琉球・沖縄年中行事 なんでもQ&A 棺の中に持たせられなかったヒヌカン

週刊かふう2026年9月11日号に掲載された内容です。
Q:義母が亡くなったとき、バタバタして、出棺の際に愛用のヒヌカンを棺の中に持たせることができませんでした。ユタに聞くと、「姑が使ったヒヌカンは、長男嫁であっても使ってはいけない」のだとか。今後、そのヒヌカンは、どのタイミングで義母に持たせれば良いのでしょうか?(Mさん・北中城村・40代)
A:Мさん、お義母さまのご供養を立派にお勤めされていることが伺い知れ、心より安堵の思いでご回答させていただきます。故人さまのヒヌカンの持たせ方には、いくつかの選択肢がありますので、お義母さま・Мさんにとっての最善の方法をご一緒に尋ねてみましょう。
ヒヌカンの承継(継承)
ユタの先生がおっしゃる、「姑が使ったヒヌカンは、長男嫁であっても使ってはいけない」との考え方は、祭具であるビンシー(瓶水)にも見られ、琉球・沖縄のしきたりの『女性の一世一代(個人のみ)の祭具』とか、『女性の実印(認印)』との考え方によるものでしょう。
いずれも、身内であっても他人に貸し借りはしないという、ヒヌカン(ビンシー)の大切さを象徴した考え方だと思います。一方、地域・家庭に依っては、大切なものであるからこそ、次世代(身内)へ承継(継承)しなければいけないという真反対の考え方も存在します。Мさんの時代には、一極端に偏らず、その双方を踏まえながら、柔軟に対応していくことが肝要かと思います。
『副葬品の禁止』とは
「愛用のヒヌカンを出棺の棺の中に入れることができませんでした」のお尋ねには、火葬場では故人さまの棺の中に納められる品々に制限があり、これを『副葬品の禁止』といいます。例えば、爆発する危険がある物、故人さまのご焼骨に影響する物などは、火葬場職員や葬儀社の指示により、事前にチェックして、棺の中に納めることをご遠慮しなければなりません。
ヒヌカンも同様の傾向があり、一般的にヒヌカンとは、カミ(神)・シル(白)ウコール(香炉)、ハナイチー(花瓶)、マース(塩)皿などの白磁器のことを指し、火葬の高温で焼却されたとき、それらが割れてしまい、故人さまのご焼骨をご収骨する妨げになることが想定できます。ですから今回、ヒヌカンを出棺の棺の中に入れることができなかったことは、結果的に安心・安全のご供養につながったのではと思うところですので、Mさんには、僅かながらでもお気に留めることがありませんように……。

ナンカ(七日)・百カ日・ウスーコー(ご法事)の応用
今後、ヒヌカンをお義母さまにお持ちいただくタイミングとしては、次に訪れる儀式・法要のナンカ・百カ日・ウスーコーを選択される地域・家庭を多く見受けます。
「お持ちいただく(持たせる)」という表現には、ヒヌカンの白磁器をお義母さまに手向けるというイメージを受けるかもしれませんが、実際には愛用のヒヌカンの灰のみを、頂戴した然るべき場所(実家などのウコールから取り分けた場合は、そのウコール)にお返しし、白磁器は供養処分することをいいますので、その点、相違が出ないよう身内同士での情報共有が必要かと思います。
また念のため、お義母さま以前も同様の承継をしているヒヌカンなのかは、再度、身内同士での情報共有が必要かと思います。もし、お義母さまがヒヌカンタチクチ(火之神立口・ご自身がヒヌカンをお迎えになった本人)でない場合、つまり、お義父さま系(お義父さまのお母さま)のヒヌカンを承継されているときは、今日までの大きなチーシジ・ヤーシジ(血筋・家系)の流れを滞らせてしまうことになりかねませんので、当時を知る方々のご意見をうかがうことが賢明かと思います。
そうなのです、いかにユタの先生のご意見が正当であったとしても、その家庭には、その家庭の歴史・文化があり、承継されてきた、『我が家のオリジナルのしきたり』を考慮することも、トラブルを未然に防ぐ妙案かと思います。
Мさんには、次に訪れる儀式・法要のとき、どのような選択をするのがお義母さまのお心内に叶うことか。これもいつの日か、慈しむお義母さまが残してくださった、未来のMさんのジンブン(教養)へとつながりますよう、心より願ってやみません。
