いただければと思います(本来は、『日々是好日(ひびこれこうじつ)』ですので、あくまでも沖縄のしきたりの参考程度に)。
◎旧暦1日・15日……この日は、定期的な沖縄のウグヮンがありますので、女性方のお忙しい日は外すようです。
◎改築や工事を発注するお施主(ヌーシ:主)さまの生まれ干支の日……仮に、お施主さまが子の干支でしたら、子の日は外すしきたりが沖縄にはあるようです。
◎赤口(しゃっく)……赤い舌の鬼が悪さをする日だそうです。おとぎ話のようですが、沖縄のユタの先生方は、今でも信じられているようです。
 ぜひ、よきタイミングを見計らいながら、床の間を改築、押し入れの工事をなさってください。デージムン家・パンチャン家の立派な床の間や押し入れが完成しますように。

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