あなたの夢を暮らしを応援する
住宅情報紙「週刊かふう」新報住宅ガイド

ウェブマガジン

僕の好きな風景 第56回 住宅展示場のあり方を考える

僕の好きな風景 第56回 住宅展示場のあり方を考える

住宅展示場のあり方を考える

 家づくりを考える時、住宅展示場に出かける方は少なくないと思います。
 ハウスメーカーを中心として、家づくりの傾向を大掴みすることができます。
 しかし、建築家はもちろんですが、地域工務店は総合展示場に出店しないのが一般的。莫ばく大だいな費用がかかることと、住まい手の価値観がハウスメーカーとは違うということが主な理由です。
 ところが、古い付き合いの工務店が住宅展示場に出店するので、設計を頼みたいと言ってきたのです。
 日頃から、住宅展示場は家々がメイン通路に面して建っていて、まるで家電売り場のようだと感じていました。
 外構や庭の設計も表から見えるところだけ、裏に回ればすごい数のエアコンの室外機が並び、とても省エネに貢献しているとは思えない。
 気候変動が確実となったこれからの時代は、方位に素直に設計し、住まいの性能をきちんと押さえた上で、永く住み続けられる心地よさを提案すべきだということで、展示場とはいえ、方位に素直な設計をし、さらに温熱アドバイザーとして東大の前研究室(※)にも設計チームに加わっていただき、庭もきちんと設計することを条件にお引き受けさせていただきました。
 おかげで、我々の提案した住宅だけ、展示場の中でそっぽを向いているかのようです。
 自然エネルギーを利用し、自然素材に包まれた小さな平屋が、ハウスメーカーの大きな家々の中に健気にたたずんでいます。
 家は家電のような商品ではなく、環境と応答して存在することが伝わるといい。住宅展示場のあり方に一石投じる仕事になったのでは? と小さな手応えを感じています。

※東京大学工学部建築学科・前真之准教授の研究室。再生可能エネルギーによって自立できる健康で快適な住宅の研究・開発に取り組んでいる。

僕の好きな風景 第56回 住宅展示場のあり方を考える

壁は漆喰、天井は杉の無垢板をうねらせて和らかな空間とした

僕の好きな風景 第56回 住宅展示場のあり方を考える

リビングの奥には、ソファやパソコンデスクを造りつけている

僕の好きな風景 第56回 住宅展示場のあり方を考える

このカテゴリの記事