僕の好きな風景 第79回 お正月はいつもと違う空の下で
ダイニングを中心に居場所が広がる
週刊かふう2024年1月5日号に掲載された内容です。
コロナ以前は、お正月を海外で過ごすことが定着していました。
年の初めこそ、新たな意欲を持って仕事(建築設計)のために有効に時間を使うべきだと、2011年に家族でバリ島に出かけたことがきっかけだったように思います。
年の暮れから新年にかけて気持ちをリセットするのにちょうど良い。
バリで最も重要なミッションは「アマンダリホテル」に泊まること……世界各地にリゾートホテルを展開するアマングループの記念すべきフラッグシップとも言うべき「アマンダリ」(1989年開業)の建築とコンフォータブルな居心地を体験することでした。
集落をコンセプトにつくられ、周辺の集落の風景に溶け込むその佇まいは多くのリゾートホテルに影響を与えたと言われています。
アマンダリNo.7。破門を描くように外部に広がるプランに豊かさを感じる
その設計時には、設計グループが京都の俵屋旅館に宿泊し、俵屋の心地よさを学び、生かしたそうです。
その話は俵屋の主人・佐藤年さんからも直接お伺いしました。
日本の文化の粋を集めた俵屋旅館の魅力を取り入れた「アマンダリ」は、バリのウブド地方の粋を集めた文化度の高いホテルです。
ビラ形式の客室でゆったり過ごし、バリの気候風土、文化を体いっぱいに取り込むことで新たな活力が湧き立ってくる感じがします。
本来ならゆったり過ごすべきでしょうけれど、そこは建築家の性、じっとしてはいられません。
この建築の魅力を解読するために早速実測!!
手を動かし、スケッチして測ってみることでこのビラの3重のリングが見えてきました。それが波紋を描くように外部に広がっていくプランがいい。
年の初めに違う空の下で過ごすことの新鮮さ、これまで見えなかったことへの気づきはとても重要だと感じました。
部屋の中心はダイニング、天井がその中心を暗示する