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琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A ヒンプンを壊してもいいですか?

琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A ヒンプンを壊してもいいですか?

週刊かふう2023年1月13日号に掲載された内容です。

ヒンプンを壊してもいいですか?

Q:オヤジの三十三回忌が終わったので、本人が造った玄関先のヒンプンを壊してもいいでしょうか? 風通しも悪いし、汚い石で見た目も悪いので、駐車場にしようかと思っています。(那覇市・Oさん・30代)

A:Oさんからのご質問は、お父さまの三十三回忌でお参りさせていただいた当日、ご自宅にて承りました。拝見したところ、立派な港川石のヒンプンではないですか。Oさんに私から、沖縄でヒンプンを屋敷に造る意味をお尋ねしましたところ、家の中に住んでいる様子を外からのぞかれないためにヒンプンがあり、垣根や目隠しみたいなイメージをお持ちのようでした。
 以前、私も同じようなことを恩師からご教授いただいたことがあったため、それにつけ加えOさんには、「ヒンプンは魔除けにもなっている」という内容もお伝えさせていただきました。

 諸説あるヒンプン説を参考にしますと、どうやらマジムン・ヤナムンはお家に真っすぐやって来るらしいですよね。彼ら(彼女らかもしれませんが)は、角を曲がりきれないということを文献で読ませていただいたことがあります。その理由から、カジマヤーの交差点では、曲がりきれなくて壁にぶつかるマジムン・ヤナムンのため、石敢當が設置されているということは、とても興味深い発見でした。


琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A ヒンプンを壊してもいいですか?

《ヒンプンは思いやりの象徴》

 Oさんと立ち話しつつ、ウナーというお庭を一緒に拝見しました。Oさん家は、ウジョーという正門と、ナカジンという玄関が直線に配置されています。このままでは、真っすぐが得意なマジムン・ヤナムンが余裕でドンドン入って来ることになるので、このヒンプンを造られたお父さまは、私が想像するに、ヒンプンを屏風(びょうぶ)と解釈され、マジムン・ヤナムンがOさん家に入れないよう、ヒンプンが通行止めをしているイメージをお持ちになっていたのではないでしょうか?

 このような会話をしているうち、Oさんから、もともとわが家のヒンプンは、ウフタンメーの頃、首里にあった昔の住宅から運んできたものであり、お父さまからは重要なものだから大切にしなさいと言われた記憶がよみがえってきたとのことでした。もしもヒンプンを壊して駐車場にしてしまうと、そこはマジムン・ヤナムンのたまり場となり、それこそマジムン・ヤナムンの駐車場になってしまうのでは? と想像するに暇がありません。

 Oさん家の立派なヒンプンは、ひいおじいさま・おじいさま・お父さまがマジムン・ヤナムン除けとして、当時のご家族・ご家庭を守るため、お造りになられた温かい思いやりの象徴でもあったのではないでしょうか。

《文化や歴史を語り継ぐ》

 また、沖縄のしきたりを参考にさせていただきますと、ヒンプンは、のぞき見防止、マジムン・ヤナムン防止のみならず、来客は、ジーチヌカンヌヒジャイ、ヒンプンの右側の上座から招き入れ、家主は、ジーチヌカンヌニジディ、ヒンプンの左側の下座から迎え入れるという、ヒンプンは琉球・沖縄の伝統的な『主客文化』・『上座・下座文化』の象徴ともいわれています。

 ヒンプンは、どちらのご家庭にもあるものではなく、今となっては貴重なアジア圏の住宅様式の一部だともいわれています。汚れが気になるようでしたら、洗浄することにより、港川石などは、もとのヒンプンの美しさを醸し出してくれるかと思います。
 しかし、あくまでも個人的な見解ですが、ヒンプンは、ピカピカに洗浄することも一案ですが、コケなどがむしていることも、その家の誇り(埃〈ほこり〉)を語り継いでいるようで歴史があるかもしれませんよね。

 Oさんは会話の終わりに、「やっぱりヒンプンを壊すのはやめます」とおっしゃっていました。これからも今まで同様、ヒンプンを大切にして、お父さまたちのように、ご家族・ご家庭を守っていきたいともおっしゃっていました。どうやら、ご自身で今回のご質問のご回答を見つけられたようです。そのお言葉を耳にして、私もホッとひと安心。
 『虎は死して皮を遺す 人は死して名(志)を遺す 大根食べたら菜(名)が残る(遺る)』とは、詠み人知らずのとある人生唄。お父さまの三十三回忌を尊いご縁とし、ヒンプンを温かいご縁ともし、ぜひとも、ジンブン深き、お父さまたちの『名(志)』をこれからも受け継いでいただけますように。

琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A ヒンプンを壊してもいいですか?

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