琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A トゥシビー(生年)とお米の節約

週刊かふう2025年12月19日号に掲載された内容です。
トゥシビーの数え方
Q:新築したいので、先日、ユタのヤー(家)に行きました。いきなり、「ネーネー、あんたの旦那は何年(なにどし)ね~?」と聞かれ、「巳年のヘビです」と答えたら、「あらん、省略しないでちゃんと答えなさい!」と叱られました。この人は、干支をご存じないのでしょうか?(那覇市・Мさん、30代)
A:Мさんのご質問、私もすごくウチアタイします。この「何年ね~?」は沖縄のおじいちゃん、おばあちゃんたちのご挨拶代わりなのでしょう。私も、トゥシビーとも干支ともいう生まれ年の「申年のサルです」と回答したら、「あらん、メーヤク(前厄)・ナカヤク(中厄・本厄)・クシヤク(後厄)のことさ~ね~!」とご指導いただいた経験があります。この点、何が正式なのか、琉球・沖縄のしきたりから模範解答を尋ねてみましょう。
私たちが用いる干支は、本来、単純な12パターンではなく十干十二支(じっかんじゅうにし)といい、正式には、十干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)と十二支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)を組み合わせた合計60パターンで表現されます。
干支は略字であり、樹木の幹と枝の一部を抜粋した干(幹)と支(枝)であることが知られています。幹と枝の文字をよ~く見てください。右側のつくりの部分に、干と支の文字が隠れていますでしょう。
どうやら、沖縄のユタなどの先生は、トゥシビーや干支について、語源が樹木であることをご存じのようで、ことあるごとに『子~亥』を樹木の1本の大木に見立て(根・幹・枝・葉は繋がっていますので)、関連づける傾向にあります。
「メーヤク・ナカヤク・クシヤク」とは、本人の誕生月が1月や12月のとき、その端っこが前年・後年に引っかかるであろうことを想定し、前後3つを加味する計算方法が由来となっているとのことです。
今回のMさんのご質問では、ご主人さまの干支が巳年のヘビですから、メーヤク・ナカヤク・クシヤクを学んだ上は、「メーヤクが辰年のタツで、ナカヤクが巳年のヘビで、クシヤクが午年のウマです」とお答えできると模範解答ということになります。

ウグヮブトゥチ(御願解き)のお米の節約
Q:もう嫌になるくらい、お米って高いじゃないですか? 今年のウグヮンブトゥチは、ヒヌカンにお米をお供えしたら、土地にまかないで、家計の経費削減、その日の晩ごはんに食べても大丈夫ですか?(恩納村・Kさん・40代)
A:Kさん、お米のニュースが流れるたび、その内容に一喜一憂するのはお互いさまですよね。家計の経費削減と琉球・沖縄のしきたりのバランス、もしかしたら永遠のテーマなのかもしれません。
ウグヮンブトゥチで、マース(塩)・ハナグミ(生米)・アライグミ(洗米)をユスミ(四隅・東西南北の四つ角)の土地にまくのは、単にお清めするだけではなく、お米類は幸せの種まきにもなるのだとか。
家計の経費削減で土地にまかないのであれば、せめてお米の入ったビンシー(瓶水・沖縄祭具)やカリビンシー(仮瓶水・お膳やお盆の中に小皿を準備する仮の沖縄祭具)をユスミに置き、ティーウサー(合掌)・ウヌフェー(礼拝〈らいはい〉)して、土地にまいたことにされてみてはいかがでしょうか? そのお米を晩ごはんにいただくことは、とてもありがたいことですよね。
沖縄では、チータチ・ジューグニチ(旧暦朔日・十五日)にお供えしたヒヌカンのウブク(御仏供〈山盛りご飯〉)をウサンデーしていただくことは、チネーヌサカイ(家庭の繁栄)につながるととても重宝されます。
ご存じかも知れませんが、お米は農業を営まれる皆さまの「八十八(たくさん)」のご苦労と幸せがあっての「八十八=米」。その文字の成り立ちからも、ひと粒ひと粒を大切にいただくことはとても素晴らしいことだと思います。どうか、お米が私たちの大切な「いの一番(いちばん)=いのち」となりますように。

