僕の好きな風景 第22回 「沖縄らしさ」の到達点が消える?
「沖縄らしさ」の到達点が消える?
建築を学びはじめた学生の頃、名護市庁舎は工事中でした。
その現場にこっそり忍び込んで、その空間に圧倒され、「これが建築か?」とため息をついたのが40年ほど昔……。それ以降、好きな建築のひとつとなりました。
アメリカ統治下で生まれ育ち、本土復帰を果たしたものの、なにか自分たちの存在に自信が持てず、沖縄のアイデンティティ(ここでは沖縄らしさとしておきましょう)、沖縄らしい建築とは何か? をずっと考えていた頃です。
その答えはおぼろげながら、絵本「オキナワの家」に書かせていただきました。
現在も社会人向けの設計スクールを主催させていただいていますが、生徒達を連れて名護市庁舎を見に行くのは、この建築が沖縄らしい建築を具現化した建築のひとつであり、日本の現代建築の中でも、とても重要な建築のひとつだと個人的に思っているからです。
今年、2月に市庁舎を訪ねて驚いたのは、市庁舎の顔とも言うべきシーサーがほとんど無くなっていたことと、それが3月末までにすべてを撤去するという事実を知ったこと。さらには建て替え計画もあるとか?
確かにかなり老朽化している事は分かりますが、自分の目から見るとメンテナンスが甘いようにも感じました。
全国コンペで、当時のそうそうたる建築家の中から象設計集団の案が選ばれ実現した、沖縄の誇りと自信を形にした建築です。
なぜもっと大事にしてもらえないのか? どうしたらもっと一般の方々にこの建築の価値を伝えられるだろうか? と頭を抱えます。
そうしていると、建築界の我々も反省すべきことが多いように思えてきたのです。
(続く)