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僕の好きな風景 第106回 家の記憶

僕の好きな風景 第106回 家の記憶

2026年芥川賞。取り壊される家の記憶を細やかにたどる。建築家としての知見を活かした建築文学ともいうべき小説

週刊かふう2026年4月3日発行号に掲載された内容です。

 

 2026年の芥川賞を受賞された鳥山まことさんとの対談が決まりました。
 鳥山さんの本業は大手ハウスメーカーの設備設計者であり1級建築士。
 僕が設計したモデルハウスのオーナーである工務店で自邸を建てた経緯から僕の知らないところで繋がっていたようです。
鳥山さんからいただいた対談のテーマは「家に染み入る記憶」……ムヅカシイ。
 この原稿を書いている頃は東日本大震災から15年、テレビでは各局、特別番組が組まれ、当時を振り返っています。
 家も町も風景ごと流された地域に暮らす人々はどのような暮らしの記憶を抱えて生きているのだろうか? と思いながら、自分の「家の記憶」を振り返っているところです。
 沖縄で生まれ育ったのですが20代前半から東京暮らし、人生の3分の2は東京の人間となってしまいました。
 しかし、夢の中に出てくる、家は幼い頃過ごした今は無きセメント瓦の小さな家なのです。
 嘉手納基地から追われてきた集落の人々が方を寄せ合って住んでいるご近所、狭い路地(スージ)、家の小さな庭とアマハジ、北側の幼い兄弟で寝ていた4畳半の部屋など……なぜか2年前に自分で設計をして建てた住まいは出てこないのです。
 結婚して何度が引っ越した、家族で暮らしたアパートもほとんど出てきません。
 僕の夢の中の世界は家も町も昔の嘉手納村のまま、町の構成が同じなのです。

僕の好きな風景 第106回 家の記憶

中学1年生の頃の夏休みの宿題で書いた風景画。当時の嘉手納村の実家の屋根から描いたもの。ひしめき合う屋根並みが記憶に残る

 話は変わって、僕が設計した家にお住まいの方からの年賀状の話です。
 幼い頃に暮らした実家が取り壊されたのだが、実家の思い出がリビングのようなメインの部屋でなくて、押し入れの中や廊下の突き当たりなどの「家の隅っこ」ばっかりなのだそう。それがとても不思議とのこと。
 そして僕の設計した家は良い隅っこがあって幸福ですと綴られていました。
 記憶に残る、夢に出てきてくれるような住まいの設計の良いヒントとなるのかな?

僕の好きな風景 第106回 家の記憶

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